女優の広瀬すずが主演を務める映画『遠い山なみの光』(9月5日公開)の原作者であるカズオ・イシグロ氏のインタビュー映像が公開となった。
『遠い山なみの光』は、ノーベル文学賞受賞作家カズオ・イシグロ氏の長編デビュー作を、石川慶監督が映画化。
本作の公開が戦後80年となる2025年に決まったことについてプロデューサーの福間美由紀氏は、「この大切な節目に、大きな事件ではなく、あの日を生きた市井の女性たちのミステリーを通して、今の私たちにつながる物語を描けたのではないかと思います」とコメント。同じくプロデューサーを務めた石黒裕之氏も「戦争を実体験した人々がますますいなくなっていくこのタイミングで、戦争を知らない世代が記憶を頼りに物語を描くことがこの映画のストーリーそのものと今の時代性にリンクしていると思いました」と語っており、石川監督は、「原作は戦後の長崎と1980年代のイギリスが舞台の話ですが、戦後の描かれ方が誠実でそこにとても共感しました。長崎や戦争というテーマや小津安二郎作品的な人物たちは、何度も日本映画で描かれてきましたが、イギリスからの視点が入ること、そしてカズオ・イシグロ的な"信頼できない語り手"によるミステリー感が加わることによって、全く新しい視座を獲得しているように思いました。これらのテーマを新しい世代の感覚でアップデートすることは、戦後80年の今必要なことだと実感しています」と、完成を迎えて改めて抱いた想いを明かしている。
この度公開となったのは、原作者であるカズオ・イシグロ氏のインタビュー映像。悦子役の吉田羊が撮影前から単身で数週間ホームステイをし、英語のレッスンを受けてから撮影に挑んだ撮影地イギリスにて、イシグロ氏が本作と戦争、自身が育った長崎への想いなどを吐露している、今の日本へのメッセージが詰まった内容となっている。
(C)『遠い山なみの光』製作委員会
【編集部MEMO】
原作者、エグゼクティブ・プロデューサーのカズオ・イシグロは、本作で描かれる長崎県の出身で、幼年期に渡英したのち、1983年にイギリス国籍を取得。2017年にノーベル文学賞を受賞している。本作以外にも映画化された作品は数多く、『日の名残り』『上海の伯爵夫人』『わたしを離さないで』『生きる LIVING』は、日本でも公開されている。