アップルが「心臓からのメッセージ」と題したApple WatchのCMをYouTubeやテレビで公開し、話題になっています。当時49歳の男性が、いつものように趣味のサイクリングを楽しんでいたところ、心房細動の兆候をとらえたという通知がApple Watchに表示され、命にかかわる病気を早期に発見できたという内容です。


不整脈治療を専門とする医師も、「1日のうちわずか数分しか現れない心房細動の異常を把握できたのは、常に体に装着しているApple Watchならでは。ふだん通りに生活しているだけで、自分の心臓が発するサインに気づいてくれる。何か異常を感じた時、その場で自分で心電図が取れるのも大きい」とApple Watchを評価しました。

健康診断でも指摘されなかった心房細動、Apple Watchから突然通知が

前述のApple WatchのCMに登場したのは、エンジニアとして働く51歳の鈴木政博さん。趣味のサイクリングのログが取得できる点や、マスクをしていてもiPhoneのロックが解除できることを評価し、2022年にApple Watch SEを購入しました。

まったく自覚がなかった身体の異常に気付いたのが、2023年6月末。鈴木さんが49歳の時です。自宅でリモートワークをしていたところ、突然Apple Watchに「心臓のリズムに心房細動を示唆する不規則な心拍がみられます」という通知が表示されました。通知には「ぜひ医師に相談してください」という一文が添えてあり、ただごとではないと驚いて病院へ駆け込んだといいます。

病院で心電図を測定したところ、心房細動の兆候があると診断され、Apple Watchの通知は正しかったことが分かりました。毎年の健康診断ではまったく指摘されたことはなく、Apple Watchの意外な性能に鈴木さんは驚いたそう。心電図の測定には対応しないApple Watch SEに心細さを感じ、心電図測定機能を搭載したApple Watch Series 8をすぐ購入しました。


2023年8月、趣味のサイクリングに出ていた時にまたApple Watchに心房細動の通知が出て、心拍数も198にまで上昇したそう。その場で休憩しつつ、手首のApple Watchで心電図を測定したところ、やはり心房細動の兆候ありという結果が出てしまいました。

翌日、Apple Watchで測定した心電図のデータを持って病院で診察したところ、心房細動と診断されました。後日、手術を経て心房細動の心配はなくなり、今はサイクリングやライブなど以前と同じように楽しんでいるそう。まさに、Apple Watchが命を守るツールとして活躍したわけです。

”いつも身に着けている”Apple Watchならではの価値

不整脈治療を専門とする杏林大学医学部 循環器内科学教室診療科長の副島京子先生は、鈴木さんのエピソードを聞いて「Apple Watchを身に着けていたことで心房細動の早期発見につながった」と評価します。

「心房細動は、症状が出て自覚できるのは氷山の一角。水面下に潜む症状をいかに早く発見できるかが大事なんですが、心房細動は1日のうちわずか数分、人によっては年に数回しか出ないことも。24時間かけて心電図を解析するホルター心電図検査を年に1度、医療機関でやるよりは、日常的に装着しているApple Watchの方が確実に心房細動が検出できます」と、副島先生は常に身に着けているApple Watchのメリットを改めて評価しました。

副島先生は、心電図が取れることもApple Watchの大きな価値だと語ります。「何か感じた時、その場ですぐに心電図が取れるのは大きいですね。心電図もきれいで、ほかのデバイスとは違うと感じさせます。
その記録を持って医者に行けば、診断に役立ちます」

自身で計測などの行動を起こす必要がなく、時計として装着しているだけで心臓の様子をモニタリングしてくれるのがApple Watchの大きな価値だ、と副島先生は改めて説明します。「たとえ自転車に乗っている時でも、腕に装着していれば24時間いつでもヘルスケアデータが取れるわけですから。自分の健康に興味を持つきっかけとなり、心拍数など“自身の普通の状態”が可視化できるのも大きいと思います」

スケジュールやLINEなどの通知、キャッシュレス決済など、働きが目に見える機能とは異なり、心房細動の通知は異常がない限り表に出てこないので、Apple Watchのなかでは目立たない機能といえます。しかし、目立たないまま心臓が発するメッセージを日々モニタリングし、万が一の時は命を救うきっかけを作ってくれる存在となるのは見逃せません。iPhoneだけでは得られない機能をもたらしてくれるApple Watch、改めて存在価値を感じました。
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