神奈川県相模原市では、相模川の清らかで豊かな水を称え「潤水都市さがみはら」として市の魅力を内外にアピールしている。都内では、そんな相模原市ゆかりの酒造メーカーと関係者が集う「潤水都市さがみはらの酒」試飲交流会が開催された。
○酒造6社が集結
試飲交流会には6社の酒造メーカーが参加した。久保田酒造(日本酒)は、弘化元年(1844年)創業の老舗酒蔵。丹沢山系の湧水を用いた日本酒「相模灘」を製造している。基本に忠実な吟醸造りをベースにしながら、穏やかに香る自然な吟醸香で、米の旨味を生かしたバランスの良い食中酒をつくっている。歴史を守りながら、常により高い次元の美味しさを追求する次世代の酒蔵として注目度も高い。
清水酒造(日本酒)は県内で最も古い歴史をもつ蔵のひとつで、宝暦年間(1751年)の創業。五代目定一郎の時代に、より良質な水を求めて現在の緑区中野に移った。八代目の巖(いわお)にちなみ、その水をふんだんに使った「巖乃泉(いわおのいずみ)」を銘柄に展開する。
Kentoku Winery(ワイン)は、大森産業が運営するワイナリー。2015年ごろから苗木の定植を始め、現在は約7,000平米の敷地で欧州品種を中心に10品種の醸造ブドウを栽培している。2023年には自社栽培・自社醸造による市内唯一の「相模原ワイン」と地産フルーツを用いたフルーツワインの生産をスタートさせた。
久保田酒造、清水酒造はともに古くからこの土地(当時は津久井郡と言った)で酒造を営んできた。久保田酒造の蔵人 太田将志氏は「酒蔵の背後に裏山があるんですが、そこに横井戸を掘って仕込みに使う水を得ています。ホタルが見れたり、わさびが採れたりと、とにかく水の素晴らしい土地です」とし、清水酒造 代表取締役の清水圭太氏は「豊かな水源を持っていることは、地元住人の誇りです。我々のご先祖が残してくれた貴重な遺産を、子どもの代、孫の代にも引き継いでいければ」と話す。
伊勢屋酒造(リキュール)では、イタリア発祥のリキュール「アマーロ」を日本で製造する。宿場町・小原に現存する築100年の古民家を再生し、日本の土と植物の魅力を生かした独自のボタニカルレシピで仕上げている。ブランド名は「スカーレット」。古典的な製法を守りながら、仕込みから瓶詰めまで一貫してすべてハンドメイドで行っている。
Jazz Brewing Fujino(クラフトビール)は、佐野川が流れる静かな山あいにあるクラフトビール醸造所。地域の協力により2018年5月からこの地で醸造している。麦芽の風味、ホップの苦み、少ない時間煮だしたホップの香りのバランスが醍醐味の「AMP UP IPA」(アンプアップアイピーエー)と、藤野産の茶葉を香りづけに使い、キリっとした苦みが特徴の「VOX POP」(ボックス ポップ)の2種類を提供する。
ケンズブルワリー(クラフトビール)は2022年5月に相模原市中央区で開業し、2024年に醸造免許を取得した醸造所 兼タップルーム。
伊勢屋酒造 代表取締役の元永達也氏は「これは世界共通のこととして、やはり美味しいお酒をつくるには美味しい水が必要です。私はフランスとスイスの国境近くに住んでいたことがありますが、相模原の風景を見ていると、あの頃のことを思い出します。また、相模原は都心から近いのも良いですね。うちは年間で1,000人くらいが来店する小さな酒造ですが、東京からのアクセスが良いことがプラスに働いています」、Jazz Brewing Fujino 代表の山口解氏は「水の硬度は55~60mg/Lほど、pHは7.2くらい。この土地の中硬水は日本の料理、野菜によく合います。ビールをつくるにあたっても、地元の植物、ホップを入れたときに親和性を感じるんです」と解説する。
これを受けて、相模原市長の本村賢太郎氏は「田舎すぎず都会すぎず、水も空気も美味しいところです。私たちは、これを"都市と自然のベストミックス"と言っております。酒を飲むなら相模原です。これからも、皆さんをワクワクさせる相模原にしていきます。たくさんの人に、足を運んでもらえれば幸いです」と呼びかけた。
近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら