1995年に女優デビューし、今年30周年の節目を迎えた酒井美紀。現在、東京・TBS赤坂ACTシアターでロングラン上演中の舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』ではハーマイオニー・グレンジャー役を演じている。
2021年に不二家の社外取締役に就任、2023年には東洋英和女学院大学大学院の国際協力研究科修士課程を修了するなど、幅広く活動している酒井にインタビューし、演技の仕事にも生きているという大学院での学びについて話を聞いた。
○“俯瞰的視点”は国際協力を学ぶ中で身についた副産物
酒井は2007年に、世界の子供たちを支援する国際協力NGO「ワールド・ビジョン・ジャパン」の親善大使に就任。さまざまな国を訪れて活動していく中で、国際協力に関して勉強したいという思いが芽生え、2019年に東洋英和女学院大学大学院に入学した。
国際協力についての知識ももちろんだが、大学院での一番大きな学びは「俯瞰的な視点」だと酒井は語る。
「主観を入れず理論的に論文を書かないといけないので、ひたすら客観的な視点で理論的に考えることを6年間続け、その視点が身につきました。国際協力の分野を学ぶために大学院に入りましたが、そんな副産物もあり、今後の人生にもつながる経験になりました」
俯瞰的な視点は演技にも大いに役立っているようで、「役者は主観的に自分の役を見がちですが、大学院で俯瞰的な視点が鍛えられたことで、台本の読み方が大きく変わり、台本全体が見えるようになりました」と変化を説明。『ハリー・ポッターと呪いの子』でもその視点を大事にしているという。
○不二家の社外取締役としても“俯瞰的視点”を大事に
2020年に不二家のペコちゃん70周年アンバサダーを務めたことがきっかけで、2021年に同社の社外取締役に就任した酒井。
社外取締役としても俯瞰的な視点が大事だと言い、「内部の人たちの決定事項などが本当に大丈夫だろうかと、少し監督的な視点で、将来どうなっていくのか考えて見ていくので、大学院での学びがそこにも生きています」と語る。
今後の展望を尋ねると、「応用演劇」の研究への意欲を明かした。
「応用演劇は私たちがやっているような商業的な演劇ではなく、社会課題を解決するための演劇ツールです。日本ではまだ広まっていませんが、演劇をやっている人たちは興味のある分野だと思うので、そういった分野があるということを広めていきたいと思っています」
大学院でも「海外、特にイギリスの劇場がやっている応用演劇の研究がしたい」と考えていたものの、コロナ禍で渡航ができなくなり、日本の応用演劇にテーマを変更せざるを得なかったという。
「この先、50代後半か60代かわかりませんが、どこかのタイミングで世界の応用演劇についても研究できたら」と語っていた。
■酒井美紀
1978年2月21日生まれ、静岡県出身。1993年に歌手デビュー。1995年公開の映画『Love Letter』で女優デビューし、日本アカデミー賞新人賞を受賞。1996年にフジテレビ系ドラマ『白線流し』で主演を務め、注目を集める。以降、数々のドラマや映画、舞台に出演。また、レギュラーラジオやナレーション、コラム連載、不二家の社外取締役など幅広い分野で活躍している。
■『ハリー・ポッターと呪いの子』
『ハリー・ポッター』シリーズの作者であるJ.K.ローリングが、ジョン・ティファニー、ジャック・ソーンと共に舞台のために書き下ろした『ハリー・ポッター』シリーズ8作目の物語。小説の最終巻から19年後、父親になった37歳のハリー・ポッターとその息子・アルバスの関係を軸に描かれる新たな冒険物語は、世界中で多くの演劇賞を獲得している。2022年7月8日に開幕し、今年ロングラン公演4年目に突入する。
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