日本政府が主導する第9回アフリカ開発会議(TICAD9)が、神奈川県横浜市にて8月20日~22日の日程で開催され、TICADのテーマ別イベントとなるジェトロ主催・アフリカビジネス協議会(JBCA)共催の「TICAD Business Expo & Conference(TBEC)」の「Japan Fair」にヤマハ発動機がブース出展を行った。
日本とアフリカをビジネス・投資・イノベーションでつなぐ
アフリカ開発会議(Tokyo International Conference on African Development:略称 TICAD)は、アフリカの開発をテーマとする国際会議。
1960年代よりアフリカを対象とした事業展開を行っているヤマハ発動機だが、今回のTBECのブースでは、1991年に設立された海外市場開拓事業部のアフリカ開拓部と、2020年にスタートしたMSB(Mobility Service Business)部がアフリカで展開する事業が紹介された。
ブースでひときわ存在感を放つボートは、現在ヤマハ発動機がアフリカでの普及を促進しているFRP製のボート。アフリカの漁業は、依然として木製のボートが使用されていることが多く、特に西アフリカではおよそ10万隻の木製ボートが稼働している。
木製ボートは価格こそ安いが、耐用年数が短く、安全性にも不安があるほか、バクテリアが繁殖しやすく、魚を保管するうえでも問題が多い。一方、FRP製ボートのコストは木製ボートの1.5~3倍程度となるが、耐用年数や安全性はもちろん、衛生面でもメリットが大きい。
そして、ヤマハ発動機では、FRP製ボートそのものを輸出するのではなく、「現地のニーズにあった船は現地で製造するのがベスト」という考えから、現地で製造できるように、製造技術を普及させることを目的とした、エンジニアの派遣などによる技術支援を1980年代より実施。現在、アフリカにおけるFRP製ボートの製造工場は、ケニアとモザンビークの2カ所で稼働しており、セネガルでの展開も検討されているという。
また、都市部を離れた土地をターゲットに、日本政府のODAや国連機関などの公的資金を活用した浄水プラント「ヤマハクリーンウォーターシステム」の導入も進めている。この「ヤマハクリーンウォーターシステム」は、砂・砂利による緩速ろ過と、バクテリアを利用した生物ろ過を組み合わせたろ過装置で、村落の規模や予算に応じて2つのモデルが用意されているが、大きなものでは、1日の浄水生産量が約8,000リッターに達し、約2,000人をカバーすることができる。
「ヤマハクリーンウォーターシステム」の最大の特徴は、現地のコミュニティが、自分たちの手で管理・運営ができるように、できるかぎりシンプルな構造で作られているところ。
モビリティのレンタルやリースを展開
一方、MSB(Mobility Service Business)は、モビリティを使ったサービスを提供する部署で、2020年に設立されたヤマハ発動機では比較的新しい事業。具体的には、レンタルやリースで車両を提供するサービスを、アフリカおよびインドで展開している。
これまでヤマハ発動機は、自力でモビリティを購入、あるいはレンタルできる層をターゲットに事業を展開してきたが、MSBは、自力での購入やレンタルが難しい経済層をターゲットとしているのが特徴。ただし、直接ターゲットにリーチするのではなく、MSBがモビリティをアセットとして管理・保有し、現地でモビリティサービスを提供しているプラットフォーマーに、レンタルやリースを行うというBtoB型の事業を展開している。
現地のプラットフォーマーは、基本的にはスタートアップ企業であるため、資金力が弱く、モビリティを購入するのが困難な状況にあることが多いが、そこにリースとして提供することによって、さらなる事業展開を促し、現地におけるモビリティサービスの拡大を目指す。MSBは事業の目的として、「現地の社会課題の解決」を謳っているのが大きな特徴となっている。
交通インフラが未発達な地域に移動サービスを提供、失業率の高いアフリカにおける雇用の創出など、現地課題のひとつひとつに挑戦していくこともMSBのコンセプトのひとつ。ただし、決して慈善事業ではないのが注目ポイントであり、地域課題の解決が収益増につながるという、地に足のついた事業方針のもと、アフリカではナイジェリア、ウガンダ、タンザニアの3カ国で事業を展開している。
すでに、アフリカのほぼ全土にネットワークを構築しているヤマハ発動機だが、今後はよりサービスの質を高めていくことが重要であり、特にMSBはまだまだ始まったばかりの事業ということもあって、より深く現地に根付かせていくことを目指して、さらなる事業展開を進めていくという。
Yamaha E-Ride Baseではよりアフリカを身近に
横浜みなとみらいにある体験型ショールーム「Yamaha E-Ride Base」では、アフリカ開発会議の開催に合わせて、「【特別展示】アフリカ×ヤマハ発動機 ~世界の人々に豊かさと喜びを~」を、8月6日~8月8日および8月20日~8月31日の期間に開催している。
この特別展示は、アフリカにおけるヤマハ発動機の社会課題解決の取り組みをわかりやすく伝え、アフリカの市場・文化について親しんでもらうことを目的としたもので、アフリカで活躍するヤマハの二輪車や船外機の実機を展示。
TBECでのブースは、基本的に関係者を対象としたものだが、「Yamaha E-Ride Base」での展示は、ヤマハ発動機のアフリカでの活動をより一般層に向けて伝えることで、認知度を向上させることが狙い。ヤマハ発動機のアフリカでの歩みや現地での活動内容などがわかりやすく紹介されていた。
また、「Yamaha E-Ride Base」は、家族連れなどで子どもの来場が多いことから、「アフリカってどんなところ?」といったかたちで、アフリカそのものを紹介したり、アフリカの民族衣装を実際に着用できる「みんなで着よう!民族衣装!」のコーナーなども用意されていた。