トランプ関税の影響はややマイルドになるのでは、という見方がある一方で、6月の米国CPI(消費者物価)に少しずつ影響の気配も見えてきています。そして日米関税交渉の期限が迫るなか国内では参議院選挙の真っ最中と、先行きが読めず、悩んでいる方もいるかもしれません。


そんな中、今回は、SBI証券投資情報部のシニア・ファンドアナリスト・川上雅人さんに2025年の上半期を振り返っていただきました。上半期の動向をふまえて、川上さんは、米国株式ファンドを中心に運用している方には、リスクを抑えたファンドへの分散投資を提案されています。

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波乱の上半期 S&P500・日経平均が年初来高値を更新

2025年の上半期(1月~6月)が終了しました。2025年上半期の株式市場においては、3月下旬から4月上旬にかけて米国の関税政策に対する不透明感などから大幅下落となりましたが、その後は米関税政策に対する悲観論の後退や米利下げ観測の高まりなどから回復基調を強めて、6月下旬には日米の株価指数(日経平均とS&P500)は年初来高値(S&P500は過去最高値)を更新しました(図表1)。

為替市場の動きとユーロ投資の有効性

為替市場では、米国経済の不透明感や利下げ観測の高まりなどから円高ドル安が進行しました。一方で、ユーロに対してはわずかに円安となったため、投資信託の基準価額の計算に使われる米ドルTTMとユーロTTMのパフォーマンス格差が10%以上となり、ユーロへの分散投資が有効な半年となりました(図表2)。

リスクを抑えた運用を考えるタイミング

足元では株式市場の上昇によって、海外株式ファンドを中心に運用している方は比較的良好な局面といえますが、2025年上半期は国内外の株式の急落や円高ドル安の進行などを経験し、リスクを抑えた運用を検討したいという方もいらっしゃるのでないかと思われます。そこで今回ご提案したいのが、米国株式ファンドを中心に運用している方に特に有効と考えられる、リスクを抑えたファンドへの分散投資です。
リスクメジャーを活用したファンド選びのポイント

リスクを抑えたファンドを探す場合には、値動きの振れ幅を示す標準偏差(リターンのブレ幅を表す数字。大きいほど値動きが激しく、小さいほど安定している)に着目します。標準偏差はリスクと呼ぶときもあります。標準偏差(=リスク)の値が小さいほど、値動きが相対的に小さいファンドといえます。


ファンドの標準偏差の大きさについては、リスクの大きさを数値で示す指標である、リスクメジャーで知ることもできます。リスクメジャーは標準偏差をもとに、全ファンドの中でのリスク水準を5段階で示した指標です。低い(1)から高い(5)まで5段階あります。 SBI証券において、リスクを抑えた好成績ファンドを探す場合は、「ファンド検索」で「条件変更」をクリックして、リスクメジャーで低い(1)またはやや低い(2)に分類されるファンドに絞った上で、3年リターンなどを参考にして、ある程度リターンが期待できるファンドを探すのが有効と考えます。

こうした条件でスクリーニングした、SBI証券取り扱いのNISAで買えるリスクを抑えた3年好成績ファンドの一覧が図表3となります。

リスクを抑えた3年好成績ファンド10選
○10位 iFree 新興国債券インデックス

新興国通貨建て債券に投資し、投資成果をJPモルガン ガバメント・ボンド・インデックス−エマージング・マーケッツ グローバル ダイバーシファイド(円換算)の動きに連動させることをめざして運用を行っています。通貨別の構成比では、インド・ルピー10.0%、インドネシア・ルピア10.0%、マレーシア・リンギット10.0%、メキシコ・ペソ9.9%、中国人民元9.9%などとなっています(※)。債券ファンドの中では高いリターンを獲得しつつ、リスクが抑えられたファンドといえます。
○9位 欧州ハイ・イールド債券オープン(1年決算型)ユーロコース

ユーロ建て高利回り社債(ハイ・イールド債券)等に投資しており、実質的な運用は世界有数の資産運用会社であるDWSグループが行っています。債券に投資していることに加えて、図表2にあるように通貨ユーロが堅調であったことも標準偏差が抑えられた要因といえます。

○8位 日本連続増配成長株オープン

日本の連続増配銘柄に投資をしており、成長性、バリュエーション、今後の連続増配の持続可能性等を勘案して銘柄を選定しているファンドです。組入上位銘柄は東京海上ホールディングス、積水ハウス、ソニーグループ、T&Dホールディングス、富士通などとなっており、組入銘柄数は53銘柄です(※)。

○7位 日本株&Jリート 好配当フォーカスファンド(愛称:インカムフォーカス)

