インターネットイニシアティブ(IIJ)は2月7日、2025年3月期第3四半期の決算を発表した。同日開催された説明会では、代表取締役 社長執行役員 Co-CEO&COOの勝栄二郎氏と取締役 専務執行役員 CFOの渡井昭久氏が説明を行った。
システムインテグレーション領域が好調で増収増益
2025年3月期第3四半期の決算は、累計売上高が前年同期比14.0%増の2,293億円、累計の営業利益が同じく2.1%増の207億円。当期利益は6.2%増の138億円となっている。
事業領域別にみると、システムインテグレーション領域の成長が大きい。この領域は前年度に成長の鈍化がみられ、「案件は活発ではあるが来期以降に計上となる大型案件が増えているため」と説明されていた。2024年度に入ってからはその言葉どおり好調が続いており、今回の説明会でも数十億円規模の売上が第2四半期/第3四半期から複数売上計上されていることが報告されている。第4四半期から売上計上となる案件も予定されていることから、今後も順調な進展が期待できそうだ。
ネットワークサービスの領域では、法人向け/個人向けともに売り上げ高は安定して推移。原価状況も安定しており、部分的には増減がありつつも大きな変化はないようだ。
なお、ネットワークサービスの原価に影響するNTTドコモのモバイルデータ接続料は、2023年度分が2024年12月に確定しており、2023年3月の提示額が単価15,644円だったところ、確定額は前年度比で24.7%減の15,042円となった。
IIJmioの回線数は減少、3月のプラン改定で競争力向上を図る
モバイル/IoTの事業状況は、法人モバイルが非常に好調で、回線数が300万回線に達した。ネットワークカメラ/GPSデバイス/車載器の既存分野での拡大と新規分野での活用がともに進んでおり回線数の増加につながっている。
対して、個人向けモバイルのIIJmioは回線数が約1万回線の減少となっている。これについては、競争条件が厳しくなっていることに加え、この期間にキャンペーンを控えていたことが要因にあるといい、大きな問題があるとは考えていないようだ。
IIjmioは、3月1日に「ギガプラン」のデータ容量増量や料金引き下げを実施することを発表している。昨今通信の大容量化が指摘されることが多いが、IIJmioの「ギガプラン」でいえば現在も2ギガプランと5ギガプランで全体の4分の3を占める。5ギガプラン/10ギガプランの値下げには、これにより2ギガプランのユーザーには5ギガプランへ、5ギガプランのユーザーには10ギガプランへの移行を促す意味があると思われる。同様に、30ギガプランを35GBに増量したうえで料金を引き下げるのは、この容量帯こそ現在各社がしのぎを削っているゾーンだからだろう。勝社長は「お客様の満足度は今でもNo.1だと思っていますが、それをさらに上げる。ぜひ長期使用してほしいと思っています」とも語っていた。
なお前述のとおり、4月1日付で勝社長が退任し、谷脇康彦取締役副社長執行役員が代表取締役社長執行役員 Co-CEO & COOに就任する。この日谷脇氏は説明会の会場には姿を見せなかったが、同氏のプロフィールとともにメッセージが紹介された。
鈴木幸一会長はAIについての持論を披露
勝社長と渡井専務からのプレゼンテーションに続いては、代表取締役 会長執行役員 Co-CEOの鈴木幸一氏がIIJの事業や国内ITの動向についてコメントした。
鈴木氏は2024年11月より、新たに設置したAI導入実験室の室長を兼任している。
鈴木氏は「会長をやめるというわけではない」と笑いつつ、「今後10%、20%の成長を目指すには、バックオフィスの整備が必要。人を増やすというだけでなく、AIのような新しい道具を使うことで、抜本的な対応ができるのではないか」とし、来期には新しい方向性・成果を発表できるのではないかと語った。
質疑応答の中では、バックオフィスをAIで効率化するという点について、IIJ1社としてはそれでよいとしても社会全体がそこに向かうと余剰人員が生じてしまうのではないか、労働人口の減少よりも早いペースでそれが進展してしまう可能性はないかという質問があった。鈴木会長は、自身が以前に工場の製造ラインで働いていた経験を例に、「当時は組み立てラインでたくさんの工員が並んでいたが、(技術が進んで)あっという間に1人もいなくなった」とその変化の速さを語りながら「それでいま余剰人員がいるかといえばそんなことはない」と言い、経済成長などがあれば問題にはならないという考えを示した。ただそれに加えて、「たくさんの人が長生きするようになれば、それはちょっとわからない」として、「たくさんの高齢者が働けるようなAIの使い方があれば面白いかなという気がしています」とまとめた。
現在政府が進めているAIについての政策をどう思うかと問われると、「あんまり言うと怒られそうなんですが」と前置きして、「中国からすごい軽いソフトが出てきた。アメリカでは数十兆のお金をかけているけれど、中国ではそんなにお金をかけずに、頭のいい人がやっていると思う。頭のいい人を尊重すれば、AIの政策も変わるんじゃないか」と語った。
IIJ自身がクラウドサービスなどで国際市場に出ていく可能性については、「クラウドサービスには、アメリカの企業は毎年数兆円をかけている。
「情報通信の知見が深く、マネージメント力がある」と谷垣氏を評価する勝社長
また、勝社長に社長退任にあたってのコメントを求める質問もあった。勝社長は在任中の成果として、「いろんな社内の課題についてプロジェクトチームを作り、若手・中堅の社員とともに取り組んだ」ことを挙げた。谷垣次期社長については、「皆さんもご存じのとおり、情報通信の知見が深く、マネージメント力もある」とし、現在の中期経営計画で掲げている“データ駆動社会の実現”を谷垣氏がリードして実現してくれるのではないかと期待を語る。この12年間の業績については、「まずチャレンジするというIIJの社風があり、そのうえにあらゆるものがインターネットにつながり、インターネットの上に構築されるようになるという時代の追い風があった」と語り、将来についても「それをさらに推し進めなければならない。ツールとしてはAIがある。











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