奈良県橿原(かしはら)市にある農産物の直売所「まほろばキッチン橿原店」では8月22日、JAならけんサマーフェスタが開催された。特設ステージでは、県内の高校生による和太鼓のパフォーマンスや、「JA共済プレゼンツ それいけ!アンパンマンミニショー&握手会」などを実施。
屋台(露店)も出るなどし、たくさんの客が訪れた。イベントにはJA共済アンバサダーを務めるタレントの大平萌笑(おおひらもえ)さんも来場。盛り上がりに華を添えている。

○■地域に愛された直売所

京都駅から、近鉄京都線・近鉄橿原線に揺られること1時間ほど。奈良県中部に位置する橿原市は、畝傍山、天香具山、耳成山の大和三山に囲まれた長閑な盆地にあり、古の人々ばかりか、都会の喧騒に疲れた現代人にとっても”まほろば”(=住みやすい場所)であり続けているように思える。

地域の人たちとの交流を大事にしている「まほろばキッチン橿原店」では、毎年この時期にサマーフェスタ、あるいは盆踊りなどを実施してきた。今年のイベントでも、JA職員、女性部員、青壮年部員らが屋台を運営。地産地消の食材を取り扱うキッチンカーも出店して賑わった。

駐車場に特設したステージでは、オープニングセレモニーを開催した。その冒頭、主催者を代表してJAならけん経営管理委員会会長の村本佳宜氏が登壇。まほろばキッチンについて「地元の皆さんにご愛顧いただき、12年目を迎えることとなりました。感謝申し上げます」とし、「本日も様々なイベントを用意しております。
熱中症など、暑さ対策に充分に気を配りながら楽しんでください」と呼びかける。

来賓で招かれた橿原市の亀田忠彦市長は「まほろばキッチンは奈良県内の新鮮な農産物の直売所として、産直レストランとして、また地域の人々の観光情報の発信拠点としても機能しております。地域の活性化に貢献いただいており、JAならけんの関係者の皆さまに心から感謝しております」と挨拶。そして「橿原市では子どもたちに、いかに栄養価の高い食べ物を提供できるか、JAさんと常々協議しながら取り組んでおります」とし、これからも連携を深めて安全な食を提供できるよう推進していきます、とまとめた。

奈良県副知事の福谷健夫氏は「現在、奈良県と協定を結んで地産地消・地域の活性化に取り組んでいる直売所は43箇所ありますが、まほろばキッチンは県内で最大級の施設です。地元の農畜産物を安心安全に楽しめる場所として12年もの長い間、皆さんに愛された直売所であり、これは地域にお住まいの方々と信頼関係で結ばれている証だと理解しております」。そして「地域に賑いと交流をもたらす、本日のようなイベントが今後も続いていくことに期待しております」とむすんだ。

このあとステージ上では、JA共済アンバサダーの任命式が執り行われた。タスキを贈呈された大平萌笑さんは「イベントに参加できることを、とても楽しみにしていました。今日は奈良県の地域の魅力にたくさん触れて、多くの人に向けて情報発信できるよう努めてまいります」と意気込んだ。

会場を練り歩き、一般来場者との交流を楽しむ大平さん。あちらこちらから「地元の食材を食べていってくださいよ」という声がかかる。
暑いさなかに口にした、高級ブランドのいちご「古都華」(ことか)を使ったスムージーは、とくに気に入ったようだった。

店内の果物コーナーに移動すると、小さな男の子を連れた母親と立ち話をした。ここで「お子さんに、ぶどうをあげても良いですか?」と確認。大きな巨峰を頬張った子は「美味しい!」と満足げに笑った。

ここで再び、屋外へ。JA共済の「すまいる号」の前では、小学生の兄弟に話しかけた。同ブースには、自転車の交通ルール、危険予測、安全運転について学べるシミュレーターを用意している。「夏休みには、どこか遊びに行きましたか?」「普段から自転車には乗っていますか?」という問いかけに、しっかりと回答するお兄ちゃんと、モジモジと恥ずかしそうな弟。大平さんにも、自然と笑みがこぼれる。

このあと自身も「すまいる号」を体験した。一見、安全そうに見える一般道だが、歩行者に接触しそうになったり、車の飛び出しがあったりと、思わぬところに危険が潜んでいる。大平さんの診断結果はいかに...?

さらにはJAのブースにて、手のひらを専用のセンサーに当てて野菜の推定摂取量を測定する「ベジチェック」に挑戦するなどし、一般来場者、JAスタッフなどと交流を楽しんだ。


○■旬の食材を味わって

JAならけんの寸田憲司次長に話を聞いた。直売所の面積は1,236m2あり、全国的に見ても最大級のまほろばキッチン橿原店。寸田次長は「出荷会員さんは1,300人おりまして、年間で70万人のお客様(レジ通過客)がいらっしゃいます。平日は近隣の奈良県民、土日には京都、和歌山、大阪あたりからも皆さん買いに来られます」と紹介する。

この地域で有名な農産物のひとつが、いわゆる大和野菜。寸田次長は「京都には京野菜がありますね。京野菜のルーツになったものが、大和野菜には多いんです。都が藤原京、平城京、平安京と移るなかで、人も作物も、京都に移っていきました」と教えてくれた。

今年のイベントは、大平萌笑さんを呼んで華やかになった。そこで、あらためてサマーフェスタの開催意義について聞いてみると「子育て中の若い家族にも来てもらえる、というのがイチバンの効果だと思います。というのも、普段、こうした直売所にお越しになる方は年齢層も高めなんです。いま世の中は物価が高いし、若い世代は忙しくてお料理をする時間も限られています。
その結果、若い人たちほど家計の助かるお手頃価格のスーパーで、お惣菜、お弁当、冷凍食品を買う、あるいは安価な外食で済ます、という流れになりがちです」と寸田次長。

そのうえで、こう続けた。「でも高いものには付加価値があります。当店では値段に見合った、新鮮で、安心安全で、栄養価の高い食材をご提供しています。市場流通ではなく、農家さんが収穫したばかりの野菜が並ぶので新鮮です。農家さんは顔も名前も出していますし、こちらで栽培履歴も全部チェックしていますので、安心安全なものしか出てきません。私が言いたいのは、ご家庭でそうした旬の素材の良さを活かした料理を出して、子どもたちに食べさせてほしい、ということなんです。舌の成長に合わせて、素材本来の味を覚えてもらえたら。地元の美味しい食材を知ることは大事ですし、またトマト、ピーマン、しいたけ、なすなど、子どもの頃は苦手でも大人になったら好きになる食材も、たくさんありますよね。子ども時代に素材の味を知っておくと、その後の人生が豊かになります。これが”食育”ということだと思うんです」。

最後は「いまJAでは、若いお客さんの掘り起こしを積極的に行っています。
今回のサマーフェスタもJAのスタッフが総動員になり、若い世代が楽しめるイベントになりました。とても良かったと思います」と、ホッとした表情で話していた。

近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら
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