世界自然保護基金ジャパンと中央大学は6月4日、絶滅が懸念されるウナギの取引や流通に関する最新のデータや調査結果等をまとめたファクトシート「ウナギ類の資源管理・流通の現状について」を発表した。
○資源の減少が深刻なウナギの取引などまとめる

ファクトシートでは、近年需要が高まり、違法漁業等の懸念も指摘されているアメリカウナギを含むウナギ類について、中央大学による日本市場での最新の調査結果と、関連する国際的な動向や課題を紹介している。
世界自然保護基金ジャパンと中央大学の研究員・白石広美氏と、同学法学部の海部健三教授が共同で発表した。

中央大学は、2024年に日本国内の小売店で販売されている133点のウナギの蒲焼の種別調査を行った。DNAを用いて種を判別した結果、約6割がニホンウナギ、約4割がアメリカウナギであることを確認。日本で販売されているウナギ製品に、アメリカウナギが多く含まれていることがわかった。

中央大学の白石広美氏は、「私たちが普段目にするウナギの蒲焼は、見た目ではどの種なのかを見分けることができません。そのため、気づかないうちにさまざまな種類のウナギを食べている可能性があります。しかし、種によって資源の状況や取引の実態は異なり、中には違法な漁獲や流通が問題となっているケースもあります」とコメントした。

2010年代前半のニホンウナギのシラスウナギ(稚魚)の採捕量減少や、ワシントン条約によるヨーロッパウナギの国際取引規制により、アメリカウナギの需要が世界的に高まっている。特にカナダでは近年、違法漁業が急増。カナダで許可されているシラスウナギの採捕量約10トンに対し、2022年には約43トンが香港に輸入されるなどの事態になった。

アメリカウナギは、養殖需要の増加を受け、カリブ海諸国でもシラスウナギの採捕や輸出が始まっている。多くは北米経由で香港に輸出され、そこから東アジアに再輸出されているため、実際の取引状況は不明瞭だという。
2022年にはハイチから100トンものウナギの稚魚が香港に輸入された記録があるが、政情不安の影響もあり、実態把握が難しいとのこと。

中央大学の海部教授は、「日本を含む東アジアにおけるウナギの消費は、在来種であるニホンウナギだけでなく、国際貿易を通じてさまざまな国・地域の生態系や社会に影響を与えています」とコメント。さらに、鰻料理は将来世代に繋ぐべきとても素晴らしい文化である一方で、ウナギの消費が他国に与えている影響についても、目を向けるべきであるとも語った。
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