中東情勢はいったんの落ち着きを取り戻し、市場ではやや楽観的なムードも出ています。とはいえ、トランプ関税の行方は不透明なままで、米国だけに依存する投資には慎重な声も聞かれます。
一方で、国内に目を向けると、小型株で構成される市場は年初来の高値を更新するなど、堅調な動きを見せています。
こうした背景をふまえ、トランプ関税の影響を受けにくいとされる国内小型株を主な投資対象としたファンドについて、SBI証券投資情報部のシニア・ファンドアナリスト・川上雅人さんにお話を伺いました。
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トランプ関税で注目! 内需企業が多い国内小型株ファンド
足元の国内株式市場は堅調な値動きとなっており、日経平均株価は6月18日に2月以来の38,800円台まで回復しています。米国ではテック株主導での戻り基調が続き、その動きにつられて日本株も上昇しています。
とはいえ、日経平均株価も東証株価指数(TOPIX)も依然として年初来高値を回復していません(6月18日時点)。一方で、主に小型株で構成されている東証グロース市場指数や東証スタンダード市場指数は年初来高値を更新し、年初来の上昇率が目立っています(図表1)。
グローバル企業が多い大型株に比べ、東証グロース市場は内需企業も多く、トランプ関税による貿易戦争激化の影響を受けにくい銘柄が多いのが特徴といえます。また、東証スタンダード市場は外需の製造業が一定程度上場しているものの、東証プライム市場よりその割合は低いといえます。こうしたことが東証グロース市場指数や東証スタンダード市場指数が2025年に入ってから相対的に堅調となっている1つの要因と考えられます。
そこで今回はトランプ関税の影響を受けにくいといえそうな国内小型株を主に投資対象としているファンドに着目します。国内小型株ファンドはウエルスアドバイザーカテゴリーにおいて国内小型グロース・国内小型バリュー・国内小型ブレンドに分類されているファンドと定義しました。
これらのカテゴリーでNISAで買えるSBI証券取り扱いの1年好成績ファンドの一覧が図表2となります。
1年好成績 国内小型株ファンド10選
10位 スパークス・ジャパン・スモール・キャップ・ファンド(愛称:ライジング・サン)
中長期的に高い利益成長が期待される企業、収益力に対して株価が割安に放置され、かつ経営体質の改善等変化の兆しが認められると判断した企業、また、これらの企業の成長、変化を支える優秀な経営陣、技術等を有している企業に着目して投資を行うファンドです。
組入上位銘柄はMARUWA、良品計画、ぺプチドリーム、センコーグループホールディングス、東京建物などとなっており、組入銘柄数は43銘柄です(※)。プライム市場の構成比が86%、グロース市場が10%、スタンダード市場が1%となっています。
9位 アクティブ元年・日本株ファンド
企業規模にとらわれることなく企業価値の向上や市場評価の見直しが期待される銘柄を選別して投資しているファンドです。組入上位銘柄はマツオカコーポレーション、MARUWA、BUYSELL TECHNOLOGIES、AI ロボティクス、都築電気などとなっており、組入銘柄数は146銘柄です(※)。プライム市場の構成比が58%、グロース市場が17%、スタンダード市場が20%となっています。
小型株が相対的に苦戦した3年・5年のリターンでもTOPIXインデックスファンドを上回る実績は特筆され、10ファンド中では最もバランス良くリターンを上げているファンドといえます。そのため、カテゴリー(国内小型グロース)内での運用効率の相対評価を示すファンドレーティングは5ツ星となっています。
5位~8位 エンジェルジャパン調査による「革新企業」ファンド群
5位のSBI日本小型成長株選抜ファンド(愛称:センバツ)、6位のSBI小型成長株ファンド ジェイクール(愛称:jcool)、7位の小型株ファンド(愛称:グローイング・アップ)、8位の日興 グローイング・ベンチャーファンドの4ファンドは、エンジェルジャパン・アセットマネジメントによる企業調査力を活かして有望企業を厳選している同じコンセプトのファンドです。そのため4ファンドの運用実績は類似しています。
