2025年上半期は、米ドル安・円高の進行やトランプ関税を巡る不透明感などで、オルカン(全世界株式)やS&P500ファンドの成績が伸び悩んだ期間でした。一方で、米ドル資産以外を主な投資対象とするファンドや、テーマ性の強いファンドの中で、しっかりと好成績を残したファンドもありました。
以前の記事に引き続き、SBI証券投資情報部のシニア・ファンドアナリスト・川上雅人さんに2025年の上半期を振り返っていただきつつ、6ヵ月好成績ファンドを紹介していただきます。
* * *
新NISA 2年目 半年間のマーケットは?
新NISA2年目の半年が経過しました。2025年上半期となる半年間のマーケットを振り返ると、日米の株式市場においては、3月から4月にかけて米国の関税政策に対する不透明感などから大幅下落となりましたが、その後は回復基調を強めたため、6ヵ月間での主要株価指数(日経平均株価、S&P500)は小幅上昇となりました。
米ドル建て資産が重しに? オルカン・S&P500の停滞理由
為替市場においては、米国経済の不透明感や利下げ観測の高まりなどから円高ドル安が進みました。投資信託における基準価額の計算に使われるドル円TTMレート(為替レートの基準値、投資信託の価格を出すときなどに使われる)で見ると、2024年12月末の158円18銭から2025年6月末は144円81銭となり、半年間で13円37銭下落し、8.45%の下落率となりました。
一方で、ユーロ円TTMについては、ドル円とは動きが異なり上昇しました(図表1)。こうしたことから、米ドル建て資産の構成比が高いファンドほどパフォーマンスが相対的に伸び悩んだ6ヵ月間となりました。
具体的にNISAで人気のファンドの6ヵ月リターンを見ると、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)(以下、オルカン)は▲0.67%、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)(以下、S&P500)は▲4.84%となりました。オルカンは75.5%が米ドル建て資産、S&P500は100%が米ドル建て資産になります(2025年4月25日時点)。
米ドル建て資産が100%となっているS&P500に投資している方は、株式市場が回復した5月以降でもファンドの評価額が伸び悩んでいると感じられた方も多かったのではないかと思われます。
オルカン・S&P500が苦戦した上半期でも好成績だったファンドは?
今回はオルカンやS&P500が苦戦した半年間において、好成績となったファンドをチェックします。SBI証券取り扱いのNISAで買える6ヵ月好成績ファンドは図表2となりました。
なお、新NISA1年目(2024年)のリターンランキングのコラムは記事末尾のリンクよりご参照ください。上位ファンドの大半が米国株式ファンドとなっていた2024年でしたが、2025年はがらっと変わりました。
2025年上半期、好成績ファンド10選
10位 イタリア株式ファンド
主としてイタリアの金融商品取引所に上場している企業または同国において主な事業を展開する企業の株式等に投資しているファンドです。組入上位銘柄は大手電力会社のエネル、大手商業銀行のビーぺルバンカ、天然ガス輸送および貯蔵施設の運営を行うスナム、投資銀行のメディオバンカ、イタリア最大規模の金融機関のインテーザ・サンパオロなどとなっており、組入銘柄数は13銘柄です(※)。イタリアの株価指数は3年間上昇基調となっており、通貨ユーロが相対的に堅調なことから1年、3年でもS&P500を上回るパフォーマンスとなっています。
9位 グローバル・フィンテック株式ファンド(為替ヘッジあり・年2回決算型)
今後の成長が期待されるフィンテック関連企業の株式などに投資しているファンドです。組入上位銘柄は、金融サービスプラットフォームを手がけるフィンテック証券アプリ企業である米国のロビンフッド・マーケッツ、カナダを拠点にクラウドベースのeコマースプラットフォームを提供するショッピファイ、暗号資産取引プラットフォームを運営する金融インフラ技術プロバイダーの米国のコインベース・グロ―バル、パランティア・テクノロジーズなどとなっており、組入銘柄数は41銘柄です(※)。上昇しているビットコイン価格との連動性が高いのが特徴で、標準偏差(ファンドの値動きの大きさを示す指標。大きいほどリターンのブレが大きい)がかなり大きいファンドです。1年・3年でも好成績のファンドとなりますが、為替ヘッジと分配金が不要であれば、グローバル・フィンテック株式ファンドが選択肢となります。
8位 SBI日本小型成長株選抜ファンド(愛称:センバツ)
