米Appleは2025年6月10日(現地時間)、年次開発者カンファレンス「WWDC25」において、Apple Watch向けの次期OS「watchOS 26」を発表した。開発者向けベータ版は同日より提供が始まり、パブリックベータ版は7月に、正式版は今秋の提供を予定している。


順当にいけば、次期watchOSのバージョンナンバーは、「12」となるはずであったが、今般、全OSでの命名ルールの変更があり、バージョンではなく西暦準拠(下二桁)にすることになり、「watchOS 26」の名称となった。

他OSでも採用される「Liquid Glass」を用いた新しいデザインによって、スマートスタック、コントロールセンター、「写真」文字盤、アプリ内のナビゲーションとコントロールなどの機能は、より表現力豊かになる。
○Liquid Glassによる新デザインの採用

Liquid Glassによる新デザインは、すべてのアプリでリアルタイムのレンダリングによってコンテンツを反射および屈折させ、鮮やかで表現力豊かな体験を提供する。スマートスタックのウィジェット、スマートスタックのヒント、通知、コントロールセンター、アプリ内のコントロールやナビゲーションには、新しいデザインが採用され、「写真」文字盤はLiquid Glassで作られた数字によって改良され、ユーザーはこれまで以上に写真が見えるようになる。
○「ワークアウト」アプリに「Workout Buddy」というサポート機能が新搭載

「ワークアウト」アプリでは、「Workout Buddy」というApple Intelligenceを利用したサポート機能が搭載される。ユーザーのワークアウトのデータとフィットネス履歴を取り込み、心拍数、ペース、距離、アクティビティリング、個人のフィットネスマイルストーンなどのデータに基づき、モチベーションを高めるためのパーソナライズされたアドバイスをセッション中に生成する。例えば、ユーザーがランニングを開始する際、励ましの言葉を送ったり、その週のこれまでの走行距離を伝えたり、アクティビティリングの目標に対する進捗を共有したりといったことを行なってくれる。

Workout BuddyはApple Intelligenceを用いてプライバシーとセキュリティを保護しながらデータを分析を行い、その後、新しいテキスト読み上げモデルが、Fitness+トレーナーの音声データを使って構築された生成音声にアドバイスを変換する仕組みになっている。

これらの機能は、Bluetoothヘッドホン/イヤホンを接続したApple Watchで利用でき、Apple Intelligence対応のiPhoneが近くにあることが必須となる。屋外および屋内のランニング、屋外および屋内のウォーキング、屋外のサイクリング、高強度インターバルトレーニング、機能的および従来型筋力トレーニングなど、人気の高いワークアウトの種類の一部において、まずは英語で利用できるようになる。

「ワークアウト」アプリでは、アプリの隅にある4つの新しいボタンが用意され、ワークアウト表示、カスタムワークアウト、ペーサー、レースコースなどのお気に入りの機能に、さらに簡単にアクセスし、ワークアウトをカスタマイズできるようになる。
○スマートスタックは予測アルゴリズムが向上

スマートスタックの機能強化も図られ、よりコンテクストを認識したデータ、センサーデータ、ユーザーの日課から得たデータを組み合わせることによってスマートスタックの予測アルゴリズムが向上している。
こちらも、Liquid Glassで作られたヒントが表示されるようになる。

○「メッセージ」アプリのライブ翻訳対応

「メッセージ」アプリでは、Apple Intelligenceを使ったライブ翻訳に対応し、受信したテキストを手首の上で自動的にユーザーの希望する言語に翻訳できるようになる(日本語にも対応)。返信時、ユーザーのテキストは会話の相手に合わせてすぐに翻訳される。ライブ翻訳は、Apple Intelligence対応のiPhoneとペアリングしたApple Watch Series 9、Apple Watch Series 10、Apple Watch Ultra 2で利用可能。

さらに、デバイスの言語が英語に設定されているユーザーの場合、Apple Watchは、メッセージで会話のコンテクストを使用して、関連性の高いアクションを提案してくれる(例えば、家に着いたら教えてほしいと友人に頼まれた場合に到着確認を開始することを提案するなど)。iPhoneに設定されたカスタマイズ可能な背景がApple Watchにも表示され、会話がよりパーソナルで個別のものに感じられるようになり、ユーザーは手首の上でメッセージに回答できる。デバイスの言語が英語に設定されているユーザーの場合は、スマートリプライが改良されたデバイス上の言語モデルによってこれまで以上に正確になり、会話の内容に基づいて関連性のある返信を生成できる。
○手首フリックジェスチャで通知管理がしやすく

