日本で13年ぶり単独ライブ開催「ずっとやりたかった」

お笑い芸人の渡辺直美が、日本で13年ぶりとなる単独ライブ「渡辺直美コントライブ」を6月18日~22日に東京・IMM THEATERで開催する。現在はニューヨークを拠点に活動する渡辺が、なぜ今このタイミングで日本でのライブ開催を決めたのか。そして4年間のアメリカ生活で得たものとは――。


2021年に活動拠点をニューヨークに移し、2023年に全米7都市を回るトークライブツアーを開催。2024年10月にはニューヨークで初のスタンダップコメディ単独ライブを開催し、チケットが数分で完売するなど、アメリカでも着実に存在感を高めている。「渡辺直美コントライブ」も5日間計6公演の会場チケットは即完。6月21日の夜公演は配信も行われる。

日本での単独ライブを「ずっとやりたかった」と打ち明ける渡辺。「いろいろな仕事が重なって開催できるタイミングがなく、最近はアメリカでライブをすることが増え、『アメリカでライブやるけど日本でやってないね』ということになり、久々に開催することになりました」と経緯を説明する。

昨年、日本でファンクラブ限定のイベントを開催したが、今回はコントを届けるということで、「自分が書いたコントをどれだけの方が楽しんでくれるのかドキドキです」と、また違った楽しみがあるようだ。

すべて新作コントで臨む渡辺。日本人に共感してもらうために、日本のトレンドを意識してネタ作りに取り組んでいたそうで、「ニューヨークにいながら朝起きたら必ずXのトレンドを確認するようにしていました」と明かす。

そして、「明るく楽しく」という自身のモットーを大事にしつつ、多彩なネタを用意。「女性も男性も演じますし、その中でもいろいろなキャラクターを演じる予定です。『楽しかった』『たくさん笑った』と思ってもらうことが理想です」と語った。

○アメリカ移住から4年で成長実感「人として大きくなったなと」

アメリカ移住から4年。「めちゃくちゃ成長したなと思います」と人間的に大きく成長できたと胸を張る。

「言葉が片言の状態で人を笑かすという壁もありつつ、それをクリアしたらまた次という、私にしかできない経験を4年間でさせていただいたので、めちゃくちゃ自分に自信があるんです。それは『私、面白いですよ』という自信ではなく、人として大きくなったなと」

特に渡辺にとって大きかったのが“いつでもReady”精神を身につけたことだ。

「日本だったら、『準備期間ください』というのがありますが、アメリカは『やらないと何も始まらないよね』というのがベースで、準備ができてなくても『今やってみて』という感じで、どれだけスピードについていくかというところでだいぶ力がつきました。心の準備がなくても『いつでもReady』。アメリカ生活での成長の過程で得た言葉です」

観客からの質問に対して即興トークを披露するなど、ライブでも“いつでもReady”精神が鍛えられたという渡辺だが、ステージ上だけでなく、裏側でも常にその精神が必要だという。

「制作会社の人と会ったときに、『こういうのはどう?』と話したら、『その案いいじゃん! 明日企画書ちょうだい』と言われて。企画書を書いたことがなくても『わかった』と言うのがアメリカ。“いつでもReady”にしておかなきゃいけない。心の成長がとても大きく、“やってみよう精神”が身につきました」

「アメリカに行ってからもっとお笑いが好きに」

お笑いへの思いを再確認「アメリカに行ってからもっとお笑いが好きになりました」お笑いへの想いがより深く ## 志村けんイズムを胸に世界へ

また、さまざまな仕事を経験する中で、お笑いへの思いが「より強くなった」と明かす。

「お笑いから抜けていたつもりは全くないですが、ファッション、モデル、演技などいろんな仕事を経て、もっと笑いに力を入れたいなと。37歳にして改めて新しいお笑いに挑戦というか、13年経て大人になった自分がどういうコントを作るのかというのも興味があったし、お笑いの向こう側を見たいという思いがあります」

アメリカに移住したことも、お笑いへの思いを再確認することにつながった。


「ずっとお笑いが好きで、お笑い芸人だからこそいろんな仕事させてもらっているなと思っていますが、海外に行って自分のアイデンティティって何だろうと考えた時に、やっぱお笑いがベースだよねと。私はお笑いがやりたいんだと感じました」

海外での経験を通じてお笑いの素晴らしさも改めて感じたという。

「お笑いは世界共通で、一番みんなが求めているものだなと。お笑いを作る人たちは言語関係なく心がつながっていて、お笑いは世界を一つにしてくれるものだと海外に行って改めて感じ、アメリカに行ってからもっとお笑いが好きになりました」

○海外に進出した理由「いつまでも演じる側でいたいと思った時に…」

母子家庭で育ち、家で1人で過ごすことも多かった渡辺。当時は「テレビが友達」で、志村けんさんをはじめとする芸人たちに憧れて、自身も「寂しい思いをしている人たちを笑わせたい」との思いで芸能界を目指した。

