アニメ映画『アイの歌声を聴かせて』が、本当に……本当にすごいことになっている……(震えながら)!公開4週目となった今、SNSでの絶賛に次ぐ絶賛の口コミの効果が、さらに表れているのである。

※先週の時点でのSNSのムーブメントについてはこちらを参照↓
SNSで広がる『アイの歌声を聴かせて』の感動!ミュージカルアニメ映画史上最高の名作を絶対に今週末に観てほしい理由

何しろ、多くの劇場から上映回数の増加&大スクリーンで上映決定の報が続々届いたのだ。映画館の中の人のツイートから作品に惚れ込んでいることがわかるのも嬉しい!以下に一部ではあるが、ツイートでの報告を紹介しよう。

グランドシネマサンシャイン池袋:11/19(金)~11/24(水)の18:30の回に通常スクリーンにおける最大箱を割り当て


川崎チネチッタ:岩浪音響監督監修の大スクリーン上映「LIVEZOUND」の上映回数が2回に増える


イオンシネマ幕張新都心:岩浪音響監督監修の「ULTIRA」上映が11/19(金)~11/25(木)の18:25の回で上映継続(それ以降は厳しいとのこと)


イオンシネマ海老名:11/19(金)以降も最大箱で迫力の音響を楽しめる「THX」上映が継続。1日1回の上映にも関わらず5位にランクイン


イオンシネマ和歌山:18:10の回は大スクリーン&最高級の音響を堪能できる「ULTIRA」上映に



イオンシネマ西大和:11/19(金)~11/25(木)の18:00の回に前週に引き続き最大箱を割り当て



イオンシネマ福岡:上映回数が増え最大箱の「THX」上映が復活。土日の観客動員数は前週比200%以上を記録した。

 

イオンシネマ熊谷:11/19(金)~11/25日(木)の18:40に300席以上の大劇場にて上映



横須賀HUMAXシネマズ:次世代音響システムを導入した「Movive Theater」で上映決定(1日3回のうち2回の上映)



シネマボックス太陽(長崎県佐世保市):14:10と18:50の回に大スクリーンを割り当て



もちろん、このように映画館が特別な措置をした理由は、口コミにより実際にたくさんの観客が訪れたことにある。先週末は首都圏の映画館で満席の回やほとんどの席が埋まる回も多かった。パンフレット(読みどころが多いのでおすすめ!)の購入率の高さや、家族連れや若者が観に来ているとの声もさらに届いている。

この他の劇場でも、前週よりも大きいスクリーンの割り当て、上映回数が増えたところも多い。立川シネマシティでは吉浦康裕監督の過去作『イヴの時間』と『サカサマのパテマ』のリバイバル上映も決定した。名実ともに本当に多くの人に愛される作品になってきたのだ。

とはいえ、依然として1日1回限りの上映の劇場も多く、早朝やレイトショーのみでしか本作を観られないというケースも少なくない。大きいスクリーンを用意できるのは11/25(木)までと期限付きで宣言している劇場もあり、その11/25(木)に上映自体が終了予定の劇場もあるのだ。



※このツイートに記載の終了予定日は11/17・18時点のもの。最新の上映予定は各劇場のホームページ等で確認してほしい。

先週にも宣言したが、ここでもう一度書いておこう。
「映画館という最高の環境で、この名作中の名作を観る機会はもう2度とないかもしれない」
「観に行こうかなと思ったとしても、うかうかしていたら上映がすぐに終了してしまう可能性が高い」
「本作は音楽や暗がりで映える画の魅力がとても大きく、映画館で観てこその感動もある」
今すぐに上映時間を確認して今週末に観てほしい」
わかっていただけただろうか。<劇場情報>から、最寄りの映画館の上映時間をチェックしてほしい。

この作品が好きな人に『アイの歌声を聴かせて』をおすすめしたい!

『アイの歌声を聴かせて』には、著名人からの絶賛の声、ファンアートもさらに多く届いている。映画監督の上田慎一郎白石晃士、マンガ家の北崎拓などもアツいツイートを投稿しているのだ。もっともっと口コミが広がれば、さらなるムーブメントが起こることだろう。

『アイの歌声を聴かせて』絶大な口コミ効果で映画館の最大箱の割り当ても!全ての人におすすめできる理由がこれだけある!