5位のファンドの組入上位銘柄は、ライズ・コンサルティング・グループ、ボードルア、守谷輸送機工業、グローバルセキュリティエキスパート、ワンキャリアなどとなっており、組入銘柄数は50銘柄です(※)。
4位 ミュータント
旧来の常識を打ち破り爆発的な変貌を遂げる「ミュータント・カンパニー」となり得る企業を厳選し投資しているファンドです。組入上位銘柄は、三菱UFJフィナンシャル・グループ、ソニーグループ、日立製作所、日本電気、三井住友フィナンシャルグループなどとなっており、組入銘柄数は45銘柄です(※)。
プライム市場の構成比が97%、グロース市場の組入れはなく、スタンダード市場が0.3%となっています。国内小型グロースのカテゴリーとなっていますが、直近では大型株中心に運用しているファンドといえます。
3位 野村リアルグロース・オープン
個別企業の調査・分析等により中長期的に高い成長が期待できる企業の株式を選別して投資しているファンドです。組入上位銘柄は、QPS研究所、ライフネット生命、フィットイージー、小池酸素工業、くすりの窓口などとなっており、組入銘柄数は83銘柄です(※)。プライム市場の構成比が43%、グロース市場が28%、スタンダード市場が28%となっており、グロース市場、スタンダード市場の割合が高いのが特徴といえます。
国内小型株ファンドの中では値動きの振れ幅を示す標準偏差が相対的に小さくなっており、1年では高い運用効率を実現しています。
2位 インベスコ 店頭・成長株オープン
中小型株式を中心とする成長性溢れるわが国の株式などに投資しているファンドです。組入上位銘柄はサイバーエージェント、エムアップホールディングス、大栄環境、太陽ホールディングス、シンプレックス・ホールディングスなどとなっており、組入銘柄数は67銘柄です(※)。
大型株が優位だったため3年や5年リターンではTOPIXインデックスファンドには劣後していますが、図表2の国内小型株ファンドの中ではバランス良く好成績を上げているファンドといえます。
1位 中小型株式オープン(愛称:投資満々)
今後の成長が期待できる企業が数多く存在するわが国の中小型株式を中心に投資することにより、高い投資成果の獲得を目指すファンドです。組入上位銘柄は、SHIFT、エフピコ、東宝、ぺプチドリーム、パーク24などとなっており、組入銘柄数は86銘柄です(※)。プライム市場の構成比が84%、グロース市場が7%、スタンダード市場が4%となっています。1年ではTOPIXインデックスファンドを約13%も上回る実績となっています。
分散投資ツールとしての国内小型株アクティブファンド
トランプ関税の行方とその影響度が分からない不透明な環境下では、運用担当者が今後の見通しなどを踏まえて銘柄を選定するというアクティブファンドの優劣がはっきりと表れてくるのではないかと思われます。
特に玉石混交の国内小型株市場ではその傾向が顕著となりそうです。こうしたことから、国内小型株のカテゴリーにおいては好成績のアクティブファンドがTOPIXなどのインデックスファンドに対して優位性を維持することが期待され、図表2のファンド群は有望な分散投資ツールとして注目すべきと考えます。
(※)組入銘柄の情報については5月末基準。個別銘柄の取引を推奨するものではありません。
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『投資情報メディア』より、記事内容を一部変更して転載。
川上雅人 かわかみまさと SBI証券 投資情報部 シニア・ファンドアナリスト(公益社団法人日本証券アナリスト協会認定アナリスト) 慶應義塾大学卒業。丸三証券で国内株アナリスト、国内大手運用会社で18年間、商品企画・営業などを担当後、2020年よりauカブコム証券でファンドアナリストとして活動。2022年11月から現職。最新の投資情報を発信する『投資情報メディア』のレポート・コラムなどで投資信託や資産運用(新NISAなど)に関する情報提供を行う。 この著者の記事一覧はこちら