子どもの教育を考える上で「英語力をつけてあげたい」と思う親は多いのでは? 「より多くの情報にアクセスできる、知りたい情報を翻訳を介さずに理解できる、話したい人と自分の言葉で話せるなど、バイリンガルになるメリットは言うまでもなくたくさんあります」と幼児教育書『シリコンバレー式 世界一の子育て』(中内玲子 著/フローラル出版)でも綴られています。子どもをバイリンガルに育てるにはどうすればいいのでしょうか。
同書から一部抜粋してお届けします。

○バイリンガルに育てるために大切なこと

幼児期から適切な英語教育をすれば、お母さんやお父さんが英語を話せなくても、バイリンガルやトリリンガルに育てることはできます。

ただし、そのために守っていただきたい3つのルールがあります。これは、親が複数の言語を話す場合や、海外赴任している場合に特に注意していただきたいことですが、日本人の家庭で英語教育をする場合にも当てはまることがあります。
○一人につき一つの言語を使う

「一人1言語」はもっとも大切なルールです。特に、国際結婚をしたご家庭では注意すべきポイントです。

人が言語を習得するときは、頭の中にある「言語の風船」のようなものに言葉を入れていきます。お父さんが英語を話し、お母さんが日本語を話す家庭の場合は、子どもはお父さんと話すときは英語の風船、お母さんと話すときは日本語の風船といったように、話す
人によって風船を使い分けるのです。

たとえばお母さんが「Good morning! It's time to wake up. 早くご飯食べてね」など、会話の中で2つ以上の言語を混ぜて使ってしまうと、子どもは混乱し、どの言語の風船に情報を入れたらいいかわからなくなってしまいます。それにより、言葉を習得するのが遅れてしまう可能性もあります。

たとえばわが家では、私は中国語、夫は日本語で子どもたちに話しかけており、子どもたち同士の会話は中国語です。子どもたちは私が日本語も英語も話せることは知っていますが、私が子どもに向かって話しかけるときは、中国語以外は使いません。
街に出てみんなが英語を使っている環境でも、日本に帰ったときでも、私はつねに中国語で子どもと会話をしています。

バイリンガルの子どもが成長する過程で、たとえば「seaweed(わかめ)は好きじゃない」というように、日本語と英語の単語を混ぜて話すこともあります。子どもから親に話しかけるときは、わかるだろうと思って自分が話しやすい方法で話すのはある程度は仕方がないことだと思います。

ただ、それに対して、親も同じように単語を混ぜて子どもと話すのは適切ではありません。その話し方が当たり前になってしまうからです。

ある程度大きくなれば、一人の人が複数の言語を使っていても使い分けることもできますが、言語発達が確立する6歳くらいまでは、徹底する必要があります。特に、言語を習得する1歳から3歳頃は親は言語を混ぜずに話しかけることがとても重要です。
○親の母語を使う

親が複数の言語を話せる場合でも、自分の母語で話すと決めましょう。

たとえば、お父さんが日本人、お母さんが中国人で、日本で子育てをする場合、子どもに早く日本語を覚えてほしいからといって、お母さんが発音や文法が不完全な日本語で話しかけていると、子どもも不完全な日本語を習得してしまいます。

もちろん、子どもは家の外でも日本語を話すので、お母さんよりは日本語が上手になります。すると、もう一つの弊害が生まれます。子どもとお母さんが相談事や進路の話など込み入った話をしようとしたときに、お母さんが子どもよりも日本語がうまく話せないため、親子の会話が思うように成り立たなくなってしまうのです。


それに、せっかく日中または日英中の多言語話者に育つかもしれないのに、お母さんが中国語で話しかけなければ、子どもは中国語を身につけられません。

ですから、たとえ幼稚園や学校の先生から、「日本語を早く話せるようになるために、お母さんも日本語で話しかけてください」と言われたとしても、中国語で話し続けるべきなのです。

これは日本人が英語で子育てをする場合も同じです。「子どもをバイリンガルにしたいから、できるだけ英語で話しかけている」という方もいるようですが、私は親がネイティブでないかぎり、子どもと英語で会話をすべきではないと考えています。

