今回のテーマは『ムンクの絵』。
ムンクの絵を見ていると不安になる3つの理由
見ていると不安な気持ちになる絵画があります。そんな作品を多く描いたのが、エドヴァルド・ムンクです。
代表作『叫び』では、見る者を不安にさせる3つの要素があります。うねった大蛇のように描かれたオレンジ色の不気味な空、遠近法を極端に強調した左上から右下へと横切る橋の欄干、そして性別もわからない誰かが耳をふさいで顔をゆがめている姿。描かれているものすべてが一体となってゆがんでいて、安定感とは真逆にある“不安感”を抱いてしまうのです。
それもそのはず、この作品のテーマは、人間の心の闇の表現。発表当時は評判が悪かったものの、現在では高く評価され、世界的な名画として知られます。
この作品に限らず、ムンクの描く作品の多くは、自分の人生での病苦や不安をテーマにしています。作品を完成させるまでに試作を繰り返し、より不安感を高める修正を重ねていました。彼の作品を見て不安に感じるのは、まさに画家の狙いなのです。
見開いた目やふさいだ両耳で不安を表現
この作品のほかに、同じタイトル同じモチーフの作品が4点あります。この油彩画のほかは、パステル画やリトグラフなど。耳をふさいでいる人物はムンク本人だとされています。
不安になる理由その①
青空ではなく不思議なオレンジ色で、不気味にうねった空の描写で不安な気持ちに。
不安になる理由その②
橋の欄干の描き方が、遠近感をより強調しており、普通とは違う見え方のため落ち着かない。
不安になる理由その③
性別も年齢も不明、服装などからも想像できないという、正体不明な人物の謎。
【豆知識】
幼い頃に母親と姉を亡くし、精神病に苦しんで精神病院に入院するなど、苦悩があったムンク。描いた作品を屋外に長期間放置して雨ざらしにするなど、変わった行動をする人物でもありました。
次回のテーマは「名画か落書きか。謎に包まれたバンクシー、その絵のすごさとは」です。お楽しみに!
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青い日記帳 監修:川瀬佑介 【著者:青い日記帳】Tak(たけ)の愛称でブログ「青い日記帳」を主宰。