北海道土産といえば、クッキーやチョコレートなど“甘いお菓子”が定番。そんな常識に新しい風を吹き込んだのが、2025年6月に発売された「ベジパイ」です。


北海道産の野菜を主役に据え、“○○と野菜”という新しい組み合わせに挑戦。プロジェクトメンバー自らが空港で販売に立ち、発売前から手応えを感じたというこの商品は、フードロス削減などサステナビリティにも配慮されています。

「甘くない北海道土産」の挑戦が生まれた背景と、広がる「&Veggie」ブランドの未来を、製造元であるエア・ウォーターアグリ&フーズの2名に聞きました。

・大西裕之氏(小樽工場 工場長)
「&Veggie」立ち上げにあたり、開発・品質管理・営業・経営企画からメンバーを集めて発足したプロジェクトのリーダーを務めた。

・村松慶幸氏(経営戦略室)
市場調査や素材の探索、広報活動、進捗管理など、プロジェクト全体の戦略面を担当。

○■北海道産の野菜が主役の新ブランド「&Veggie」

――まず、北海道限定のおみやげブランド「&Veggie」の特徴やコンセプトを教えてください。

村松氏:「&Veggie」は北海道産の野菜を主役にしたお菓子です。エア・ウォーターグループには自社農場があり、さらに道内800を超える契約農家から多様な野菜を仕入れて販売しています。

その強みを生かし、北海道野菜の魅力を最大限に引き出した土産菓子を作ろうと立ち上げたのが「&Veggie」です。ブランド名には“○○と野菜”というように、さまざまな食材と掛け合わせることで、野菜の新しい可能性を広げたいという思いを込めています。

――「&Veggie」の立ち上げにあたっては、部門横断のプロジェクトが組まれたそうですね。背景を教えてください。


大西氏:小樽工場ではすでにクッキーやキッシュ、タルトなどを作っていましたが、業務用中心で冷凍品に特化していたので、一般向けの常温商品はありませんでした。外国人観光客も含め空港が賑わう中で、北海道ブランドを生かして、個人のお客様向けに新しい販売チャネルを開拓しようと考えたのがきっかけです。

――北海道産野菜を使った土産菓子は他にもありますよね。他ブランドとの違いは?

村松氏:エア・ウォーターグループでは野菜を土から育て、加工まで一貫して自社で行っています。育てている野菜の種類も多岐にわたり、加工を通じて新しい野菜の楽しみ方をご提案できます。北海道の土産菓子はチョコレートなど甘いものが多く、野菜を使ったものは少ないので、その点も差別化になると考えています。

――どのような方々をターゲットにしているのでしょうか?

村松氏:特に20代~50代の女性に好評です。北海道の自然の恵みを生かしたお菓子というところが刺さっているのではないでしょうか。

ただ、私たちとしてはお子さまも含め、幅広い層に食べていただきたいと考えています。野菜の旨みがしっかり感じられ、栄養も摂れる一方で、野菜特有の苦みや食感がないため、野菜が苦手なお子さまも喜んで食べていただけています。

○■北海道産野菜を活用した「ベジパイ」の誕生

――第一弾商品の「ベジパイ」はどのようなお菓子ですか?

村松氏:自社農場で育てた野菜を使った一口サイズのパイです。北海道の土産菓子は甘いものが多いので、第一弾は“しょっぱい系”にしました。


「トマト×ガーリック×ベーコン」と「ブロッコリー×チーズ×ベーコン」の2種類があり、隠し味のベーコンは、100年の歴史を持つ、当社グループのサガミハムのものを使用しています。

――お酒との相性も良さそうですね。

村松氏:はい、チーズやベーコンを使用しているのでお酒にもぴったりです。野菜とベーコン、両方の旨みが出ていて、相乗効果で後を引く味わいになっています。

○■野菜の栄養が摂れ、フードロス削減にも

――「ベジパイ」開発にあたって特に力を入れた点はありますか?