そして、今はまだまだ「一部で熱狂的な支持を得た作品」と言える状態だが、実際はもっともっと間口の広い、全ての人におすすめできる内容であることを、ここで改めて訴えておきたい。

原作のないオリジナル作品であり予備知識は全く必要ない。

子どもにはわかりやすい物語で、大人には深く考察できる奥深さがあり、優れた音楽にはストレートな感動がある。キャラクターそれぞれも可愛らしくて親しみやすく、ハラハラドキドキするエンタメ性も抜群で、とても楽しい内容で鑑賞後は爽やかな気持ちになれるし、さらには残酷なシーンもほぼ皆無だ。

ここまで「万人向け」だと自信を持って言える作品はなかなかないのだ。

それでも食指が伸びないという方に向けて、この作品が好きな人に、改めて『アイの歌声を聴かせて』を観てほしいというリストを、共通点や理由と共に一挙に挙げていこう。ここまで書けば、もう観念して観に行ってくれると信じている。観に行ってください。お願いします。

『ドラえもん』(特に劇場版の『海底鬼岩城』や『鉄人兵団』)

言うまでなくドラえもんは「のび太のためにがんばる(お世話をする)ロボット」。『アイの歌声を聴かせて』のAIロボットが主人公の女の子のためにいろいろな手段を試す様はドラえもんっぽいし、『海底鬼岩城』のバギーちゃんや、『鉄人兵団』のリルルというキャラクターに通じるところもある

E.T.』(1982)

『アイの歌声を聴かせて』の物語の始まりは「転校生がAIロボットであることがバレないようにみんなでがんばる」というもの。『E.T.』で子どもたちが大人に隠れてE.T.と交流する様を彷彿とさせる。

『ぼくらの七日間戦争』シリーズ

実写映画化やアニメ映画化もされた人気小説。子どもたちが協力して大人に立ち向かう、青春ジュブナイル要素が『アイの歌声を聴かせて』と共通。

『攻殻機動隊』シリーズ

タチコマというロボットがとてもかわいい。このかわいさや健気さは『アイの歌声を聴かせて』のAIロボットに似ている。

『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』(2020)

煉獄さんでおなじみの声優の日野聡が、『アイの歌声を聴かせて』では柔道部員の気の良い男の子を演じている。実質的にひょうきんでカワイイ煉獄さんの声が聞ける。ちなみに、マンガ家のあさりよしとおは本作のファンアートを複数投稿しており、「中の人つながり」のイラストも描いている。


『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』シリーズ

涙を搾り取られるほど泣けるアニメということが共通。『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の主人公は「愛している」の意味を見つけていき、『アイの歌声を聴かせて』ではAIロボットが「幸せ」の定義を見つけていく。

『her 世界でひとつの彼女』(2013)

AIとの恋を描くSF映画。AIについての示唆はかなり『アイの歌声を聴かせて』に通じている。

ベイマックス』(2014)

かわいいお世話ロボットの突飛な行動のために主人公たちチームが右往左往する様は『アイの歌声を聴かせて』に通じている

『チャッピー』(2015)

悪人たちがロボットの子育てをする物語。世界観はディストピアだが、AIロボットの「可能性」をも示している。

『HELLO WORLD』(2019)

SF作品に多大な愛を捧げた、とてもテンポの良いアニメ映画ということが共通。「想い」にまつわる物語であることも似ている。

『映画スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて』(2019)

ミュージカルアニメ映画×愛おしい存在を守ろうと主人公たちががんばる様が似ている。

『フリー・ガイ』(2021)

人間に作られた存在であるモブキャラが自己実現や存在意義を見つけようとする物語。『アイの歌声を聴かせて』のAIロボットは……(ネタバレになるので自粛)。

『竜とそばかすの姫』(2021)