エンジェルジャパン・アセットマネジメントによる企業調査力を活かして有望企業を厳選しているファンドです。組入上位銘柄は、ライズ・コンサルティング・グループ、ボードルア、守谷輸送機工業、グローバルセキュリティエキスパート、ワンキャリアなどとなっており、組入銘柄数は50銘柄です(※)。
7位 ダイワ・ブラジル株式ファンド
中長期的にブラジルの株価指数であるボベスパ指数(円換算)を上回る投資成果を目指すファンドです。1年・3年では苦戦していましたが、2025年に入ってから良好な経済環境や底堅く推移する資源価格などが要因でブラジル株式や通貨レアルが上昇し、パフォーマンスが回復しています。
6位 SMT ゴールドインデックス・オープン(為替ヘッジあり)
金現物に投資する上場投資信託証券に投資し、LBMA金価格(円ヘッジベース)に連動する投資成果を目指すファンド、いわゆる金(ゴールド)ファンドです。円高ドル安局面となった6ヵ月や1年では為替ヘッジありが優位でしたが、為替ヘッジが不要と考えるならSMT ゴールドインデックス・オープン(為替ヘッジなし)が選択肢となります。
5位 インデックスファンドDAX(ドイツ株式)
円換算のドイツ株価指数(DAX)の動きに連動する投資成果を目指すファンドです。組入上位銘柄は欧州最大のソフトウェア開発会社のSAP、電気メーカーのシーメンス、世界有数の金融グループであるアリアンツ、ドイツテレコム、航空宇宙企業のエアバスなどとなっており、組入銘柄数は40銘柄です(※)。ドイツ株式は通貨ユーロの上昇もあって1年・3年でもS&P500を上回るパフォーマンスとなっています。
4位 厳選ジャパン
優れた経営者の質・ビジョン、新しいビジネスモデル等により企業価値の増大が期待できる企業の中から、20銘柄程度に厳選して投資しているファンドです。組入上位銘柄はIHI、ソニーグループ、日本アビオニクス、日本電気、楽天銀行などとなっており、組入銘柄数は21銘柄です(※)。
3位 東京海上・宇宙関連株式ファンド(為替ヘッジあり)
高い技術力や競争力等を持つ宇宙関連企業の株式等に投資しています。組入上位銘柄は、ビッグデータ解析のソフトウェアプラットフォームを提供する米国のパランティア・テクノロジーズ、米国の公共安全テクノロジー企業のアクソン・エンタープライズ、エヌビディア、フランスの防衛メーカーのタレス、光通信と産業用レーザー製品が主力の米国企業であるルメンタム・ホールディングスなどとなっており、組入銘柄数は63銘柄です(※)。1年・3年でも好成績のファンドですが、為替ヘッジなしのSBIセレクトのファンドである東京海上・宇宙関連株式ファンド(為替ヘッジなし)の方が3年リターンでは好成績となっています。
2位 ブラックロック・ゴールド・ファンド
南アフリカ・オーストラリア・カナダ・アメリカ等の金鉱企業の株式に投資を行うファンドです。金鉱株の株価と金価格は長期では同じ方向に動く傾向が見られ、金価格の上昇を受けて1年、3年でも好成績となっていますが、値動きの振れ幅を示す標準偏差(3年)が大きいのが特徴といえます。
1位 中欧株式ファンド
6ヵ月リターン1位の中欧株式ファンドは、ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキアを中心に、それらの周辺諸国の株式等に投資しているファンドです。投資国比率は、ポーランド75.2%、ハンガリー10.9%、チェコ4.7%となっています(※)。安定した経済成長などを背景に投資している3ヵ国の株価指数は好パフォーマンスとなっていることから、1年・3年でも好成績のファンドです。
上記ファンド10本はすべてNISA成長投資枠でしか投資できないファンドとなっています。
また、ファンドの投資対象は様々で、①ドル安の代替資産としての欧州株式ファンドや新興国株式ファンド、②金または金関連株式のファンド、③成長が期待されるテーマ型の株式ファンド(宇宙とフィンテック)、④厳選投資の国内株式ファンド、の4つに分類できると考えます。
オルカンやS&P500の保有者は、値動きの異なるこれらの6ヵ月好成績ファンドを成長投資枠を使って組み合わせて保有することによって、収益の分散化を図るのも有効と考えます。
(※)組入銘柄の情報については5月末基準。個別銘柄の取引を推奨するものではありません。
掲載されたファンドの情報はこちら
『投資情報メディア』より、記事内容を一部変更して転載。
川上雅人 かわかみまさと SBI証券 投資情報部 シニア・ファンドアナリスト(公益社団法人日本証券アナリスト協会認定アナリスト) 慶應義塾大学卒業。
丸三証券で国内株アナリスト、国内大手運用会社で18年間、商品企画・営業などを担当後、2020年よりauカブコム証券でファンドアナリストとして活動。2022年11月から現職。最新の投資情報を発信する『投資情報メディア』のレポート・コラムなどで投資信託や資産運用(新NISAなど)に関する情報提供を行う。 この著者の記事一覧はこちら
編集部おすすめ