京セラは2月18日、AIを活用した5G仮想化基地局の開発を、商用化に向けて本格的に開始すると発表した。合わせて、アジアの通信ベンダー6社と5G RANのオープン化の普及促進に向けたアライアンス「O-RU Alliance」を設立する。
京セラは3Gがモバイル通信の中心だった時代にはKDDI向けに基地局を提供するなどの事業展開を行っていたが、4Gの時代になって基地局事業からは撤退している。今回発表された「AIを活用した5G仮想化基地局の開発」が順調に推移すれば、それ以来の基地局事業再参入ということになる。
現在開発を行っている仮想化基地局は、NVIDIA GH200 Grace Hopper SuperchipをAIおよびRANが共有するプラットフォームとして持つ汎用サーバー上に基地局機能を仮想化して実装し、運用しようというもの。AIを活用して通信品質の向上/省電力化/保守・運用の効率化を実現するとしている。
オープンRANの推進や基地局の仮想化については、楽天モバイルが携帯事業参入当初より通信インフラを仮想化して構築しており、グループの楽天シンフォニーからはその外販への取り組みを進めている。NTTドコモも2018年2月に「O-RAN ALLIANCE」を設立し、オープンRANサービスをグローバルに提供する合弁会社をNECと共同で設立している。ソフトバンクはNVIDIA/Nokia/Ericssonなどとともに「AI-RANアライアンス」を設立し、RANのオープン化/仮想化に加えてAIの活用を図る動きを始めている。
すでに多くのベンダーが取り組んでいる基地局のオープン化/仮想化/AI化にあらためて取り組むことについては、発表当日に開催された記者説明会において、「AI-RANを目指しているベンダーは多く、われわれのものが特別というわけではない」としながらも、「TCOの削減にこだわり続けて価値を磨きたいと思っている」と語り、「AI-RANの前にオープンRAN実現のための壁を破らないと将来がないと思っている」「社会インフラなので、トラブルがあれば大きな問題になる。それを任せていいのかとしてはキャリアとしては考えるので、キャリアに任せてもらえるオープンRANを開発できるかにかかっている」と、コスト削減と信頼性の観点で他社との競争に臨む考えのようだ。
現在の専用RANによるインフラ、近未来のOpen-RAN/vRANによるインフラに続く次世代のインフラはAI化/クラウド化されたものとなり、現在とはまったく異なる様相を呈するというのが京セラの予測。このタイミングでの基地局事業再参入は、次世代の新市場の競争に参加するには今から本気で取り組む必要があるとの判断だろう。
現時点で協業するキャリアなどで話せるものはないとのことで、商用化の時期も未定とのこと。
また、まずは国内で実績を作り、それから海外への進出を図る考えだ。
同日発表された「O-RU Alliance」には、京セラのほか台湾Alpha Networks Inc.、韓国HFR、 Inc.、台湾Microelectronics Technology Inc.、韓国SOLiD Inc.、インドVVDN Technologies Pvt. Ltd、台湾WNCの6社が参加する。調印式は3月に開催されるMobile World Congressで開催される予定だ。
同アライアンスでは、「O-RAN規格」として共通仕様を策定し、参加する各社がこの企画に準拠した機器を開発することで異なるメーカーの機器間でも連携を行えるようにすることを目指していく。具体的な活動としては、京セラが提供するO-RAN規格に準拠する機器の相互運用テスト、京セラによる機器のO-RANインターフェース処理部のリファレンスデザインの提供、参画メンバーの相互紹介といったことが行われる。
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