『アンパンマン』収録は毎週月曜10時に実施「番組が始まった時から」
1988年10月にテレビアニメ『それいけ!アンパンマン』(日本テレビ系)の放送がスタートした当時からアンパンマンの声優を務める戸田恵子。映画シリーズは最新作『それいけ!アンパンマン チャポンのヒーロー!』(6月27日公開)で36作目となる。37年にわたってアンパンマンに命を吹き込んでいる戸田にインタビューし、最新作の魅力を聞いた。『アンパンマン』の収録は、毎週月曜日の朝10時に実施。戸田は「番組が始まった時から変わらない時間帯に毎週みんな会うんです。そこで1週間のことがリセットされて、また1から始まる。月曜日の朝は私たちにとってはそういう時間になっています」と説明する。
収録前には、キャスト陣でいつもラジオ体操をしているという。
「コロナ(新型コロナウイルス感染症)の間はやっていなかったんですけど、老若男女みんなでやっています。強制ではないですけど、ゲストの方も『よかったら、ご参加ください』という感じで(笑)。みんな高齢になってきましたけど、収録ではいきなり『ハ~ヒフ~ヘホ~』とか『アンパンチ』とか声を出さなくてはいけないし、身体をほぐした方が声も出ていいでしょうと。ある時から『やった方がいいんじゃないか』という声が上がっていたんです。みんな自分なりに身体をほぐしている中でラジオ体操の話になり、誰からともなく『じゃあ、やりますか』という流れだったと思います。レギュラー収録のスケジュールはなかなか変えられないので、37年前から同じ曜日と時間でやっています」
映画シリーズ36作目となる本作は、空から落ちてきた不思議な男の子・チャポンとアンパンマンの絆を描く物語。チャポンは、アンパンマンを兄のように慕い、「ヒーローになりたい!」と願うも、ばいきんまんから自身の出生について衝撃の真実を知らされる。
「なんのために生まれて なにをして生きるのか」。原作者のやなせたかしさんが作詞した「アンパンマンのマーチ」のメッセージと重なる物語となっている。
戸田は、「アンパンマンのマーチ」の魅力について、「『なんのために生まれて、なにをして生きるのか』。一度は自分に問いかけるテーマであり、そう簡単に答えは見つからないこのテーマが幼児向けのアニメーションの冒頭に流れたときに、本当にすごいなと思いました。『アンパンマンのマーチ』を歌っている子供たちを見たときに、理解できなくても、頭でわからなくても、いつか大人になった時に何か自分の中で感じるものがあるんじゃないかと思うんです」とコメント。
東日本大震災の時にこの曲の持つ力を改めて感じたそうで、「この歌が被災地で応援歌として流れていると聞いて、私が被災地に行った時に衝撃だったのは、ボランティアに来ている方々がこの歌に励まされたという話を聞きました」とエピソードを披露し、「大人にも刺さる歌だし、お子さんはいつかこの歌詞を理解してくれる。お子さんが意味もわからずに歌っている姿を見ると本当にいつも感動します」と語る。
また、本作について「毎年映画はゲストキャラが成長していくようなストーリーになっているのですが、今回もチャポンが成長していくストーリーになっています。チャポンはアンパンマンにとても憧れていて、アンパンマンのようなヒーローになりたいという思いが強く、そういう親しみを込めてヒーロー像を描くところが見所になっています」と紹介する。
アンパンマンを演じる際には“優しい気持ち”を常に持つように
そして戸田は、この作品に限らず、アンパンマンを演じる際には「優しい気持ちを常に持って接すること」を意識しているという。「どのキャラクターに対しても、いつも寄り添う気持ちを大事に。そう思ってやらなきゃと常に意識しているわけではなく、映像の中にそれが組み込まれているので、描かれている通りにやっていれば自然とそうなるようになっています」
本作ではより一層優しさを持つようにしたそうで、「自分のことを兄のように慕ってくれるチャポンに対して、より愛情を込めて接するようにしました」とアフレコを振り返る。
そして、日常が描かれることも本作の魅力だと語る。
「パン工場の中でチャポンと一緒に過ごす時間も描かれていて、チャポンがチーズと一緒にお風呂に入ったり、お風呂上がりにアンパンマンがチャポンの髪を拭いてあげたり、寝る前に読み聞かせをしてあげたり、そういうごく普通の日常が描かれているというのがとても珍しいと思います」
さらに、「見ているお子さんたちも、自分と同じようにチャポンもアンパンマンと一緒に生活しているんだなと感じてもらえると思いますし、あまり描かれることのない日々の暮らしを楽しんでいただけたらと思います」と語っていた。
■戸田恵子
1957年9月12日生まれ、愛知県出身。小学5年生の時からNHK名古屋放送児童劇団に在籍し、1969年にドラマ『中学生群像』で子役デビュー。1974年にはあゆ朱美の芸名でアイドル演歌歌手デビュー。1977年に劇団・薔薇座に入団し、看板女優として活躍。1979年にアニメ『機動戦士ガンダム』のマチルダ・アジャン役で声優活動をスタートさせ、アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』(三作目)鬼太郎役、『きかんしゃトーマス』トーマス役、『それいけ!アンパンマン』アンパンマン役などを担当。女優としても活躍し、ドラマ『総理と呼ばないで』、『ショムニ』シリーズ、『ちゅらさん』、映画『ラヂオの時間』などに出演。
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