このラストは、人によっては「最悪だ」「そんな風になるわけがない」などと、激しい拒否反応を覚えるでしょう。しかし、筆者は結末に至るまでの物語を振り返ると、そこには明確にいくつかの大きな理由があり、納得できるものであったと考えます。そのワケを、以下より解説していきましょう。
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※以下より、映画『ミスト』の結末を含むネタバレに触れています。観賞後にお読みください。

1: 約束を守ろうとする実直な人間の、「他の全ての方法」が失われてしまったから
主人公のデヴィッドの最後の選択は、車に乗り合わせた仲間たちを、自身の息子を含めて銃殺するというものでした。銃弾が足りなかったためデヴィッド自身は怪物に殺されることを願うも、霧の中から現れたのは軍の戦車でした。そして、物語の序盤に8歳の長女とその弟を救うためにスーパーの外に出て行った女性が、救助用のトラックに子どもと一緒に乗っているのも目にします。あと数分だけでも希望を捨てずに待っていたら、集団自殺をせずに済んだのに……という絶望的なラストとなっていました。この結末に至ったのは、デヴィッドが息子との約束を守ろうとする、良くも悪くも実直な人間であったことが、まず大きな理由でしょう。「何があってもママの元へ戻る」と約束していたが、母親は自宅の窓辺で糸に覆われて死亡していたため、その約束は叶わなかった。「お前を1人にして悪かった。もう二度と置いていかない」と約束していたからこそ、息子を集団自殺からの生き残りの1人にはしなかった(この場の5人に対して銃弾は4発だった)。何より、息子と「僕を怪物に殺させないで」と約束していたから……デヴィッドは、仲間を含めて息子を銃殺するという最悪の選択をしてしまったのです。