グランドセイコーの魅力はどこにあるのか? 東京・新宿の時計専門店「ISHIDA新宿」でグランドセイコーを担当する本田誠也(ほんだせいや)さんに話を聞いた。

世界No.1の乗降客数を誇る東京の新宿駅。
海外からの観光客にも有名なこの街の時計専門店といえば、紀伊國屋書店のすぐ近く、新宿通りと靖国通りの間にある時計専門店「ISHIDA新宿」。その5階にある「グランドセイコー」コーナーを担当するのが、時計販売のキャリア10年のベテラン、本田誠也さんだ。

「私自身、グランドセイコーのファンで、これまで2本購入しています。最初に購入したのは年差±10秒を誇るキャリバー9Fというムーブメントを搭載したクオーツモデル。その次が機械式モデルです。妻の許しが出たら、3本目、スプリングドライブモデルを購入しようと考えています」(本田さん)

ショップを訪れたお客にオススメして販売するばかりでなく、自らも愛用するグランドセイコー。本田さんが考えるその魅力とは何だろうか?

「技術もすばらしいのですが、とにかく、ディテールまで徹底した造り込みです。作り手の方々が真面目に真摯に、妥協せずに最高の時計を作ろうとしている。機械式モデルを製造している岩手県雫石町にある『グランドセイコー雫石スタジオ』の現場を訪ねて、実際に作っておられる方々のお話を伺って、改めて実感しました」(本田さん)

特に感銘を受けたのが、機械式時計の心臓部、調速機の丸いテンプという部品を検品・調整する作業だという。

「バランスを取るために、担当の方がほんの、ほんの少しだけテンプを削って調整されるのですが、その作業が本当に微妙なんです。目で見てもわからないくらいくらい。その作業を確実に行う匠の技に感動しました」(本田さん)

製造現場を見学したことで改めて、それまで気付かなかったグランドセイコーの時計としてのすごさ、すばらしさに気付いたそうだ。


「時計のプロとしてお客さまに時計をオススメするとき、グランドセイコーは迷いなく万全の自信を持ってオススメできる時計です。クオーツも機械式もスプリングドライブも」(本田さん)

グランドセイコーには、世界でも珍しい100%マニュファクチュール(自社一貫生産)体制で開発製造されるその心臓部、ムーブメントを筆頭に、さまざまな魅力がある。その中でも本田さんが特に魅力的だと感じるのが、時計の顔である文字盤だ。

最近のグランドセイコーはカラフルなカラーダイヤルのモデルも充実しているが、本田さんの個人的なオススメは「雪白ダイヤル」モデル。白に見えても、実は白いペイントではなく、文字盤のシルバーが生み出す白。その美しさがすばらしいと語る。

「デザインがシンプルなので、パッと見は地味に見えるのですが、さまざまな角度から見ていただくと、光の当たり方で生まれる『光と影』が多彩に変化して、表情がびっくりするほど変わります。ダイヤカットされたインデックスや針、ケースやブレスレットのエッジの磨きの美しさもぜひ見てほしいですし、ブレスレットのしなやかさもぜひ、手で触れて、腕に載せて、ご自身で確かめてみてください。その奥深い魅力がわかっていただけるのではと思います」(本田さん)

新宿という場所柄、訪れるお客は日本はもちろん、訪日外国人観光客も多いという。

「昔は年齢が高め、40代以上のお客さまが多かったのですが、今は20代後半から年配の方々まで、本当に幅広くなりました。特に20代のお客さまが『グランドセイコー、かっこいい!』とおっしゃっています。日本のお客さまに人気なのは『白樺』文字盤のモデルですね。
そして外国の方に人気なのが『桜』など日本の自然をモチーフにしたモデルです。また、仕事が終わったあと、18時以降に来られるお客さまも多いです」(本田さん)

「製造現場を訪ねたことで、記事やカタログに載っていないこと、お客さまにお伝えしたいことをいろいろお聞きできました。お客さまにはそんなお話もさせていただけると思います。ぜひご来店ください。お待ちしています」(本田さん)

(取材協力)
ISHIDA新宿

全6フロアからなる時計専門店。1F~5Fは各ブランドの正規品を取り扱い、グランドセイコーは5Fにある(2025年6月時点)。B1はヴィンテージ(中古)専門フロア。

渋谷ヤスヒト しぶややすひと 時計ジャーナリスト、モノジャーナリスト、編集者。1990年代前半から徳間書店のモノ情報誌「GoodsPress」と同誌別冊の時計専門誌の編集者として時計の取材&執筆を開始。1995年からはジュネーブとバーゼルのスイス2大時計フェアと現地の時計ファクトリーの取材をスタート。徳間書店退社後の2003年以降、現在まで時計フェアと時計ブランドの現地取材を続けている。スマートウォッチやスマートフォンもカバーする。
ジュネーブ・ウォッチ・グランプリ(GPHG)アカデミー会員、日本時計学会会員。 この著者の記事一覧はこちら
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