会社設立後、四半世紀を超えて風力発電事業に携わってきたコスモエコパワー。7月1日には青森県・六ヶ所村で進めていた「新むつ小川原ウィンドファーム」のリプレイスが完了し、商業運転を開始した。
そんな同社が風力発電事業で重要視していることとは?
「新むつ小川原ウィンドファーム」がモデルケースに?
1997年7月に創業した日本初の風力発電専門企業・コスモエコパワー。同社の長い歩みの中でも、20年にわたって商業運転を続けた風力発電施設のリプレイスを行うのは、今回の「新むつ小川原ウィンドファーム」が数少ない事例だ。その意義を執行役員/事業開発1部長の久坂有史さんはどう捉えているのか。
「風力発電施設をリプレイスする場合は、発電機が大型化したことにより運べないとか、住宅が近すぎて設置できないなど、さまざまな事情が出てきます。新むつ小川原ウィンドファームは、いろいろな要素が絡み合う中でリプレイスが実施できた事例です。事業を進める中で、いろいろなノウハウや開発に関する知見も得られたので、今後のリプレイス事業を進める中でモデルケースになってくると期待しています」
風力発電所は同じ土地で長期間にわたり運転を行う。事業を進める上で、コスモエコパワーは何を大切にしているのか。久坂さんはこう語る。
「私たちが事業開発の最重要事項と考えているのは、地元地域との信頼関係の構築です。例えば、早い段階から機会を設けて、しっかりと時間をかけて地元の方に説明しています。このプロセスをしっかりと踏まないと、地元の方たちが、ある日突然、自分たちの地域で風力発電計画が進められていることをテレビや新聞で知って、ギョッとするケースが出てきます。これはよろしくありません。
風力発電事業は地元地域の合意が得られなければ進められませんから、まずは地元地域の了解・合意が得られそうかの感触を確かめて、そこから具体的に進めていくのが順番だと考えています」
風力発電の適地は取り合いの様相?
数多くの事業開発に携わり、プロジェクトマネジメントを行ってきた事業開発2部 開発5グループ長の三宅誠人さんは、地元地域との合意形成のポイントについて、「初期段階から可能な限り幅広くステークホルダーに事業を理解してもらう取り組みを行うことが重要」と語る。
「私どもの事業を進める上では、最もコアなステークホルダーである地元地域の住民や地権者と重点的にコミュニケーションを図り、開発計画は各フェーズで一つ一つ合意を形成していきます。そして、最終的な工事着手前までに完全に合意をしていなければいけません。どの段階であってもステークホルダーとの関わりは重要です。中でも、事業に対する地元の方々のご意向を、事前の説明会などで調査するスクリーニングは、最も重要だと思います」
早い段階で地域との合意形成を目指していくことが、円滑な事業展開につながる。一方で、日本は風力発電の適地が限られることから、近年は他事業者と事業地が重複するケースも出てきている。
「例えば、事業者Aが進めていた事業地に、事業者Bが入ってくるというケースはザラにあります。しかし、適地が取り合いになっているからといっても、性急に事を進めるということを私たちは望みません。これまで通り、早い段階から地元地域の信頼を得る努力を続けていくのが、結果的に地元地域の方々に選んでいただける最善の方法だと考えています」(三宅さん)
地元地域との信頼関係の構築を第一とする従来の考えに変更はないものの、合意形成を進める方法は差別化していく必要があるというのが三宅さんの考えだ。
最後に三宅さんは、「いろいろと模索をしながら発展させている途中ではありますが、合意形成や他社との差別化を図っていくためには、もっともっと施策のバリエーションを増やし、地域貢献や共生につなげていく必要があると思います。ただし、これにはステークホルダーのニーズが大きく関わってきます。今後も私たちに何ができるかを考えて、施策内容を都度変更しながら進めていきます」と話していた。
安藤康之 あんどうやすゆき フリーライター/フォトグラファー。編集プロダクション、出版社勤務を経て2018年よりフリーでの活動を開始。クルマやバイク、競馬やグルメなどジャンルを問わず活動中。 この著者の記事一覧はこちら
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