テレビアニメ『それいけ!アンパンマン』(日本テレビ系)で「神回」と評される作品を連発し、映画最新作『それいけ!アンパンマン チャポンのヒーロー!』(6月27日公開)の脚本も手掛けた葛原秀治氏にインタビュー。脚本家を目指したきっかけや下積み時代のフリーター生活について話を聞いた。


『それいけ!アンパンマン チャポンのヒーロー!』は、空から落ちてきた不思議な男の子・チャポンとアンパンマンの絆を描く物語。チャポンは、アンパンマンを兄のように慕い、「ヒーローになりたい!」と願うも、ばいきんまんから自身の出生について衝撃の真実を知らされショックを受ける。「なんのために生まれて なにをして生きるのか」。原作者のやなせたかしさんが作詞した「アンパンマンのマーチ」のメッセージと重なる物語となっている。

葛原氏は、高校時代に文化祭の劇の脚本を手掛け、それが大ウケしたことをきっかけに、脚本家を目指すように。映画制作の専門学校を卒業後、約10年間アルバイトをしながら脚本家としての成功を目指した。諦めずに続けてこられたのは「意地」だったと語る。

「何の根拠もないですけど、自分が書いたものが一番面白いとずっと思っていて、このまま終わらせたくないというか、世に出たいなと。ほかにやりたいこともなかったですし、ほかに得意なこともなかったですし」

だが、脚本家になるという目標について「1回だけブレたことはあるんです」と打ち明ける。

「ずっとフリーター生活を続ける中で、身を固めなきゃと思って1回就活したことがありました。バイトしていた遊園地の社員採用を受けたのですが不採用になり、そこから脚本の仕事をいろいろいただけるようになって。あのとき社員に受かっていたら、就職して脚本の仕事はやめていた可能性もあります」

そして、先輩ライターに誘われて、2018年から『アンパンマン』の脚本を手掛けるようになった。


「細かいところで運が悪いんですけど、大きいところで運がいいんです。『アンパンマン』に誘っていただいたのも、たまたま別作品で一緒だった先輩に『書いてみる?』と言われただけで」

「自分が書いたものが一番面白い」と自分の才能を信じてつかんだ脚本家としての道。実際、手掛けた作品は多くの視聴者の心をつかみ、「間違ってなかった」と自信を持つことができたという。

どのようにして脚本力が培われたのか尋ねると、「わからないです。本も読まない、漫画も読まない、映画はそこそこ見ますけど、アニメもこの仕事を始めるまではそんなに見ない。でも、人を笑わせるのは昔から好きでした」と答えた。

葛原氏は毎年、母校の小学校で講演を行っている。そこでは「勉強しろ、挨拶しろ、職業に貴賎なし。この3つを覚えていたら大抵なんとかなる」と子供たちに伝えているそうで、「1人ではアニメは作れませんから。周りの方々の助けがあって初めて自分が参加できるので、挨拶も大事ですよね」と話していた。
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