今年で10回目となる真夏のハンバーガーイベント「六本木グルメバーガーグランプリ」が開催中です! ハンバーガー探求家の松原好秀さんは同イベントを「極めて良質な食フェスである」と評していますが、そのココロは? 注目すべき参戦バーガー5品も聞きました。
六本木グルメバーガーグランプリとは?
開催中の「六本木グルメバーガーグランプリ 2024」は、六本木ヒルズと昨秋開業の麻布台ヒルズが舞台。
年間を通じてさまざまなイベントが開催される六本木ヒルズですが、中でも「バーガーグランプリ」は、フード系の催しで最大集客を誇る大人気イベントです。スタートは2014年。途中、コロナ禍の2020年は歴代受賞作を復活販売する形式で実施されたため、"グランプリ"としては今年で10度目です。そんな節目を迎えた真夏の恒例企画もいよいよ終盤戦ですが、あらためて、その人気の秘密に迫ります。
六本木グルメバーガーグランプリとは何か。それは「極めて良質な食フェスである」と評することができます。ベストな料理をより良いコンディションで食べられる――そんな好条件・好環境がバーガーグランプリには整っています。以下、詳しく見ていきましょう。
このイベントは特設会場に参加店が集まる「食フェス」のスタイルでなく、参加客が各店を回る「スタンプラリー」形式をとっています。つまり、会場は各店の店内。スポーツに例えれば「ホームゲーム」。
たっぷり2カ月の長期開催なので、食べる客の側もムリに何軒もハシゴすることなく、常に体調を良好に保ちながら参加できます。予約できる店なら行列に並ぶ時間と体力の消費も避けられて、ラクに、快適にお目当てのバーガーと向き合えます。要らぬ負担の少ないイベントと言えるでしょう。
2部門で審査する理にかなった実施形態
殿堂入りのバーガーを除く25バーガーは、2つの部門に分かれてエントリーしています。ひとつは、普段から常にハンバーガーを提供している店のグランドメニューに載るバーガー。これを「レギュラーメニュー部門」と呼びます。もうひとつは、グランプリに合わせて各店が考えた期間限定販売のバーガー。こちらは「特別限定メニュー部門」。つまり、専門店が作る本格・王道なバーガーと、他ジャンルの店がそれぞれの技法を凝らして作る創作的なバーガーとを「分けて審査する」方式が初年の2014年から採用されています。これは実に先進的な、理にかなった審査法です。
そして、このグランプリが単なる「創作バーガーコンテスト」に終わらない理由が、参加店の顔ぶれにあります。
「エーエス クラシックス ダイナー」のような都内を代表するバーガー専門店がある一方で、「ヒルズ ダル・マット」は西麻布の大人気イタリアン「プリマット」の姉妹店、「ラ ブリアンツァ」は6年連続ミシュラン ビブグルマン選出の名店。さらに韓国料理の「KOREAN BBQ 水剌間」、ベーカリーカフェの「ブリコラージュ ブレッド アンド カンパニー」など、近年話題の店も多数参加しています。そして、彼らが作るバーガーは、ハンバーガーである以前に「そもそも一皿の料理としておいしい」ものばかり。そこが六本木ヒルズのクオリティ!
今年はレギュラーメニュー部門に9品、特別限定メニュー部門に16品がエントリーしています。審査・投票するのはバーガーを食べた「あなた」――。
昨年までは投票用紙を投票箱へ投じる方式でしたが、今年から電子投票を導入しました。専用webページにアクセスすると、食べた店のバーガーを採点・投票できるシステムです。さらに「デジタルスタンプラリー」にもなっており、食べた店の数だけスタンプがもらえて、その数に応じて景品がもらえるという、食べ歩きの楽しみを何倍にも膨らませる好企画にグレードアップしています。
投票は「味」「インパクト(見た目)」「クリエイティビティ」の3項目を評価。その結果を集計してグランプリ(優勝店)を決めます。
歴代優勝店は「リゴレット バーアンドグリル」(7回)、「37ステーキハウス & バー」(6回)、「エーエス クラシックス ダイナー」「バルバッコア」(2回)、「ヒルズ ダル・マット」(1回)の5店。「インパクト賞」「クリエイティビティ賞」は「バルバッコア」(4回)、「とんかつ 豚組食堂」「毛利 サルヴァトーレ クオモ」(各2回)、「TUSK(タスク)」「鐵ちゃん」(各1回)。なお、2019年の「バルバッコア」は「グランプリ」「インパクト」「クリエイティビティ」の3賞総ナメでした。
現在開催中の「六本木グルメバーガーグランプリ2024」は10回目の記念大会です。はたしてグランプリの行方は――次のページで注目すべきバーガー5つをご紹介します。
探求家の注目バーガー5選
注目のバーガー① 37 ステーキハウス & バーグランプリ最強王者がこちら“サーティーセブン”。レギュラー部門は2015~17年まで3連覇、特別限定部門も2021~23年まで3連覇して共に殿堂入り。今年は賞レースには加わらず、「殿堂入りのバーガー」として提供しています。
強さの秘密は参加店中でも数少ない「炭火焼き」。じっくり焼き上げたパティは21日間熟成のUSブラックアンガスビーフに豪州牛を合わせた180g。リブロースなどのステーキ肉の"挽材"を集めて7mmの粗挽きに。
今年はイタリアの野菜煮込み「カポナータ」に生ハムとモッツァレラを合わせた地中海風アレンジ。どっしりと安定感のあるパティの上に生ハムの塩気とカポナータの甘味がほんのり乗って、夏らしい明るく陽気な味わいです。王者の余裕と風格が漂う一品!