株式及び不動産投資信託証券(Jリート)に投資、各資産への投資割合は50%ずつを中心とし、各資産の期待リターンやリスク、市場環境等によって、それぞれ30%~70%の範囲で決定しています。株式とリートは値動きが異なることと、外貨建て資産に投資していないことが標準偏差が抑えられた要因になっているといえます。国内株式は好配当株式を投資対象としていることとJリートは相対的に高い利回りが期待できることから、予想配当利回りは4.03%(※)となっています。
○6位 ピクテ・ゴールデン・リスクプレミアム・ファンド(愛称:ポラリス)

日本を含む世界の様々な資産クラス(株式、債券、金、リート等)に投資し、世界の市場環境に応じて魅力的なリスクプレミアムが期待できる資産を選定し、配分比率の決定を行うファンドです。基本資産配分の見直しは原則として月次で行い、資産別の構成比率は、株式30.0%、債券34.3%、金29.7%などとなっており(※)、金の構成比が高いファンドとなっています。
○5位 ハッピーエイジング30(ハッピーエイジング・ファンド)

基準資産配分比率が株式70%、債券30%のバランスファンドです。ファンドの構成比率は国内株式(大型割安株と小型株)44%、外国株式21%、新興国株式5%、外国債券20%、国内債券8%(※)などとなっています。リスクを抑えて高いリターンを上げているバランスファンドといえ、つみたて投資枠でも購入可能なファンドです。
○4位 みのりの投信

世界の環境変化をもとに、「剛・柔・善」企業=種を世界中から選定するというコンセプトで運用しているファンドで、比較的現金等の比率を高めにしてリスクを抑えた運用が特徴です。組入上位銘柄は、ノジマ、スルガ銀行、IDOM、フジシールインターナショナル、ソラストなどとなっており、組入銘柄数は34銘柄です(※)。
○3位 好配当ジャパン・オープン(愛称:株式時代)

予想配当利回りが市場平均を上回る銘柄を対象としたファンドです。組入上位銘柄は日本電信電話、三井住友トラストグループ、NIPPON EXPRESSホールディングス、三井化学、AGCなどとなっており、組入銘柄数は95銘柄、予想配当利回りは3.99%です(※)。

○2位 三井住友・配当フォーカスオープン

配当に着目し、中長期的な株価の上昇と配当収入による成長を目指すファンドです。組入上位銘柄はみずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、兼松、オカムラなどとなっており、組入銘柄数は95銘柄、予想配当利回りは4.1%です(※)。
○1位 SMT 日本株配当貴族インデックス・オープン

TOPIXの構成銘柄のうち、10年以上にわたり毎年増配しているか、又は安定した配当を維持している銘柄を対象としているS&P/JPX配当貴族指数(配当込み)に連動する投資成果を目指すファンドです。組入上位銘柄は安藤・間、丸井グループ、長谷工コーポレーション、センコーグループホールディングス、日本曹達などとなっており、組入銘柄数は50銘柄、予想配当利回りは4.04%です(※)。S&P500インデックスファンドと比べてリスクが半分程度に抑えられて、高いリターンを上げているファンドといえ、ファンドの運用効率を示すシャープレシオ(3年:2.49)は成長投資枠対象ファンドでトップの実績です。7月1日よりつみたて投資枠でも投資が可能となりました。ファンドの詳細については、特集ページ(※文末に記載)もご参照ください。

上記の10ファンドの分類は国内株式のファンドが5本、バランスファンドが3本、国際債券ファンドが2本となりました。それぞれ米国株式ファンドや全世界株式ファンドとは異なる値動きが期待できるファンドといえ、リスクを抑えた分散投資の候補として有望と思われます。

ある程度まとまった資金で運用している方は、足元のような日米の株価指数が高値を更新している好環境な時こそ、保有しているファンドとは異なる値動きが期待できるファンドへ分散投資を行うなど、リスクを抑えた運用を検討すべきタイミングと考えます。

(※)組入銘柄の情報については5月末基準。個別銘柄の取引を推奨するものではありません
(※)1位のSMT 日本株配当貴族インデックス・オープンの特集ページはこちら

掲載されたファンドの情報はこちら

『投資情報メディア』より、記事内容を一部変更して転載。


川上雅人 かわかみまさと SBI証券 投資情報部 シニア・ファンドアナリスト(公益社団法人日本証券アナリスト協会認定アナリスト) 慶應義塾大学卒業。丸三証券で国内株アナリスト、国内大手運用会社で18年間、商品企画・営業などを担当後、2020年よりauカブコム証券でファンドアナリストとして活動。2022年11月から現職。最新の投資情報を発信する『投資情報メディア』のレポート・コラムなどで投資信託や資産運用(新NISAなど)に関する情報提供を行う。 この著者の記事一覧はこちら
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