安田顕の声が「めっちゃかわいい!」

フジテレビの動画配信サービス・FODと、CS・フジテレビTWOで配信・放送されているドラマ『今日のさんぽんた』(FOD:毎週金曜20:00~2話ずつ最新話配信、フジテレビTWO: 毎週土・日曜11:00~最新話放送)。柴犬・ポン太(のこ)の散歩係でありながら、能天気でちょっと抜けているがゆえにポン太の心の声(安田顕)にツッコまれる飼い主・りえ子を演じるのは、さくら学院でアイドルとして活動し、現在は様々な作品で役者として活躍する新谷ゆづみだ。

インタビューでは、ポン太役・のことのエピソードのほか、膨大なセリフ量の1人しゃべりに季節外れの衣装でのロケなど、「鍛えられた」という撮影の舞台裏を語ってくれた――。


○膨大なセリフ量でシーンも混乱

――“犬と演技するドラマ”という作品ですが、オファーを聞いたときの感想はいかがでしたか?

びっくりしました! 「あれ? ほぼ私と犬しかいないんじゃないか?」と思って。台本を読み進めると友達が出てきたりしましたが、基本ずっと1人でしゃべっているので。動物とお芝居をするのも初めてですし、結構不安でした。

――その不安はどのように解けていったのでしょうか。

お散歩でポン太のスピードに合わせながらセリフを話すタイミングをつかむのが難しかったんですが、何回か練習するうちに、のこちゃんが私に慣れてきてくれるような気がしたんです。信頼関係がだんだんと生まれて、歩くテンポとセリフのテンポが合ってきたような感じがして、安心してきました。

――掛け合いのシーンは、ポン太のセリフを想像して間を開けてしゃべるという感じで撮影していたのですか?

そこだけ待って、またずっと1人でしゃべるという感じでした。リハーサルのときは監督が読んでくださったりしたんですけど、その声が入っちゃったりするので本番では1人なんです。

――そうすると、ポン太のセリフも覚えなければいけなかったんですね。

そうなんです! さらに、ずっとお散歩しているので、どのシーンのどこの散歩のセリフか分からなくなることも結構あって。

――ロケーションが変わらないから。

話数も多くて、前に撮った話を思い返して言うセリフがあったりするので、そこを区別して認識するのが大変でした。
頭がごっちゃになっちゃうんです。

――安田顕さんがアテレコするのは撮影後ですから、現場ではその声を想像できないですよね。

はい。監督が読んでくれる声が私の中のポン太の声になっていて、それが結構太めの渋い声でした(笑)。なので、出来上がった作品を見たら、安田さんの声がキュートで、のほほんとした雰囲気で「めっちゃかわいい!」と思いました。そのおかげで、野太い系と癒やし系の両方のポン太が楽しめたので、ラッキーでした(笑)

○脚本を超えてくる“アドリブ”

――ワンちゃんとの撮影はうまくいかないことも多いですよね。

そうですね。だからこそ、うまくいったときには、みんなが「のこちゃーん!」って感動して、一体感が生まれていきました。散歩の撮影でも嗅覚が働いて、何かがあると思ったら予想外の方向に行っちゃったり、台本にはない動きをしたりすることもあったのですが、「今ののこちゃんの動きのほうが良かったよね」となることも結構あったんです。

――脚本を超えてくるんですね。

そうなんです! のこちゃんのアドリブ力が素晴らしくて。

――よく吉田鋼太郎さんとか古田新太さんがアドリブをぶっ込んできて、それに合わせることで役者として鍛えられるという話を聞きますが、まさにそんな感じですか?

はい。
何が飛んでくるか分からないので、とっさの対応力が鍛えられたと思います(笑)

――2月19日の完成発表会でのこちゃんに会ったのは、昨年11月に撮影が終わって以来ということですが、衣装も髪型も違う新谷さんのことを覚えていてくれましたか?

覚えていてくれていた気がします(笑)。「のこ!」って呼んだら振り返って、とことこと寄って来てくれました。そっぽ向かれて来てくれなかったらどうしようと思っていたので、安心しましたね。

気合いで乗り切った強風の紙飛行機シーン

――散歩シーンをはじめ屋外のロケが多いですから、その面でも苦労されたのではないでしょうか。

ずっと外で撮影していたので、風が強かったり、雨が降ったりすると散歩のシーンが撮れなくて何も進まないんです。紙飛行機を飛ばすシーンでは、風が強すぎて全く飛ばなくて返ってきちゃったことがあって。でも、その日のうちにこのシーンは撮り切らなきゃいけないので、もうみんな気合いで、私のほかにも「俺なら行ける!」「私なら行ける!」と何人も投げたんですけど全然ダメで、「もうラスト1回!」というところで投げたらやっと成功したんです。全員が「よっしゃー!!」と喜んで、そこでも一体感が生まれていました。

――天候待ちのときは、のこちゃんと一緒に遊んでいたのですか?

