投資の世界では「卵は一つのカゴに盛るな」と言われています。投資先を一つに集中すると、その投資が失敗した際のリスクが大きくなるため、少しずつさまざまな資産に分けて投資してリスクヘッジをするほうがよい、という考え方です。


日米の株価指数が最高値圏内で推移しており、何が起こるかわからない今こそ、複数の資産に分散投資できるバランスファンドを選択肢に加えるのも有効な方法ではないでしょうか。

そこで今回は、SBI証券投資情報部のシニア・ファンドアナリスト・川上雅人さんに、NISAで人気のeMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)よりも「値動きの大きさ(1年の標準偏差)」が小さく、1年のリターンが高いファンドをご紹介いただきました。

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資金流入が落ち込む中でバランスファンドに注目!

2025年6月の投資信託(追加型株式投信(ETF除く))の資金流入額(買付金額-売却金額)は4,064億円となり、5月比で半分以下まで落ち込みました(図表1)。株高や円安で多くのファンドの基準価額が上昇し、利益確定に伴う売却が増えていることと、トランプ関税などによるマーケットの不透明感などから投資家の様子見姿勢が強まっていることが要因と考えられます。

投資信託の月間資金流入額は新NISA2年目の駆け込みで過去最高となった2025年1月をピークに減少傾向が続いており、この要因は売れ筋でシェアの大半を占める海外株式カテゴリーの資金流入の縮小が大きいといえます(図表1)。

こうした中で注目されるのが、シェアは大きくないものの、株式や債券、不動産、金など複数の資産を投資対象にしているバランスファンドで構成されるバランスカテゴリーの安定した資金流入です。バランスファンドは株式ファンドと比べて異なる資産クラスに分散投資していることから相対的にリスク(値動きの振れ幅)が小さいため、買うタイミングを選ばないファンドといえます。
低リスクで好成績のバランスファンドを厳選

そこで今回はバランスファンドに着目し、NISAで人気のeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)(以下、オルカン)よりリスク(1年の標準偏差)が小さく、1年のリターンが高いファンドを探してみました。こうした条件で絞ったSBI証券取り扱いのNISAで買える好成績バランスファンドは10本以上あり、1年リターン順に7本に絞った一覧が図表2となります。

バランスファンド7本の値動きの振れ幅を示す標準偏差(1年)は、大きな下落局面が2度もあった波乱の1年間において、オルカン対比で50~75%程度に抑えられています。

オルカンより低リスクで1年好成績のバランスファンド7選
AIが資産配分を決定、1位はROBOPROファンド

1年リターン1位のROBOPROファンドは、世界の株式、債券、不動産(リート)およびコモディティ(金)に分散投資し、各資産配分にあたっては、マーケットデータ、対象資産の期待収益率、リスク、各資産の相関等に基づく合理的判断によりAIが月1回配分比率を決定しています。機動的な資産配分の変更によって1年では相対的に高いリターンを獲得しました。
資産別の構成比率は、不動産(米国リート)37.8%、米国株式18.1%、金16.3%、ハイイールド債券15.6%、新興国株式7.0%、先進国株式5.2%となっています(※)。好パフォーマンスとなったファンドの運用状況等の詳細は動画(※YouTubeに遷移します)をご参照ください。

世界の株式と金に分散、ダイワFEグローバル・バリュー

2位のダイワFEグローバル・バリュー(為替ヘッジあり)と7位のダイワ FEグローバル・バリュー(為替ヘッジなし)は、割安と判断される世界の株式等に投資、金ETF、債券、転換社債などの資産も投資対象としているファンドです。運用はファースト・イーグル・インベストメント・マネージメントが行っています。円高局面となった1年のリターンでは為替ヘッジありが優位でしたが、3年リターンでは為替ヘッジなしが優位となっています。資産別の構成比率は、北米株式45.2%、欧州株式21.5%、日本株式6.6%、金関連(金ETF、金関連株式)13.4%などとなっており(※)、株式の比率が高いバランスファンドといえます。
新興国と金に強み、ピクテ新興国ポラリス

3位のピクテ新興国ゴールデン・リスクプレミアム・ファンド(愛称:新興国ポラリス)は、新興国の株式および債券、金等様々な資産に投資を行い、世界の市場環境に応じて魅力的なリスクプレミアムが期待できる資産を選定し、配分比率の決定を行うファンドです。基本資産配分の見直しは原則として月次で行い、資産別の構成比率は、株式34.2%、債券19.7%、金37.8%などとなっており(※)、過去も金の構成比が高いファンドとなっています。大半は新興国に投資していますが、為替ヘッジなどを考慮した円資産の比率は58%となっていることもあり、標準偏差が小さいファンドとなっています。
国内株式とリートを組み合わせた安定型ファンド

4位のNZAM・ベータ 日本2資産(株式+REIT)と5位の日本株式・Jリートバランスファンドは、日経平均と東証リート指数(ともに配当込み)の比率を均等とした合成指数に連動する投資成果を目指すというインデックスファンドです。国内株式と国内リートは値動きが異なり、為替リスクがないことから標準偏差が小さく、安定したパフォーマンスとなりました。2ファンドともにつみたて投資枠でも購入可能です。

GDP比率で資産を配分するグローバル経済コア

6位のグローバル経済コアは、日本を含む世界の株式、債券、リート、金に分散投資し、各投資対象市場の代表的なインデックスへの連動を目指す運用を行うファンドです。株式及び債券の基本組入比率は、地域別(日本、先進国、新興国)のGDP(国内総生産)総額の比率を参考に決定しています。資産別の構成比率は、国内株式3.63%、外国株式21.24%、新興国株式13.28%、国内債券2.31%、外国債券18.64%、新興国債券12.19%、国内リート4.82%、グローバルリート5.01%、金18.07%などとなっています(※)。外貨建て資産の割合が高いバランスファンドといえます。

上記の7ファンドは、オルカンにはない株式以外の異なる資産へ分散投資が可能となっているファンドであり、一部のファンドはオルカンでは構成比が低い日本や新興国に分散投資が可能なファンドといえます。

まとまった資金で運用していて投資タイミングを迷われている方や、リスクを抑えた運用を考えている方は、これらのバランスファンドへの投資が有効な選択肢になると考えます。

(※)組入銘柄の情報は、1位のファンドが7月10日基準、それ以下のファンドは6月末基準。
オルカンと組み合わせる分散投資の選択肢に

主なバランスファンドとオルカンの約1年間におけるパフォーマンスを比較したものが図表3となります。これらのバランスファンドはオルカンと比べて下落局面で値動きが小さいことが確認できることから、オルカンとバランスファンドを組み合わせて投資することも一考に値すると思われます。

掲載されたファンドの情報はこちら

『投資情報メディア』より、記事内容を一部変更して転載。

川上雅人 かわかみまさと SBI証券 投資情報部 シニア・ファンドアナリスト(公益社団法人日本証券アナリスト協会認定アナリスト) 慶應義塾大学卒業。丸三証券で国内株アナリスト、国内大手運用会社で18年間、商品企画・営業などを担当後、2020年よりauカブコム証券でファンドアナリストとして活動。
2022年11月から現職。最新の投資情報を発信する『投資情報メディア』のレポート・コラムなどで投資信託や資産運用(新NISAなど)に関する情報提供を行う。 この著者の記事一覧はこちら
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