三井不動産は8月1日、ロジスティクス事業についてメディア説明会を開催。開発物件の進捗状況や、事業領域の拡大施策、また今後の見通しについて説明した。


○■“産業デベロッパー”として

三井不動産の篠塚寛之氏が説明した。開発物件の進捗については、2025年7月末時点で竣工済みが58物件(約465万m2)。また2025年度は、MFLPつくばみらい(2025年4月)、MFLP一宮(2025年5月)、MFLP尼崎 I(2025年5月)、MFLP仙台名取 II(2025年12月)、MFLP入間 I(2026年1月)を竣工予定としている。

三井不動産では、不動産デベロッパーの枠組みを越えた「産業デベロッパー」として社会課題の解決に貢献していきたい考え。同社が掲げる長期経営方針「& INNOVATION 2030」では、ロジスティクス事業のさらなる深化、事業領域の拡大、ESGへの取り組み強化、の3本柱を軸に展開する。

篠塚氏は、ロジスティクス事業のさらなる深化について、まずはMFLP船橋を例にあげて説明する。いわゆる街づくり型物流施設であり、インターチェンジ、駅、港、空港、消費地に近接した利便性の高い大規模用地に展開。先進的物流施設でありながら、地域社会との共生・連携も考えられている。これをふまえたうえで「当社ではMFLP船橋のほか、MFIP羽田、MFLP・LOGIFRONT東京板橋などを通じて、エリアの価値向上にも努めてまいりました」と篠塚氏。

「地域に開かれた公演、そして託児所、さらにはアイススケートリンクやフットサルコートを提供することで、地域が一体となる街づくりにも取り組んでいます。ここで働く人々や地域の方々に誇りを持っていただけるような開発を心がけています。災害時には施設が避難場所になるよう、整備も進めています」(篠塚氏)

2024年問題をはじめ、物流に関する課題がますます複雑・多様化している現代。
三井不動産では、荷主、物流をはじめとする顧客のニーズにきめ細やかに対応するBTS(Build to Suit)を強化することで、ビジネスにつなげていきたい考え。たとえばMFLPつくばみらいでは、トラクターの組み立て、一時保管所に利用できるよう倉庫内の用途を変更。また(旧)MFLP船橋南海神では、企業のニーズに対応した冷凍冷蔵倉庫をオーダーメイドで開発することが決まっている。

事業領域の拡大については、2014年から参入しているデータセンター事業に注力する。「今後、都心型データセンター、コロケーション型データセンターにも事業領域を拡大してまいります。直近では、関西エリアにおける開発が決まりました。累計投資額は約3,000億円に拡大しています」と篠塚氏。なお今後の投資目標額としては「2035年までに約6,000億円」を掲げている。

各所で冷凍冷蔵倉庫の開発、複合用途施設の開発を進める。このほか「事業領域の拡大という観点では、工場、インフラ施設にも事業ウイングを拡大し、インダストリアルプラットフォーマーとしての役割を担っていきたいと考えています」と説明。

ESGへの取り組み強化として、たとえばMFIP海老名&forestでは、建物構造の一部に木造を採用した。三井不動産グループが北海道に保有する森林の木材を構造材および内装・仕上げ材の一部に使用しているという。
「これにより建物を鉄骨造で建築した場合に比べて、建築時のCO2排出量の約40%を削減できると想定しています」と篠塚氏。

グリーン電力については、MFLP・LOGIFRONT東京板橋、MFLP入間Iにおいて太陽光パネルを屋根に設置。余剰電力は、他施設(小中学校を含む)に供給するなどしている。またMFLP横浜新子安には大型蓄電池を導入し、約2,000kWの太陽光パネルから創出されたグリーン電力を有効活用している。

2025年度の開発については、新たに6件の施設に着工する予定。これにより累計開発施設数は国内外で78件、累計総投資額は約1兆3,000億円に拡大する見通しだという。篠塚氏は「私たちがここまで成長できたのも、当社事業をご理解いただいたテナント企業をはじめとする方々のご支援のたまものであると考えております。今後も、人が集まる『場』をつくり、賑わいや新しい『コト』を生み出す、というステートメントのもと、さらなる成長に向けて取り組んでまいります」とまとめた。

近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。
趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら
編集部おすすめ