はい(笑)。いつもカートに乗ってやって来るんですけど、そこにいるときにおやつをあげて、おやすみモードのときはカバーがかけられているのでそっと見に行ったりして、常に癒やしを頂いていました。
○和歌山感がすごい千葉県流山市

――和歌山県ご出身ということで、今回の役柄は関西弁だったので、やはりやりやすかったですか?

今まで標準語の役柄ばかりだったので、こんなにしっかり関西弁でお芝居するのは初めてでしたが、やりやすかったですね。自然と出てくる言葉なので、故郷の言葉はこれだなと改めて思いました。

――関西弁の中でも和歌山言葉は少し特徴があるのですか?

そうですね。
この作品のスタッフは大阪出身の人がとても多くて、和歌山の言葉と大阪の言葉で若干違うところがあると、どちらに合わせるかというのを話し合いながら撮っていました。

――ロケは千葉県流山市を中心にされたそうですが、和歌山と雰囲気が似ていたそうですね。

電車の高架下の雰囲気とか、川沿いの感じとか、すごく似ていました。いままでもたくさんロケしてきましたが、あんなに和歌山を感じるところはなかったと思って、ロケハンしてくださった皆さんが素晴らしいと思いました(笑)

――地元の人が言うなら間違いないですね。

最初に写真を見せてもらったとき、和歌山で撮るのかと思ったくらいです(笑)

21歳で中学生役「気持ちだけはすごく頑張って(笑)」」

――今回は小学生から大学生までのりえ子が登場する中で、新谷さんは中学生から演じられましたが、実年齢21歳で難しい部分はありましたか?

学校を卒業すると制服を着るのはやっぱり少し抵抗ありますね。中学生姿はツインテールで補わせていただいて、気持ちだけはすごく頑張って中学生になりました(笑)

――年代によってテンションを変えたりしたのですか?

監督とはそこのニュアンスがすごく難しいという話をずっとしていました。ガラッと変えすぎると、りえ子のキャラクターに反してしまうので、落ち着きは昔からあったということで、あとはもう気持ちの問題。とにかく「私は今中学生です!」と思うことで頑張りました(笑)

――小学生時代は、さすがに子役の方が演じられましたね。

小学生のりえ子と大きくなったりえ子が違いすぎないように、子役の子と話し合ったりしましたね。そしたら、監督に「カメラで見たら顔が似ているように見えてきた」と言われて、うれしかったです。

――年代が大きく変われば、季節も春夏秋冬演じているわけですが、撮影は昨年の秋に行ったそうで、暑さ寒さの苦労もあったのではないでしょうか。

ずっとロケで、最初は暑い日もあったのですがだんだん寒くなってきて、最後のほうはTシャツでブルブル震えながら撮ることもありました。逆に、すごくいい天気の日にニットを着たことも。
でも、のこちゃんが頑張っているから私も頑張らなきゃと思いましたね。

撮影が終わって“お散歩ロス”に


――実家では犬を飼われているそうですが、今回の作品を経て接し方は変わりましたか?

変わりますね。こんなセリフの掛け合いを聞いちゃったから、うちの犬とも「通じ合えているんじゃないか?」「これって返事してくれているのかな?」と勝手に思っちゃいます。

――声も想像しますか?

女の子なので、めちゃくちゃかわいい声を想像しています。まだちっちゃいんで、元気でハツラツとした感じですね。実家に帰らないと会えないので、ちょっと寂しいんですが、何も言わなくても両親が毎日動画を送ってくれるので、癒やされています。

――いつかは東京でも飼いたいですよね。

一緒にお散歩に行きたいです。撮影が終わってから、一人じゃ物足りない感じがすごくするんです。引っ張られたい(笑)

――では最後に、改めて今作の見どころをお願いします。

私は撮影現場で1人ずっとしゃべっていたんですが、実は犬がツッコんでいたというお話がすごく面白くて。漫画から映像になったときに、より鮮明にワンちゃんと人間との関係性を動きで見ていただけるので、皆さんにどんな気持ちになっていただけるのか楽しみです。


それと、のこちゃんがリードを引っ張られてもしっかり待っていてくれたり、合図してないのに小屋の中に収まってくれたりと、名演技もポイントです。ぜひ、りえ子とポン太のほっこりした日常を楽しんでいただけたらと思います。

●新谷ゆづみ2003年生まれ、和歌山県出身。2014年に「ちゃおガール2014☆オーディション」で準グランプリ、16年から成長期限定ユニット・さくら学院で活動し、19年に卒業。同年、映画『さよならくちびる』で女優デビューし、22年公開の映画『麻希のいる世界』で映画初主演を務めた。2024年は劇場公開が7作品と、注目を集める新鋭女優。
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