大阪・関西万博の見所のひとつ、大阪ヘルスケアパビリオン。「REBORN」をコンセプトに掲げたこのパビリオンでは、健康や医療に関する最新技術や取り組みが紹介されている。
その一角、「ミライと食の文化ゾーン」で来場者の関心を集めているのが、エア・ウォーター主催の「ミライのジェラート作り&サイエンスショー」だ。8月26日から30日までの期間限定で開催されるこのイベントでは、-196℃の液体窒素と遠隔操作ロボットを駆使した「未来の調理」が披露され、多くの来場者の視線を釘付けにした。
○■-196℃の液体窒素と遠隔操作ロボットでジェラート作り!
「ミライのジェラート作り&サイエンスショー」は、液体窒素の性質を学ぶサイエンスショーから始まった。
まずは液体窒素の威力を示すべく、バラの花を浸けてみると……
たちまち白い冷気が立ち込め、バラの花は瞬時に凍りつき……
軽く握っただけで粉々に! その圧倒的な冷却能力に、会場からは驚きの声が上がった。
そして、いよいよジェラート作りの実演へ。このイベントの主役は、エア・ウォーターの技術の結晶である液体窒素と、“アーム型”のロボットだ。このロボットを操作するのは現場スタッフ……ではなく、遠方からリモートで参加した辻調理師専門学校の学生たち。未来的だ。
辻調理師専門学校の生徒がスクリーン越しに操作し始めた途端、目の前のロボットが滑らかに動き出す。
ロボットはまず、ジェラートのベースとなる北海道産牛乳と北海道産メロン果汁入りドリンクをボウルに注ぎ入れていく。こちらは飲料の製造・販売を手がけるゴールドパックの製品だそうだ。
そして、いよいよロボットが-196℃の液体窒素をボウルに注ぎ込むと……
白い冷気が一気にキッチン全体に立ち込める! 瞬時にドリンクが凍りつき、あっという間になめらかなジェラートへと変化していく。
ロボットはさらに、スイーツ製造を手がけるプレシア社が製造したタルト生地の端材を追加。フードロス削減の一環でもあるようだ。ひとまずこれで完成ではあるのだが……
ジェラートの出来を確認したスタッフさんが「ちょっとまだ柔らかいかもしれません」と報告。これを受け、辻調理師専門学校の生徒はさらに液体窒素400ccを遠隔で追加。今度こそ完成~!
完成したジェラートは当然、来場者の皆様に振る舞われたわけだが、ありがたいことになんと取材陣も試食させていただけることに!
一口食べてみると、まずそのなめらかな舌触りに驚かされる。ついさっきまで液体のドリンクだったものが、液体窒素による瞬間冷凍で一瞬にしてジェラートになるとは……改めてビックリ。ジェラートは素材本来の旨味、風味が閉じ込められており、濃厚ながらも後味はすっきりしている。アクセントに加えられたタルト生地のサクサク食感も非常にいいコントラストを生み出していた。
ちなみに、このジェラートの保冷には、同じくエア・ウォーターが大阪・関西万博の「未来社会ショーケース事業」で実証実験を行っている「地球の恵みステーション」で回収したCO2から製造したドライアイスを使用しているという。まさに、グループ全体の技術と製品、そしてサステナビリティへの意識が結集した一品である。
取材に訪れた8月27日には、スペシャルゲストとして、エア・ウォーター所属のアスリート社員であり、フェンシング(フルーレ)日本代表の上野優斗選手と上野優佳選手が登場した。
「ミライのジェラート作り&サイエンスショー」は、一般的な食のイベントとは一線を画していた。液体窒素という極低温技術、遠隔操作を可能にするロボット工学、そして食の専門知識などがバランスよく融合した、未来の食文化を垣間見るかのような体験だった。
離れた場所にいる調理師が、現地のロボットを操作して料理を提供する。そんなSFのような世界が、すぐそこまで来ていることを実感させられる。この技術がさらに発展していくことで、料理人の地域的な偏りの解消や宇宙空間での調理など、その可能性は無限に広がっていくに違いない。
エア・ウォーターは、大阪ヘルスケアパビリオン内の常設店舗「AIR WATER NEO MIX STAND」でも、ロボットが作る「ミライのミックスドリンク」を提供し、好評を博している。今回の期間限定イベントは、いわばその発展形に位置づけられる。
産業ガスから始まり、医療、農業、そして食へと事業領域を広げてきたエア・ウォーター。その技術力と未来へのビジョンの結晶が「ミライのジェラート作り&サイエンスショー」である。このイベントはまもなく終わってしまうが、大阪・関西万博に足を運んだ際にはぜひ、「AIR WATER NEO MIX STAND」で「未来の調理」を体験してみてはいかがだろうか。