富士通、日立製作所、NECの3社は4月24日~同28日にそれぞれ2024年度通期の決算を発表した。本稿では各社の決算状況をお伝えする。
なお、直近の2024年度第3四半期、同上期の3社による、決算まとめ記事も参考までにご覧いただきたい。

増収増益の富士通はFujitsu Uvanceとモダナイゼーションがけん引

最初に4月24日に発表した富士通から。全社連結での売上収益は前年比2.1%増の3兆5501億円、調整後営業利益は同15.8%増の3072億円と増収増益。一過性の損益を除く調整後当期利益は同2.2%増の2409億円で過去最高となった。

同社が主力とするサービスソリューションは、売上収益が前年比5.1%増の2兆2459億円。特にFujitsu Uvanceが同31%増の4828億円、同70%増のモダナイゼーションが2010億円と成長をけん引。調整後営業利益は527億円増の2899億円、増収効果に加えて採算性の改善が功を奏した。

ハードウェアソリューションの売上収益は前年比1.1%増の1兆1199億円となり、システムプロダクトは前年の新紙幣対応の需要や大型好採算商談の反動を受けた。ネットワークプロダクトは需要回復の動きに大きな変化がなく、売上水準は継続して低い水準となった。

ユビキタスソリューションの売上収益は前年比7.9%減の2517億円だが、調整後営業利益は同29.6%増の313億円で着地。低採算となっていた欧州ビジネスを2024年4月に収束して、国内ビジネスへ集中したことで採算性が改善し、減収ながら増益となった。

一方、2025年度の業績について、前年度比2.8%減収の3兆4500億円を見込んでいる。
サービスソリューションは3.7%増の2兆3300億円の計画で過去最高を計画しているものの、ハードウェアソリューションおよびユビキタスソリューションが減収となる予想だ。

調整後営業利益は前年度比17%増で過去最高益となる3600億円の見通し。調整後当期利益は2500億円で、営業利益および当期利益ともに過去最高益を計画している。

日立は増収増益、来期は同様に増収増益を計画

続いては、4月28日に発表した日立製作所。2025年3月期(FY2024)通期の連結決算は、売上高に当たる売上収益は前年比0.6%増(Astemo除く3セクターの実績は14%増)の9兆7833億円、当期利益(親会社株主帰属)は前年比4.4%増の6157億円と、増収増益で着地した。

日立製作所 執行役専務 CFO(最高財務責任者) 加藤知巳氏は「2024年度はAstemoを除く3セクターで増収増益を達成した。国内IT市場においてDX(デジタルトランスフォーメーション)やモダナイゼーションの追い風を受け、デジタルシステム&サービス(DSS)が大きく成長した」と説明した。

2025年3月期通期は、Adj. EBITAが1兆1,465億円(前年比24.4%増)、Adj. EBITA率が11.7%(同1.7ポイント増)、コア・フリー・キャッシュ・フロー(コアFCF)が7805億円(同2091億円増)、ROIC(Return on Invested Capital:投下資本利益)が10.9%(同2.2ポイント増)となった。Adj. EBITA率とコアFCFは過去最高を達成し、ROICは初めて10%台に乗せた。

2024年中期経営計画の目標(売上収益、Adj. EBITA率、EPS成長率、コアFCF、ROIC)も成長戦略とキャッシュフロー重視の経営方針により、コアFCFとROICの改善を実現し、ほぼ達成。

FY2025の業績見通しは売上収益を10兆1000億円、Adj. EBITAを1兆1100億円、Adj. EBITA率を11.0%、当期利益(親会社株主帰属)を7100億円、コアFCFを6400億円、ROICを11%としている。

米国相互関税の影響としては、FY2025業績見通しに対し、直接影響の想定リスクをAdj. EBITAで300億円、当期利益で350億円が織り込まれている。
加藤氏はリスクが予想される主な事業として、米国のパワーグリッド、計測分析システム、インダストリアルプロダクツ&サービスを挙げた。関税対策として、これらの事業においてサプライチェーンの見直し、米国内での生産などに取り組む。

NECは2025中期経営計画のNon-GAAP営業利益目標を前倒しで達成

最後は日立製作所と同じく、4月28日に発表したNEC。同社の通期売上収益(日本航空電子工業(JAE)の非連結化の影響を除く)は前年度比1.5%減の3兆4234億円、Non-GAAP営業利益は同837億円増の3113億円、調整後営業利益は同636億円の2872億円となった。

NEC 取締役 代表執行役社長兼CEOの森田隆之氏は2025中期経営計画で掲げていたNon-GAAP営業利益を1年前倒しで達成し、想定以上の伸びとなった。2025年度のNon-GAAP営業利益は中計の目標から200億円の引き上げとなる3200億円を計画している」と述べている。

同社のセグメントは「ITサービス」「社会インフラ」「その他」の3つに分類している。ITサービスの通期における売上収益は前年度比6.2%増の2兆332億円、調整後営業利益は同530億円増の2371億円となった。国内は売上増に加え、収益性向上で大幅に増益(NECファシリティーズ除く)となり、海外(DGDF)は一過性費用(約100億円)を計上もAvaloqを中心とした収益性改善により増益となった。

通期における国内ITサービスの受注動向は前年度比12%増、領域ごとではパブリックが自治体標準化の案件増や中央省庁向け案件が堅調に推移。

エンタープライズは変動なし(0%)、業種別では金融が前年の反動減があるものの高水準を維持して前年度比9%減、製造は選別受注が一巡しDX(デジタルトランスフォーメーション)案件の増加で同9%増、流通・サービスは同5%増、その他はグループ会社のアビームコンサルティングが同13%増や消防防災案件が好調で同12%増となっている。

社会インフラの通期における売上収益は前年度比6.0%増の1兆1417億円、調整後営業利益は同302億円増の854億円、テレコムサービスは通信事業者の投資抑制や一過性損益があるものの、開発費を中心とした費用効率化で増益となった。


航空宇宙と国家安全保障領域に関わるICTソリューションを提供するANS(Aerospace National Security)は、案件を着実に実行して増収増益となり、政府予算の増加に伴う案件増かで年間5000億円庁の受注を継続。

一方、2025年度の見通しは売上収益が前年度比1.9%減の3兆3600億円、Non-GAAP営業利益は同87億円増の3200億円、調整後営業利益は同228億円増の3100億円を計画している。

以上が3社の2024年度通期の業績だ。各社における通期の業績だ。3社ともに増益となり、2025年度も期待したいところだ。
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