「歌う」ことに説得力を持たせたアニメ映画ということが共通。クライマックスでは共通項も、また全く違う精神性も見てとれる。

ディズニーミュージカルアニメ映画全般

『アイの歌声を聴かせて』はディズニーアニメ映画に多大なリスペクトを捧げた作品である。主人公のサトミの部屋にも注目してほしい。

ミュージカル映画が苦手な方

「突然歌い出すのって変だよね」というミュージカルの違和感を逆手に取った設定があり、しかも作劇に深い意味を与えている。

すでに『アイの歌声を聴かせて』を観た方

本作はリピーターがものすごく多く、「2度目からが本番」とも言われている。物語の構造上2回目以降がもっと面白く観られるし、テンポがとても良いし、何度観ても新しい発見がある。もう一度観てください。スマホカバーがキャラごとに違ったりしているそうなので、そういうディテールにも注目するといいだろう。

この他の、似ているおすすめの作品は、筆者のツイートのリプライでも多数の意見が寄せられたので、ぜひ参照してほしい。

また、『アイの歌声を聴かせて』はSF作品のオマージュも多い。AIロボットの芦森詩音という名前は、SF作家で「ロボット工学三原則」の発案者アイザック・アシモフと、山本弘の短編小説集『アイの物語』に収録の『詩音が来た日』が元ネタだろう。(さらに「シオン」の花言葉を調べるとエモい!)

また、天野悟美と素崎十真という主要キャラクターの名前を一文字ずつ取って並べると「真悟」となり、それは楳図かずおのマンガ『わたしは真悟』からの引用だ。



他にも、吉浦監督のアニメシリーズ『イヴの時間』や短編アニメ映画『アルモニ』からも『アイの歌声を聴かせて』との共通項を見つけられるはずだ。しかも、『アルモニ』から再登場しているキャラクターもいる。



つまりは、『アイの歌声を聴かせて』にはこれほどまでに数多くの要素があり、先人の作品にも多大な影響を受けているということだが、それらが上手く作品の中で融合しており、しかもオリジナリティも多分にあることが重要だ。そのオリジナリティとは、明るく楽しいミュージカル青春群像劇にしたことはもちろん、中盤に斬新すぎる「ジャズ柔道」がある以外にも、AIの危険性だけでなく、そのポジティブな可能性を見つめた作品であることではないか。

AIを扱った作品は、その「反乱」だったり、人間を支配するのではないかという恐怖をネガティブに描くことも多い。そうした作品ももちろん良いのだが、元々AIは人間が「より良い」何かを目指してつくろうとしたものではないか。

これからもAIが発達するであろう未来に向けて、AIをポジティブに明るく描く(しかもちょっと怖い描写でAIの危険性を示すフラットさもある)『アイの歌声を聴かせて』はそれ自体が画期的であるし、今の世にこそ必要な映画だと思ったのだ。以下の吉浦監督のインタビュー動画でも、そのことが訴えられているので、ぜひ参照してみてほしい(30分以上ある動画なのでラジオのように聴くのもおすすめ)。



まだまだ『アイの歌声を聴かせて』を観てもらいたい、届けたい人はたくさんいる。特に、子どもや若者にこそ観てほしいと願うばかりだ。きっと、今にこの作品を観た彼らが、大人になった時、「2021年にすごい映画があったんだ」と振り返る時が来る……そう信じてやまない。最後にもう一度言おう、この大傑作を、映画館で観てくれ!

(文・ヒナタカ)

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作品情報

【あらすじ】
景部市高等学校に転入してきたシオンは、登校初日、クラスで孤立しているサトミに「私がしあわせにしてあげる!」と話しかけ、ミュージカルさながらに歌い出す。勉強も運動も得意で底抜けの明るさを持つシオンはクラスの人気者になるが、予測不能な行動で周囲を大騒動に巻き込んでしまう。一途にサトミのしあわせを願うシオンの歌声は、孤独だったサトミに変化をもたらし、いつしかクラスメイトたちの心も動かしていく。

【予告編】










【基本情報】
出演:土屋太鳳/福原遥/ 工藤阿須加/興津和幸/小松未可子/カズレーザーほか

原作・監督・脚本:吉浦康裕

共同脚本:大河内一楼

キャラクター原案:紀伊カンナ

総作画監督・キャラクターデザイン:島村秀一

アニメーション制作:J.C.STAFF

上映日:2021年10月29日(金)

制作国:日本
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