2025年夏、日本株市場は活況を呈し、日経平均株価はついに史上最高水準に到達しました。トランプ関係の先行き不安感などから、4月のはじめには3万1,000円台まで下落しましたが、そこから4ヵ月余りで1万2千円以上の上昇を記録したこととなります。
また、この大幅な上昇をうまく捉えた国内株式ファンドの中には、NISAで人気の『オルカン(全世界株式)』や『S&P500ファンド』を上回る成績を残したものもあります。
見たことも聞いたこともない米国企業の株を多く含むファンドより、身近でなじみのある日本企業の株を組み入れたファンドのほうが、投資先を検討しやすいと感じる方も多いのではないでしょうか。
今回は、SBI証券投資情報部のシニア・ファンドアナリスト・川上雅人さんに、最高値更新の背景を解説いただくとともに、3年リターンでオルカン・S&P500を上回った、NISAで買える国内株式ファンド上位10本をご紹介します。
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日経平均株価が1年1ヵ月ぶりに最高値を更新!
2025年8月12日、日経平均株価の終値が42,718円17銭となり、2024年7月11日につけた終値ベースの高値(42,224円02銭)を超え、1年1ヵ月ぶりに最高値を更新しました。8月13日には史上初の4万3,000円台に乗せました(図表1)。
日経平均株価最高値更新の要因は、米国との関税交渉が進展し、企業業績への影響が見通しやすくなったとの見方から、出遅れていた国内株式に海外投資家からの資金流入が継続したことや、株主還元策の一つである企業による自社株買いの増加などが挙げられます。
米トランプ政権による相互関税の発表に伴う先行き不透明感などにより、4月7日の日経平均株価は終値で3万1,000円台まで下落しましたが、そこからわずか4ヵ月余りで1万2千円以上の上昇を記録しました。
米国の代表的な株価指数であるS&P500指数は、2025年に入ってから企業業績の拡大などを背景として、何度も過去最高値を更新しています。1年1ヵ月ぶりに最高値を更新した日経平均株価もS&P500指数のように、インフレ定着などによる企業業績の拡大が続けば、今後も最高値を更新していくことが期待されます。
オルカン・S&P500を上回る国内株式ファンドに注目
そこで今回は、日経平均インデックスファンドを上回る好成績の国内株式ファンドに着目します。1年、3年リターンで日経平均インデックスファンドを上回るNISAで買えるSBI証券取り扱いファンド上位10を図表2で一覧にしました。
これらの好成績国内株式ファンドは、NISAで人気のeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)(愛称:オルカン)(以下、オルカン)やeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)(以下、S&P500)の3年リターンを上回る実績となっています。
NISAで買える! オルカン・S&P500を上回る好成績 国内株式ファンド10選
10位 One割安日本株ファンド(年1回決算型)
日本の割安株へ投資し、株価のバリュエーションに着目しつつ、それぞれの企業の業績や財務状況などの基礎的な情報であるファンダメンタルズ等も勘案して運用を行うファンドです。組入上位銘柄は、三菱UFJフィナンシャル・グループ、東京海上ホールディングス、ソニーグループ、三井住友フィナンシャルグループ、豊田通商などとなっており、組入銘柄数は75銘柄です(※)。標準偏差が小さく、高い運用効率を実現しています。
9位 One高配当利回り厳選ジャパン
「配当利回り」と「長期にわたる配当の持続性・成長性」に着目し、投資銘柄を20~40銘柄程度に厳選しているファンドです。組入上位銘柄は、三井住友フィナンシャルグループ、東京海上ホールディングス、パルグループホールディングス、豊田通商、丸井グループなどとなっており、組入銘柄数は37銘柄、予想配当利回りは2.95%です(※)。標準偏差が小さく、運用効率が高いファンドとなっています。
8位 日本株配当オープン(愛称:四季の実り)
相対的に配当利回りが高い銘柄を中心に、増配期待銘柄にも投資を行うファンドです。組入上位銘柄は、三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、トヨタ自動車、三井住友フィナンシャルグループ、日立製作所などとなっており、組入銘柄数は80銘柄、予想配当利回りは3.09%です(※)。標準偏差が小さく、高い運用効率を実現しています。
7位 ノムラ・ジャパン・オープン