注目のバーガー② グランドフードホール
ヒルサイドエリア地下2階のこちらはハイセンスな食品スーパー。通称“グラホ”。社長自ら全国を巡って買いつけた逸品がそろうセレクトショップであると同時にデリカテッセンも充実。看板商品のローストビーフをはじめ、すべて店内で調理・製造しています。
グランプリには2022年以来2度目の登場。今回のバーガー用に宮崎県産の和牛でローストビーフを特別製造。厚さ3~4mmのスライスが国産牛120gパティの上に約80g乗る"Wビーフ"のバーガーで勝負です。パティにレホールソース、ローストビーフにはマヨベースのバーガーソースを配置。
注目のバーガー③ ラ ブリアンツァ
ミシュランガイド東京のビブグルマンに6年続けて選ばれたイタリアンの名店が、2016年以来2度目のグランプリ参戦です。ビブグルマンとは「価格以上の満足感が得られる料理」のこと。そんなお値打ち感満点の良質なイタリアンが食べられる「ラ ブリアンツァ」の「らしさ」をギュッと凝縮させた集大成的一品がこちら。
粉の配合まで指定した全粒粉の特注バンズに、人気メニューの牛肉煮込みをサンド。煮込みは肉と同量の玉ねぎ+トマトと共にグツグツ3時間。ハーブ・スパイスは不使用。玉ねぎの甘味が「ふわっ」と利いた、素朴でナチュラルな味わいのラグーです。そこへブッラータチーズの「とろっ」とおいしい部分だけをくりぬいてかけ、上からイタリア産のサマートリュフがたっぷり。いかにも夏らしい、ライトで爽快な味わいの限定メニュー。
注目のバーガー④ 鐵ちゃん
メトロハット/ハリウッドプラザ地下2階のこちらは、右から入ると寿司屋の「ぴんとこな」、左から入るとマグロ専門店「鐵ちゃん」というユニークな店舗。中はつながっています。昨年「マグロカツバーガー」で初参戦してインパクト賞に輝いた鐵ちゃん。今年は秀逸なアイデア作で勝負です。
注目はマグロの赤身と牛肉を50:50で合わせたパティ。これは新しい! この日のマグロは長崎・五島列島で水揚げされたもの。これを細かくチョップ(手切り)して中挽きの牛肉と合わせ、鉄板の上でギューッとスマッシュ! かかるソースはわさびマヨ。そのすりおろしたわさびが派手に「ツン!」と利くところへ、オニオンの辛味と生ピーマンの苦味。ケチャップ&マスタードも派手にかかって、年に一度の祭りにふさわしい、何ともにぎやかな内容。しかもこれが熱いほうじ茶と劇的な相性。こんなにお茶と合うバーガーは初めて! インパクトと刺激に満ちた一品です。
注目のバーガー⑤ リゴレット バーアンドグリル
レギュラーメニュー部門の3連覇=殿堂入りが懸かるリゴレットは、両部門通算7度のグランプリを誇る強豪。席数164席+個室2室の大きな店は中も外もキラキラ。絶えずにぎやかで活気に満ちたカジュアルダイニングです。
特別限定部門のこのバーガーは鶏モモ肉230gを使用。マリネの段階で余計な水分を抜き、味を凝縮させたチキンを180℃の油で揚げたのち、オーブンに入れてカリカリに仕上げています。その上からホットソースとゴルゴンゾーラ入りのタルタルソース。挟むバンズは系列店の「SHIBUichi BAKERY」作――という内容。これが辛い! 容赦なく辛い! 予想の上を行く辛さはハバネロから。そして堪らぬ旨味は溶かしバターから。救いはミルクバンズの甘味。その合間を縫ってチキンの皮の芳ばしさ。辛いけれども竹を割ったような明快なおいしさ。とんでもない辛さを"お見舞い"されるキャッチーでホットな一品!
「いつもの店内」「いつもの厨房」という最高の条件がそろった決戦の舞台、それが六本木グルメバーガーグランプリです。もしもハンバーガーという食べ物に他の料理の技法や工夫が加わって、「何か新しいもの」が生まれるとしたら――最も高くその可能性を秘めた"創造の場"は、この六本木グルメバーガーグランプリであろうと筆者は考えます。皆さんもぜひその「参加者」となって、ゆったり快適に真夏のグランプリをお楽しみください!
松原好秀 まつばらよしひで ハンバーガー探求家。評論家。2014年に『ザ・バーガーマップ東京』(幹書房)出版。ハンバーガー関連の企画でテレビ&ラジオの出演多数。映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』(2017)の公開記念キャンペーンも担当 この著者の記事一覧はこちら