日本中の人たちに知られる存在になり、そして、アメリカへ。海外に進出した理由も改めて聞いた。

「日本にいる時から海外のオファーが多く、日本で毎日仕事をしていたので断っていましたが、やりたいという思いに。そして、日本だと芸人のゴールが番組MCだったりしますが、私はコメディをやりたいと思っていて、いつまでも演じる側でいたいと思った時に、アメリカはMCをやる人もいれば、コメディ映画の主演をしている人もいて、いろんな道があるんだなと感じ、私もエディ・マーフィさんみたいにコメディ映画に出たいなと。自分の中の芸人のゴールはそこかなと思ってアメリカに行きました」

今年4月に、アメリカを代表する大手エージェンシーUnited Talent Agency(UTA)とマネジメント会社Brillstein Entertainment Partnersと契約したことを発表。土台が整い、ここからいろいろなオーディションに挑戦していきたいと意気込んでいる。

「エージェントに入っていないとオーディションの情報が入ってこないんです。
2021年にアメリカに行った時からエージェントに入っていましたが、そこが1年後につぶれてしまって。そして、昨年スタンダップをやった時に業界の人たちも呼んだら、その中で面白いと思ってくれたのが、大きいエージェントとマネジメントで、ここからオーディションを受けていくという段階です。私自身も“Ready”になりました!」

●“志村イズム”を大切にしつつ海外でさらなる進化を
現在の英語レベルについては「小3から小5ぐらいになりました」と謙遜気味に話すが、YouTubeで公開されているアメリカでのトークライブの様子を見ても、英語だけで観客と軽快なやりとりを繰り広げ、笑いを生み出している。

「4年経ってもこれしかしゃべれないんだということにたまに絶望を感じますが、移住したばかりの時よりしゃべれるようになっているなと。思いはすごく伝えられるようになったし、相手がどういう意図で話しているのかわかるようになったし、人を笑わせられるようになってきました」

とはいえ、英語だと伝えたいことの「2%」しかまだ伝えられないと言い、「日本語で話したら面白いのにと。お笑いはスピード勝負なので、片言でもいいから間だけはぴったりいきたいと思っています」と吐露する。

昨年は英会話の先生のみに習っていたが、さらなる上達を目指し、今年からは英会話の先生に加え、発音専門、文法専門の先生にも習うように。

「自分の悪い癖で、なんとなく顔でコミュニケーションを取っていて、これがよくないと今年気づきました。ニュアンスや愛嬌で乗り越えようとするから英語力が伸びないのかもしれないと。今年から厳しく教えてもらおうと思い、3人の先生に習うことにしました」

アメリカで結果を「コメディ映画の主演ができたら一番いいなと」


今後については「一番の理想は、アメリカでも日本でも仕事したい。拠点をアメリカにしつつ半々でできたら」と両国でのバランスの良い活動を目指しているが、「今はアメリカで頑張って結果を残さないといけない。応援してくれている日本の皆さんの期待に応えられる結果がアメリカで出せたら、日本に戻ってくる可能性はあるかもしれません」と語る。


アメリカで何を成し遂げたら結果を残せたことになるのか。

「コメディ映画の主演ができたら一番いいなと。主演じゃなくても、志村さんのような面白コメディ演技で映画に出られたら」

渡辺の中に根付いている“志村イズム”を大切にしつつ、海外で揉まれながら芸人としてさらなる進化を目指す。

「志村さんの表情や動きなど、小さい頃から見ていたので、とても影響を受けていますし、志村さんのような演技ができたらいいなと憧れ続けています。日本に育ててもらったお笑いを元に、アメリカで新しい挑戦もして、世界中の人たちを笑わせられるようになれたら」

活動の拠点は変わった今も、「みんなの生活の中に寄り添えるようなお笑い芸人になりたい」という思いは変わらない。「アメリカだろうが日本だろうが変わらず、いろいろな言語でたくさんの人を笑わせられる芸人になれるように頑張ります」と力強く語っていた。

■渡辺直美
1987年10月23日、台湾生まれ、茨城県育ち。2007年にデビューし、ビヨンセのダンスパフォーマンスでブレイク。お笑い芸人の活動として、映画、ドラマ、ファッションモデル、アパレルブランド「PUNYUS(プニュズ)」のプロデュースなど幅広く活躍。2019年から東京とニューヨークの2拠点生活を開始。2021年4月から拠地をニューヨークへ移す。インスタグラムのフォロワー数は1000万人以上。
2023年に全米7都市を回るライブツアーを開催。2024年10月にはニューヨークで初のスタンダップコメディ単独ライブを開催し、チケットは数分で完売した。
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