「都心では物価が高いので、生活していくのが大変だ」または「地方は物価が安いので、生活費が都心に比べてあまりかからない」と世間で言われていることは、本当なのでしょうか。
お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。
連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながら、お金に関する情報などをお伝えいたします。
マイホームを購入するための資金を借りることで賄う方法として、住宅ローンがあります。住宅ローンには、銀行などの民間金融機関の住宅ローン、公的融資である財形住宅融資、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して行う住宅ローンである「フラット35」などがあります。今回は、「フラット35」という住宅ローンの概要および「フラット35」のうち、地方移住者等向けの金利優遇プランの内容を見てみましょう。
○■フラット35って何?
フラット35とは、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する、最長35年の全期間固定金利の住宅ローンです。
○■フラット35の概要
<主な申込資格>
・申込時の年齢が原則70歳未満
・年収に占めるすべての借入れの年間合計返済額の割合(総返済負担率)が次の基準を満たしていること
年収400万円未満の場合:30%以下
年収400万円以上の場合:35%以下
<資金使途>
・申込みした本人またはその親族が住むための新築住宅の建設や購入資金、または中古住宅の購入資金
なお、フラット35は、投資用物件の取得資金に利用することはできない
<借入対象となる住宅(一部抜粋)>
・住宅の床面積が次の基準に適合する住宅
一戸建ての場合:70㎡以上
マンションなどの共同住宅の場合:30㎡以上
なお、店舗付き住宅などの併用住宅の場合は、住宅部分の床面積が全体の2分の1以上であることが必要である
・敷地面積の要件はない
<借入額>
・100万円以上8,000万円以下で、建設費または購入価額の100%以内
<借入期間>
・原則15年以上35年以内(完済時の年齢上限は80歳)
<借入金利(一部抜粋)>
・全期間固定金利(固定金利は、借入時から返済終了時まで金利が変わらない)
・申込時ではなく、資金受取時の金利が適用される
・取扱金融機関によって異なる
<保証人・保証料>
・必要なし
<融資手数料・物件検査手数料>
・融資手数料は、取扱金融機関によって異なる
・物件検査手数料は、検査機関または適合証明技術者によって異なる
<火災保険>
・火災保険への加入は必須であり、火災保険料は、申込者の負担となる。なお、地震保険への加入は任意である
<繰上返済>
・一部繰上返済の返済額は、インターネットサービス「住・My・Note」を利用する場合は10万円以上、取扱金融機関の窓口を利用する場合は100万円以上
・手数料は必要なし
○■【フラット35】地域連携型(地域活性化)
【フラット35】地域連携型(地域活性化)とは、UIJターン、コンパクトシティ形成、防災・減災対策、地域産材使用、景観形成、グリーン化などの地域活性化に積極的な地方公共団体と住宅金融支援機構が連携し、住宅取得に対する地域公共団体による財政的支援とあわせて、フラット35の借入金利を一定期間引き下げる制度です。
金利引下げ期間:当初5年間
金利引下げ幅:年▲0.25%
○■【フラット35】地方移住支援型
【フラット35】地方移住支援型とは、地方公共団体による「移住支援金」の交付とセットでフラット35の借入金利を一定期間引き下げる制度です。
金利引下げ期間:当初5年間
金利引下げ幅:年▲0.6%
なお、「移住支援金」の受給要件などの詳細は、内閣官房・内閣府総合サイト地方創生2.0(地方創生移住支援事業の概要)で確認できます。
また、【フラット35】地域連携型と【フラット35】地方移住支援型は、併用することはできません。
○■終わりに
フラット35の借入金利は、取扱金融機関によって異なりますが、金融機関が提供する最も多い金利は、2025年8月現在、返済期間15年~20年の場合は年1.48%、21年以上35年以内の場合は年1.87%となります。例えば、借入金利が年1.87%と決まった場合、地方移住者等を対象に金利が優遇されるプランの場合、【フラット35】地域連携型であれば、当初5年間は、年1.62%(1.87%-0.25%)となり、【フラット35】地方移住支援型であれば、当初5年間は、年1.27%(1.87%-0.6%)となります。
フラット35は全期間固定金利であるため、資金の受取時に、返済が終わるまでの借入金利と返済額が確定するため、返済額がずっと変わらず、長期的に安定した資金計画を立てることができます。
高鷲佐織 たかわしさおり ファイナンシャル・プランナー(CFP 認定者)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級。 資格の学校TACにて、FP講師として、教材の作成・校閲、講義に従事している。過去問分析を通じて学習者が苦手とする分野での、理解しやすい教材作りを心がけて、FP技能検定3級から1級までの教材などの作成・校閲を行っている。また、並行して資産形成や年金などの個人のお金に関する相談を行っている。資格の学校TAC講師(プロフィール一覧)。一般社団法人理想の住まいと資金計画支援機構(相談員)。 この著者の記事一覧はこちら