食品など、身の回りのモノの値上げが続いています。モノの値段が継続的に上がっていくインフレ局面においては、「将来のために―」と大切に貯金しておいた資産が、実質、目減りしていくことになります。


こうした時に資産の価値を下げずに備える方法として有効とされているのが、資産を「モノ」で持つことです。注意点も含めて詳しく解説していきます。

○モノの値段が上がるとお金の価値は下がる

あらためて、物価の上昇とお金の価値について簡単に説明します。

たとえば、1本160円(500ml)のペットボトル飲料。1本170円に値上がりすると、これまでと同じ160円では買えません。つまり、モノの値段が上がると、同じ額のお金を持っていても買えるものが減ってしまうため、お金の価値が実質的には目減りしたことになります。

モノの値段が上がっていく傾向、つまり「インフレ」が続くと、日々の家計のやりくりだけではなく、将来に向けても無視できない影響を及ぼします。たとえば、将来、子どもを持つことを考えている、または幼い子どもを育てている人は、教育費をどのように備えようとしているでしょうか。

実は、教育費も長期的に見ると上昇傾向にあるのです。

一例として、国立大学の学費で見てみます。

国立大学の授業料は、2005年度以降、年間53万5,800円が標準額とされています。入学金は28万2,000円です。
さかのぼって、1975年度の授業料は年間3万6,000円、入学金は5万円でした。比較してみると、30年間で大幅に上昇していることがわかります。

国立大学は私立大学に比べて、学費は抑えられているものの、物価の上昇やその他の要因によって値上げされてきた経緯があります。

どのような進路を選ぶにしても、将来、自分の子どもが進学する頃には、より多くの教育費が必要になっている可能性があることがわかります。

○資産運用は物価上昇に強い

モノの値段が上がっていく時代における備えとして効果が高いとされているのが、資産運用です。

インフレの局面では、現金よりモノを資産として持つことが対策になるとされ、一般的に株式や不動産、金などが物価の上昇に強いと言われています。特に株式は、短期的に「物価の上昇=株高」となるわけではないものの、値上げによって企業の売上高や利益の増加が期待でき、中長期的には株価にプラスに働くとされています。

このため、資産運用をしていれば物価の上昇に合わせて恩恵を受けられる可能性があり、将来への備えにつながると考えられます。
○大切なことは「分散」

ただ、資産運用をするうえで忘れてはならないのがリスクです。将来のための大切な資産を守りながら育てるためには、リスクを抑えながら効率よくリターンを得られるような運用を続けていくことが重要になります。

その対策の1つが「分散」です。たとえば、個別の株式や不動産だけに集中して投資することには大きなリスクがあります。
個別の株式は価格の変動が大きく、また不動産は売りたいと思ったときにすぐには売れないなどのリスクがあるでしょう。

特に、運用していた資産を引き出して使う時期が近づくほど、リスクをしっかりと抑えていくことの重要性は増していきます。使いたい時期の直前までリスクの高い運用を続けていると、株価の急落などがあった場合に取り戻すことが難しいからです。

なるべくリスクを抑えながらリターンを得るために、世界中のさまざまな国や企業の株式、債券、金、そして不動産など、異なる特長を持つ複数の種類の資産に分散して運用していきましょう。

物価の上昇を肌身で感じるようになったことで資産運用の必要性を感じるようになったものの、「リスクが怖い…」と考える人もいるでしょう。ただ、預貯金も「買えるものが減ってしまうかもしれない」というリスクがあります。

ここまでお伝えしたように、分散投資などでうまくリスクを抑えながら、将来のための資産形成に取り組んでいきましょう。

牛山 史朗 ウェルスナビ 執行役員 リサーチ&クオンツ 働く世代の誰もが「長期・積立・分散」の資産運用を行えるようにしたいという想いから、2015年12月にウェルスナビに入社。金融工学の専門知識を活用し、自動の資産運用サービス「WealthNavi(ウェルスナビ)」の資産運用の仕組みを開発・リードしてきた。ウェルスナビ入社以前には、三菱UFJ信託銀行で個人向けの資産運用アドバイスなどを担当した後、野村證券にてグローバルな投資戦略の開発を行った。京都大学工学部で人工知能を研究、京都大学大学院情報学研究科で金融工学を専攻。 この著者の記事一覧はこちら
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