総合ARPU収入は順調に増加、金融やコンビニとのシナジーも拡大

KDDIは2月5日、2025年3月度第3四半期(2024年10月~12月)の決算を発表した。第3四半期の売上高は1兆5,084億円、営業利益は2,914億円となり、髙橋誠代表取締役社長 CEOは「持続的成長に向け、各事業の取組みが着実に進展している」と語った。

第3四半期までの累計売上高は前年同期比2.3%増の4兆3,642億円、営業利益は2.0%増の8,646億円。
通期予想に対する進捗もそれぞれ75.6%/77.9%で、順調な進捗となっている。

第3四半期までの営業利益を事業領域ごとに前年度と比較すると、ローソン持ち分法利益の貢献が182億円と大きい。一方、通信ARP収入は35億円の増加ではあるが、第2四半期決算の時点では前年同期比で46億円の増となっていたので、第3四半期に限ってみるとやや足踏み気味といえる。

個人向け通信事業の領域では、前述のとおり通信ARPU収入が第3四半期までの累計で35億円の増加で増加幅が第2四半期時点を下回っているが、付加価値を含めた総合ARPU収入は第2四半期時点では207億円増だったところ第3四半期までで279億円の増加と増加幅を上乗せできており、こちらも順調といえる。

スマートフォンの稼働数は引き続き増加傾向。解約率はマルチブランドでは市場の競争激化をうけて上昇となったが、auブランドの解約率は低水準を維持できているという。

マルチブランドでのID数は11月以降プラスに転換したとのこと。これにはauの「auマネ活プラン+」、UQ mobileの「コミコミプラン+」と新プランを導入し、povoでもさまざまな新トッピングを導入した効果が大きいとみている。このあたりは第2四半期の決算の際に「付加価値サービスを強化するau」「おトクな料金プランのUQ mobile」「パートナーと新たな体験価値を提供するpovo」と掲げた戦略が想定どおりに進んだといえそうだ。

総合ARPUは引き続き上昇傾向。ただしブランド別では、auが2.1%の増加でUQ mobileが3.3%の増加、UQ mobileからauへの移行は前年同期の1.5倍と、第2四半期時点と比較して数字はやや落ち着き気味だ(第2四半期時点ではそれぞれ約3%増/約7%増/約2.0倍となっていた)。

この総合ARPUの上昇に寄与しているのが通信と金融のシナジーだ。
前述の「auマネ活プラン+」は契約者数累計140万人を超え、使い放題プランの比率向上、付加価値サービスの利用増につながっているという。auの金融サービスの利用も成長している。

ローソンとの連携の効果も進展している。auスマートパスプレミアムがリニューアルした「Pontaパス」は、ローソン利用での特典を強化したことで新規獲得数が前年比約20%増。povo Data Oasisは、すでに延べ10万人の利用者がある。こういった施策の効果もあって、ローソンの日販は前年比3.4%増、Pontaパスからの送客は第2四半期のauスマートパスプレミアムからの送客の2倍に達しているという。

ローソンでは2030年に店舗オペレーションの30%削減、日販の向上という目標を掲げており、通信とコンビニ連携施策の強化で目標達成を目指す考えだ。

ネットワークの強化も引き続き継続して行っていく。2024年10月のOpensignalによるつながりやすさのユーザー体感評価で、KDDIはMNO4社中の1位になっているが、さらなる通信品質向上のためとして、Sub6基地局全域での5G SAサービス提供を開始。衛星とスマホの直接通信についても、商用免許の認可を取得済みで、2024年春より200万人規模のユーザーへのサービス提供を目指している。Android/iPhoneどちらにも対応するという。

金融事業では、au PAYカードの会員が1,000万人を突破、auじぶん銀行の住宅ローン融資実行額が累計で5兆円をとっぱするなど、顧客基盤を順調に拡大させており、さらなる成長に向けて、三菱UFJフィナンシャル・グループとの連携を深化させてAI活用の取り組みなどを進める方針だ。


ソフトバンクとOpenAIの提携には「そこまで大きな投資をして大丈夫なのか」

ビジネスセグメントでも売上高/IoT回線数は順調に成長。ビジネスプラットフォーム「WAKONX」(ワコンクロス)を各業界に活用していく方針だ。AI活用については、現行の多摩データセンターに加え、シャープ堺工場跡地に建設するデータセンターの整備を進める。こういったAI基盤を活用し、WAKONXによる顧客のビジネスのデジタル化を進めていく。

将来に向けては、未来を担う人材の育成を注力対象のひとつに挙げる。また、KDDI VISION 2030に向け、2025年は本社移転や衛星とスマホの直接通信といった取り組みが控えているとし、AIで「つなぐチカラ」をさらに進化させていく。

そしてそのビジョンの実現には高付加価値型の経済好循環が必要だという。現在、日本における通信費用は非常に低廉に抑えられており、米国の半分程度となっている。通信品質も非常に高い。安定した高品質なサービスを提供して適切な対価を受け取ることで、トラフィック増やインフラ設置・保守のコスト増を吸収し、持続的な取引を行うことが必要だという考えを示した。

髙橋氏のプレゼンテーションを受けて、メディアとの質疑応答が行われた。その主なやり取りを以下に紹介する。
なお、以下のKDDIからの回答はいずれも髙橋氏によるものだ。

―ソフトバンクとOpenAIの提携をどう受け止めたか。

具体的な内容がぴんとこなかったのでコメントが難しいが、AIがLLMからエージェントへ移行しているというのは明らかで、エージェントを法人に販売する会社を作るというのは、そういう方向性なのかと思った。ただ、AIの世界がとても速いスピードで動いているのに、OpenAIにそこまで大きな投資をしてしまっていいのかなと個人的には思う。ただ、孫さんのやられることなので、いろいろと構想があるのだろうと思います。

―12月末のガイドライン改正の影響は。

年末ぎりぎりだったので駆け込み需要が測りづらいが、それほど大きな影響はなかったと考えている。今後、「お試し割」の問題なども含め、他社の動向を見て慎重に検討したい。

―povoデータオアシスの利用状況は、ユーザー数や無料であることなどを考えると少ないようにも思えるが。

利用者が10万人以上で、全店舗のeSIM販売がない状態でけっこう使われていると考えている。全店舗での販売が始まれば活性化されると思っていて、期待したい。

―auの「マネ活プラン」が「マネ活プラン+」になって変化はあったか。


機種変更の約8割という選択率になっている。「プラス」になって加速していると考えてよいのでは。
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