大西氏:小樽工場では、お菓子やキッシュなどの生地を一から製造しています。そのノウハウを生かし、野菜やベーコンなど、グループ会社の食材を使って、常温の商品を初めて作りました。

他社で製造した冷凍生地を仕入れるのではなく、この工場で生地から一貫して製造することで、生地の鮮度を保ち、手作り感のある自然な食感に仕上げています。

――サステナビリティにも配慮されているそうですね。

村松氏:「ベジパイ」に使用している野菜パウダーは、当社グループで土から育てた野菜を、農地の太陽光発電のエネルギーで加工することで、環境負荷を抑えています。

さらに、野菜パウダーには、捨てられがちな茎や葉も入っています。栄養はしっかりあるのに、食感の問題などで捨てられてしまう部分を有効活用することで、フードロス削減にもつなげています。

こうした取り組みは、アグリ&フーズグループの事業コンセプト「おいしいを、いつまでも、どこまでも。」にも通じています。
エア・ウォーターグループで取り組む『地球の恵みの価値を最大限に高めてお客様に届ける』その思いをグループの食品工場として、この「&Veggie」にもしっかり込めていきたいです。

○■自ら売場に立って感じた手応え

――「ベジパイ」の開発から発売までの過程で、印象に残っているエピソードはありますか。

村松氏:1月に新千歳空港でテスト販売を行った際、私や大西も含め開発メンバーが自ら売り場に立ちました。初めての経験で緊張しましたが、お客様と直接やりとりできたのは大きな学びでした。

印象的だったのが、「コンセプトが目新しい」と北海道在住の方にも好評だったことです。テスト販売で購入された方が本発売後に再び買いに来てくださり、「おいしかった」と言っていただけたのは本当に嬉しかったです。

――本発売後のお客様からの反響をお聞かせください。

大西氏:北海道の土産菓子は甘いものが多かったので、「しょっぱいのが嬉しい」という声が多かったです。また、一口サイズで少しずつ食べられるのも好評です。

村松氏:購入者の3分の2が女性ですが、「ベーコンの旨みがあって食べ応えがある」と、男性にも好評です。新発売という目新しさもあり、修学旅行の高校生も買ってくれています。

○■広がる「○○と野菜」の可能性

――今後の「&Veggie」ブランドの展開について教えてください。


大西氏:現在、第2弾を開発中です。せっかく立ち上げた「&Veggie」というブランドですから、継続的に展開し、知名度を高めていくことが第一だと考えています。そのためには、自社グループの北海道産野菜は欠かせません。

今回はしょっぱい系でしたが、野菜と果物、野菜とチョコレートなど、組み合わせの可能性は無限大です。ブランド名に“○○と野菜”という意味が込められているからこそ、今後も多彩な商品を生み出していければと思います。

村松氏:「野菜の可能性を追求する」という点では、制限を設けずに挑戦していきたいと考えています。その中でも、食べて優しさを感じていただけることを大事にしていきたいですね。また、環境への取り組みについても、しっかりと発信していきたいと考えています。

――最後に読者へのメッセージをお願いします。

大西氏:エア・ウォーターグループは北海道産の野菜を扱い、生産工場も小樽にあります。また、小樽工場で作るケーキもおいしいので、その技術を生かし、北海道の野菜とともに皆さまにお届けできるのは大きな喜びです。メイドイン北海道の商品として、野菜と北海道を軸に展開していければと考えています。


村松氏:旅行で北海道を訪れた際には「&Veggie」を手に取って、野菜の香りや澄んだ空気と一緒にインスタなどで紹介してもらえたらうれしいです。

春奈 はるな 和歌山出身、上智大学外国語学部英語学科卒。信念は「人生は自分でつくれる」。2度の会社員経験を経て、現在はフリーランスのライター・広報として活動中。旅行やECをはじめとした幅広いジャンルの記事を執筆している。旅をこよなく愛し、アジア・ヨーロッパを中心に渡航歴は約60ヵ国。特に「旧市街」や「歴史地区」とよばれる古い街並みに目がない。ブログ「トラベルホリック~旅と仕事と人生と~」も運営中。 この著者の記事一覧はこちら
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