ボトムアップ・アプローチをベースとしたアクティブ運用を行い、株価の割安性をベースに銘柄選択しているファンドです。
6位 NZAM 日本好配当株オープン(3ヵ月決算型)(愛称:四季の便り)
予想配当利回りが高いと判断される銘柄を中心に、株価の割安度等にも着目した投資銘柄の選定を行うファンドです。組入上位銘柄は三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、住友電気工業、ソフトバンク、MS&ADインシュアランスグループホールディングスなどとなっており、組入銘柄数は102銘柄、予想配当利回りは4.04%です(※)。標準偏差が一覧のファンドの中で最も小さく、運用効率が最も高いファンドとなっています。
5位 カレラ日本小型株式ファンド
日本の小型株式に投資し、事業内容、成長性、収益性、財務健全性などを勘案して銘柄を厳選しているファンドです。組入上位銘柄は名村造船所、ジャパンエンジンコーポレーション、中北製作所、ダイハツインフィニアース、中国塗料などとなっており、組入銘柄数は30銘柄です(※)。成長シナリオに着目した小型株の組入れが特徴で、1年リターンでもオルカン、S&P500を上回る実績です。
4位 21世紀東京 日本株式ファンド(愛称:成長への道)
事業内容、成長性、収益性、財務健全性などを勘案して銘柄を厳選し、業種配分、バリュエーションなどを考慮してポートフォリオを構築しているファンドです。組入上位銘柄は三菱重工業、鹿島建設、アドバンテスト、東京エレクトロン、スカパーJSATホールディングスなどとなっており、組入銘柄数は23銘柄です(※)。1年リターンでもオルカン、S&P500を上回る実績です。
3位 三菱UFJ バリューオープン
個別企業を分析して銘柄を選ぶ投資手法である、ボトムアップ・アプローチを基本としたアクティブ運用により長期的にTOPIX(配当込み)を上回る運用成果を目指すファンドです。組入上位銘柄は三菱UFJフィナンシャル・グループ、鹿島建設、ソニーグループ、日立製作所、SWCCなどとなっており、組入銘柄数は51銘柄です(※)。
2位 情報エレクトロニクスファンド
電気機器、精密機器などエレクトロニクスに関連する企業群や情報ソフトサービス、通信など情報通信に関連する企業群の株式を主要投資対象としているファンドです。組入上位銘柄はソフトバンクグループ、古河電気工業、東京エレクトロン、ソニーグループ、富士通などとなっており、組入銘柄数は44銘柄です(※)。特定業種の成長株中心のポートフォリオのため標準偏差は大きいファンドですが、1年リターンでもオルカン、S&P500を上回る実績です。
1位 ダイヤセレクト日本株オープン
三菱グループ企業の株式の中から、流動性や信用リスク等を勘案して組入対象銘柄を決定しているファンドです。組入上位銘柄は三菱電機、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三菱商事、東京海上ホールディングス、三菱地所などとなっており、組入銘柄数は21銘柄です(※)。値動きの振れ幅を示す標準偏差(値動きの大きさ、リスクの度合い)も相対的に小さく、運用効率を示すシャープレシオ(3年)は1.96となっており、高い運用効率を実現しています。
新NISA期間でも健闘、S&P500との比較結果
図表3では主な3年好成績国内株式ファンドとS&P500を新NISAの期間となる約1年7ヵ月間でパフォーマンスを比較しました。取り上げた国内株式4ファンドは新NISA期間においてもS&P500を上回る実績となっており、S&P500と異なる値動きが確認できます。
国内株式に投資していないS&P500保有者や国内株式の構成比が約5%と小さいオルカン保有者は、これらの好成績国内株式ファンドを組み合わせて分散投資することが有効と考えます。また、よりリスクを抑えた運用を目指すなら、標準偏差が相対的に小さい高配当株や割安株に着目したファンドが選択肢といえます。
(※)組入銘柄の情報は7月末基準(4位と5位のファンドは6月末基準)。
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『投資情報メディア』より、記事内容を一部変更して転載。
川上雅人 かわかみまさと SBI証券 投資情報部 シニア・ファンドアナリスト(公益社団法人日本証券アナリスト協会認定アナリスト) 慶應義塾大学卒業。丸三証券で国内株アナリスト、国内大手運用会社で18年間、商品企画・営業などを担当後、2020年よりauカブコム証券でファンドアナリストとして活動。2022年11月から現職。最新の投資情報を発信する『投資情報メディア』のレポート・コラムなどで投資信託や資産運用(新NISAなど)に関する情報提供を行う。 この著者の記事一覧はこちら