Apple Watch Series 9、Apple Watch Series 10、Apple Watch Ultra 2では、手首フリックジェスチャによって、通知がさらに管理しやすくなる。通知を確認するために手首を上げたけれど反応する準備ができていない場合、ユーザーはすばやく手首を返して戻すことで通知を非表示にできる。手首フリックジェスチャは、通知の非表示と電話の着信の拒否、タイマーとアラームの消音、文字盤に戻る際に使用可能。この機能には、ユーザーの手首の動きを解析するために、加速度センサー、ジャイロスコープとともに機械学習モデルを利用しているのとことだ。手首フリックがダブルタップジェスチャに加わったことで、ユーザーは片手だけでより多くのことをApple Watchでできるようになり、犬の散歩や料理をしながら、またはコーヒーを持っている時など、もう一方の手が塞がっている場合でもApple Watchを操作可能となる。


また、通知音の音量が、ユーザーの周囲の環境に応じて自動調整されるようになった。通知、タイマー、アラーム、電話の着信、Siriのスピーカーの音量に適用され、周囲に配慮した利用ができるようになる。
○watchOS 26での、その他のアップデート

「メモ」アプリが新搭載となり、ユーザーは手首の上から直接、自分のメモにアクセスできるようになる。メモをピンで固定したり、ロックを解除したり、チェックリストの項目を完了にしたり、Siri、音声入力、キーボードを使って新しいメモを作成することもできる。

「保留アシスト」と「通話スクリーニング」が「電話」アプリに搭載され、iPhoneが近くにある場合に利用できる。ユーザーが担当者を待っている場合は、担当者が電話に出ると「保留アシスト」が認識し、通話に戻るようにユーザーに通知する(日本語にも対応)。「通話スクリーニング」は、知らない電話番号からかかってきた着信の管理をより効率的に行えるようにサポート。着信音が鳴る前に、電話をかけてきた相手の名前と理由を収集することで、ユーザーが電話に出るか、拒否するか、またはさらに詳しい情報を求めるか、より情報にもとづいて判断できるようにしてくれる(日本語にも対応)。

聴覚障害のあるユーザー向けに、一連の新機能を備えた「ライブリスニング」のコントロールが導入される。新機能に含まれるリアルタイムのライブキャプションでは、オーディオを聴きながら、iPhoneが聞き取った内容をペアリングしたApple Watchで見られる(日本語にも対応)。Apple Watchがリモコンの役割を果たし、ペアリングしたiPhone上のライブリスニングのセッションを開始または停止したり、聞き逃したかもしれない部分を捉えるために、セッションを遡ったりといったことも行えるとのこと。

「写真」文字盤は、「写真」アプリのおすすめの写真を元に画像をシャッフルするので、ユーザーは手首を上げたり、ディスプレイをタップしたりする度に、さまざまな画像を見られるようになる。


Apple WatchとiPhoneの「Watch」アプリ内の文字盤ギャラリーが再設計され、文字盤がコレクションごとにグループ分けされた。これにより、ユーザーはより簡単に文字盤を探したり見つけたりできる。
○デベロッパ向けに新しいツールも提供

デベロッパは、デザインやスマートスタックなどに亘り、watchOS 26の新しいAPIを利用でき、新しい「SwiftUI API」を使って、watchOSに新たなデザイン素材を採用できる。「Control Widget API」を利用すると、デベロッパはカスタムコントロールを作成して、コントロールセンター、アクションボタン、スマートスタックのウィジェットに追加でき、「Smart Stack Relevance API」を利用すると、ユーザーが位置情報の組み込みを許可した場合に、関心のある地点などの新たな信号を使用して、他社製のウィジェットをスマートスタックに追加できるようになる。例えば、改良された位置情報のAPIを利用してスキーリゾートにユーザーが到着した際に、スマートスタックがゲレンデに関するウィジェットを表示するといったことが実行できる。また暗電流ノイズ(ダークノイズ)によってカスタムコントロールをコントロールセンターに追加できるようになり、ユーザーはiPhoneを手に取らなくても簡単に、睡眠のためのサウンドスケープをオンにできる。
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