ここ数年、日本列島を襲う猛暑は「異常」の域を超え、すでに「日常」と化している感がある。特に高齢者にとっては、わずかな外出すら体調を脅かすリスクとなり、熱中症による救急搬送も後を絶たない。
それでも、日々の買い物や通院などの生活に必要な外出は避けられないという現実の中で、私たちは「無理をしないための選択肢」をもっと増やす必要がある。そんな中、Uber EatsやUber Taxiの配車サービスがそうした「選択肢」の一つとなりうる可能性を秘めている。
Uberは高齢者の命と暮らしを守る新たなインフラになりうるのか。Uberの利用経験がある65歳以上のマイナビニュース会員にアンケートを実施し、リアルな声を聞いてみた。
高齢者のUber Eatsの利用実態
今回アンケートを実施するにあたり、関東圏と関東圏以外に区別して利用の実態に迫った。
【関東圏】
まずは関東圏に住む65歳以上のUber Eats利用経験者に、サービスを利用した際の感想について聞いてみたところ、
「初めての利用は中華でしたが味も良く、しかも店までいかなくいいので便利だと思った」(東京都/69歳女性)
「思っていたより時間が正確で注文品もきれいに届いた」(東京都/66歳男性)
「利用し始めの頃は本当に来るのか、温かいうちに来るのか心配したが、満足できる対応だった」(群馬県/68歳男性)
などのような好意的な回答が大半だった。中には
「今の居住地域に転居してからUberの配達員を街中で見かけることがなく、『頼めるのかな』と心配していたが、飲食店がある場所から自転車で最低でも30分以上はかかる場所から、体調が優れないときに飲食物を頼んだ経験があります。それでも、時間指定通りに配達していただいたときは感激しましたし、少ない手数料で申し訳ないとも思いました。コンビニの配達もやっておらず、日々の買い出しには車が必要なこの地域までへの配達に感謝しかありません。笑顔での対応に救われて急場をしのげましたし、あのときに命を助けていただいたように思い、感謝しかありません」(千葉県/70歳女性)
といったように、過疎エリアまでへのデリバリーに対して感謝をするコメントもあった。一方で「上手に運べずに料理がぐちゃぐちゃになっていた」「配達までに時間がかかりすぎ」などの意見もわずかながら見られた。
【関東圏以外】
続いて、関東圏以外の地域に住む65歳以上のUber Eats利用経験者に、サービスを利用した際の感想について聞いてみたところ、
「初めて利用したときに思っていたよりも簡単に注文できて、手軽にデリバリーが利用できる便利さに感動しました」(長崎県/71歳女性)
「多少の割高感はあるものの、便利なシステムだと思った」(静岡県/75歳男性)
「レストランの料理などさまざまな業種があるのでとても便利に感じます」(愛知県/74歳男性)
などのように利便性を評価する声が多かった。
「体調の悪いときに利用し助けていただきました。おいしかったので、また病気になるときを待っています」(滋賀県/78歳女性)
「体調不良のため外出できないときUber Eatsを頼み、大変便利さを感じた」(福岡県/66歳男性)
といったように、体調不良時にUber Eatsを利用する機会があると話すユーザーが関東圏の利用者に比べて多かった。
特に一人暮らしの高齢者は、近所に頼れる人がいないと体調が優れないときに孤立してしまいがちだ。そのような際にUberのデリバリーで急場をしのげるという恩恵を感じている高齢者がすでに一定数いることがうかがえる結果となった。
高齢者のUber Taxiの利用実態
【関東圏】
関東圏に住む65歳以上のUber Taxi利用経験者に、サービスを利用した際の感想について聞いてみたところ、
「普通のタクシーと変わらずサービスもよくリーズナブルだった」(東京都/66歳男性)
「雨で洋服がぬれていて、車内を少し汚してしまったが、親切に対応してくれた」(東京都/68歳女性)