一緒に英語のDVDを見るなど、「今は親子で英語を話す時間」と決めて話すのはかまいませんが、日常会話まで英語にするのは、メリットよりデメリットのほうが多いのでおすすめはしません。

英語を話すのはほかの人にまかせましょう。親が無理をして英語を使わなくても、環境を整えれば英語は話せるようになります。
○決めた言語をずっと使い通す

私は、妊娠中から今まで、ずっと子どもたちに中国語で話しかけています。

幼児期に複数の言語を覚えさせることは、実はそれほど難しいことではありません。難しいのはそれを小学校以降も使い通すということです。

わが家の場合、長男は学校では英語を使っているので、家に帰ってきたときは頭の中は英語の風船でいっぱいになっています。その状況で、私が中国語で話しかけると、長男はがんばらないと中国語の風船に切り替えることができません。


そのとき、長男の返事が遅いからといって、仮に私が英語で話しかけてしまったら、長男の脳は「もうママとは中国語で話さなくてもいい」と判断して、私に英語で話しかけてくるようになってしまいます。これは、脳がより効率的でストレスがないほうを選ぶから
です。

実際、幼稚園までは日本語と英語を話せていたのに、小学校以降にどちらか一つしか話さなくなってしまうお子さんは少なくありません。

バイリンガルやトリリンガルの子は、モノリンガルの子に比べ、2倍、3倍の言語処理をしているので、どうしても発話が遅れがちになる部分はあります。それでも、必ず話せるようになりますから、親は焦らず自分の母語で話し続けていいのです。

この「決めた言語をずっと使い通す」という点から考えても、英語のネイティブではない日本人の親が子どもに英語で話しかけることは現実的ではありません。最初は親が喜んでくれるのが嬉しくて英語で返していたとしても、日常会話が日本語なら親と日本語でし
か話さなくなるのは自然なことです。

それならば、最初から英語で話すのは親以外の役割にしておいたほうが、長い間、続けることができます。
○日本でバイリンガルに育てる「環境づくり」

バイリンガルやトリリンガルに育てる際のポイントを3つご紹介しましたが、「この通りにしなくてはいけないなら、結局、日本語が母語の親が日本で子どもをバイリンガルに育てるのは難しいのでは?」と思われるかもしれません。

その答えはイエスでもありノーでもあります。親だけの力でバイリンガルに育てるのは、難しい部分もあります。ただし、環境さえ整えてあげれば、日本でバイリンガルやトリリンガルに育てることは可能です。


その「環境づくり」にはつぎのようなポイントがあります。

子どもに英語を話す「メリット」を感じさせる
「英語の耳」を育てる
インプットよりアウトプットを重視する
英語を「学ぶ」のではなく「話す」環境をつくる
英語を話せるようになってから、読み書きをする

幼児期に子どもに複数の言語を習得させるのは思っているより難しいことではありませんが、習得した言語をしっかりと身につけ、ずっと使えるようにするためにはコツがあります。

ポイントは、赤ちゃんが言葉を覚えるのと同じ順番で子どもに英語を身につけさせることです。

『シリコンバレー式 世界一の子育て』(中内玲子 著/フローラル出版/1,980円)

Google、Amazon、Facebook、Appleなど最先端企業の親たちが選んだシリコンバレーのバイリンガル幼稚園経営者が教える 「世界に羽ばたく子」の育て方!
・今日から自宅で実践できる! 世界トップ機関の研究から導いた子育てアイデアが満載!
・モンテッソーリ教育、レッジョ・エミリア教育など一流の教育法をベースにした子育て法
・自身の3人の子どもをトリリンガルに育てた教育者の0~6歳の語学教育とは?
・⾃⼰肯定感、考える力、意志力、社会的スキル、国際的スキル----新時代に必要な「5つの⼒」を育てる。

中内玲子
台湾生まれ、日本育ち、アメリカ在住のトリリンガル(日・英・中)。3人の子どもたちもトリリンガルに育てた、2男1女の母。シリコンバレーの企業に勤める親たちから人気の日英バイリンガル幼稚園Sora International Preschool創立者。AMIモンテッソーリ国際免許取得。最先端企業が集まるシリコンバレーの視点をもとに、「自分の才能を伸ばし、国際社会で羽ばたける子」を育てる実践法を提唱。
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