本の要約サービス・フライヤーが展開する「Dig Talk」は、本をひとつのきっかけとして、その人の人生の奥底を「深掘る(ディグる)」動画コンテンツです。
今回は、相方サーヤさんと独特のテンションでの笑いを提供しているラランド ニシダさんが登場。YouTubeチャンネルでも「ダメ男」としていじられつづけていますが、本と文章にかけるアツくて純粋な思いを語る、ちょっと珍しい一面をのぞかせました。
大学を中退してから就職したこともなく、貯金も結婚の予定もなくて、「ふつうの人のライフステージの変化はすべて乗り遅れてきてしまっている」と語るラランド ニシダさん。芸人でありながら、対面で人と話すと「言葉になる前の段階のものがガッと溢れた感じ」になって、うまくコミュニケーションできなくなるそうです。そんなニシダさんだからこそ、「ふつう」をどう表現するのかへの感度が人一倍高いのかも? 動画の見どころを4つ、紹介します!
■グロいことを美しく描く小説
中学生から純文学が好きになって、図書館にあった太宰治や芥川龍之介などの本を読みふけっていたというニシダさん。そんなときに出会ったのが小川洋子さんの『妊娠カレンダー』でした。これをきっかけに、小川洋子さんは「一番好きな小説家」になっていきます。
太宰や芥川にも人間の裏側をかたどる描写は数多くありますが、初めて『妊娠カレンダー』に触れたニシダさんは、「小説にはこんなグロいこと(倫理的にもよくないこと)、答えのわからないことを書いていいんだ」と感じたそうです。
物理的に殴りつけよう、直接的な言葉で傷つけようという、一般的な意味での暴力性とは違う残虐性。しかもそれが美しい文章で描かれている――。
どんな感情でも言語化できると思っていたニシダ少年は、説明のできない「グロテスクさ」が本になる、ということ自体に衝撃を受けます。
■人と話すって難しい
テレビや漫才の舞台、YouTubeでの様子を見ていると、ニシダさんが「しゃべるのがあんまり上手じゃない」というのはかなり意外な気がします。
プライベートで生身の人間と相対する場面では、人前で話したり演じたりするときとはまったく違う能力が必要になってきます。ニシダさんは「相手を慮って言うとかがあんまり得意じゃない、だから友だちもあんまりいなかった」と表現していますが、その場で考えながら話す、会話するのは思ったよりも難しいものです。だから、「言いたいことを時間をかけて書くほうが性に合っている」という自己認識になった。
芸人として一定の評価を得たニシダさんが、なぜ書くことに、ひいては芥川賞にこだわっているのか? その裏側の気持ちには、結構共感ポイントがあります。
■文章の「指針になっている本」
今まで読んだなかで「一番気高い本」とするのは、近藤康太郎さんが書いた『三行で撃つ』(CCCメディアハウス)。ニシダさんが小説を書くための方法論を探す過程で見つけた、文章を書くうえでの「指針になっている本」です。近藤さんの文章はとにかく「文章がうますぎて良くないなって思うぐらい」だとか。
近藤さんは新聞記者として海外支社などでも働いたのち、突然長崎に畑を買い、朝は畑仕事や狩猟、昼から新聞記者の仕事、という一風変わった生活を始めます。文章の技術と、人とは違う境遇が掛け合わされるので、とにかく書いたものがおもしろい。
『三行で撃つ』のなかでニシダさんが参考にしていることの例としてまず挙げたのが、本当に大切なことは「ユーモアを交えて書け」「苦い薬ほどチョコで包め」ということ。結構真面目なところがあるニシダさんだからこそ、このアドバイスが刺さった理由には納得です。
■書くことは「自己否定」
『三行で撃つ』のなかで、もうひとつ挙げてくれた参考ポイントは、「常套句を書くな」。常套句を使うことは、自分の視点を捨てることにつながるからです。
たとえば「抜けるような青空」。ほかに自分なりの表現が見つからなかったら、単に「青空」としたほうがまだいい。小説であれば、登場人物がどのような状況、感情でその空を見ているのかをまず考える。この後に何か素晴らしいことが起きることを予感させるのか。
こうした「ハウツー」には哲学を感じます。答えがわかっていることではなく、自分のなかで解決できない問題をなんとか言語化しすることでその問いに応えようとするのが、「書くこと」の本質。だからこそニシダさんは、自分でも何なのかよくわかっていないことを書こうと心がけているそうです。
その観点で考えると、芸人と小説を書く仕事はニシダさんにとって「すごく食い合わせが悪い」。
いかがでしたか? これらの内容を、ラランド ニシダさんの声と表情付きで受け取れば、より強い納得感を得られるはずです。ご興味のある方はぜひ、本編動画をお楽しみいただけますと幸いです。
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