「病院へ行くときに天気が悪く、非常に助かった思い出がある」(神奈川県/66歳男性)
「足を捻挫してしまい、普段なら自家用車か自転車で移動するんですけど、それができなかった。そんなときにUber Taxiに助けられました。運転手さんが優しく、自分の肩を貸してくれて乗り降りするのを手助けしてくれました」(千葉県/70歳男性)
といった好意的な回答が大多数を占めた。
【関東圏以外】
続いて、関東圏以外の地域に住む65歳以上のUber Taxi利用経験者に、サービスを利用した際の感想について聞いてみたところ、
「結婚式場に遅れそうだったが、近道を探してくださってなんとか間に合って助かった」(大阪府/67歳男性)
「深夜のタクシー利用だったが迅速に来てくれた」(大阪府/80歳男性)
「大切なお客様との急な商談に向かうことになったとき、公共交通機関を使っていては間に合わないことがわかったため、Uber Taxiを頼みました。時間に正確に迎えに来てくれて、しかも約束の時間通りにお客様の所につくことができ、大きな商談がまとまりました。それ以来、大きな荷物があった場合や、大切な商談を控えたときには、必ずUber Taxiを利用するようにしています。使い勝手がとても良いと思いますので、仕事以外にもプライベートでも利用するようになりました」(愛知県/65歳男性)
と、関東圏の利用者同様に好意的な回答が大多数を占めた。
関東圏と関東圏以外におけるUber Taxiの利用目的の違い
Uber Taxiの利用目的(※複数回答可)についても調査したところ、関東圏と関東圏以外での上位トップ3には微妙な違いが見られた。
関東圏では「急な雨や悪天候に見舞われたとき」が47.6%で最も多く、次いで「電車やバスなどの公共交通機関がない、あるいはそれらでアクセスしにくい場所に行くとき」と「大きな荷物があるとき」がそれぞれ33.3%だった。
一方の関東圏以外では「電車やバスなどの公共交通機関がない、あるいはそれらでアクセスしにくい場所に行くとき」が50.0%で最多。2位は「大きな荷物があるとき」(43.8%)、3位は「急な雨や悪天候に見舞われたとき」(31.3%)だった。
やはり公共交通機関が発達していない地域においては、タクシーは貴重な移動手段であり、地方エリアにおいてその傾向がやや強く表れていることが見てとれる結果となった。
過疎地域や公共交通が限られるエリアでは、「移動の手段がないこと」が通院や買い物といった日常生活に深刻な支障をきたす。そんな中、Uber Taxiは「必要なときに確実に乗れる足」として、高齢者や車を持たない住民にとって大きな支えとなり、過疎地域における「移動の格差」を是正する可能性を秘めていると言えそうだ。
高齢者が使いやすいように設計した「Uber シニア」の提供開始
そんなUber Taxiを高齢者により手軽に使ってもらえるよう、Uber Japanもサービスの向上に努めている。
同社は2025年7月24日より、オンライン配車アプリ「Uber」において、シニア世代向けの新機能「Uber シニア」および「シンプルモード」の提供を開始。文字やアイコンサイズを大きく表示し、必要最低限の情報だけに絞ったシンプルな画面に切り替えることで、シニア世代のユーザーが従来より簡単にタクシーなどの車両を手配できるようになったという。
「移動」と「食」の新しいインフラとしてのUberの意義
猛暑が常態化するなか、過疎地域や公共交通機関が脆弱なエリアでは、日常の移動すら命に関わるリスクとなっている。とりわけ高齢者にとっては、買い物や通院といった基本的な行動が制限されてしまう事態は深刻な課題だ。
そんな現実に対し、Uberのような移動・配達サービスが果たす役割はますます重要になっていくし、ゆくゆくはデリバリーロボットが過疎地などで荷物配達の担い手となってくるだろう。
「移動」と「食」の新しいインフラとして、Uberは単なる利便性を超えた、命を守る仕組みとしての存在になりつつあるのかもしれない。