『料理の鉄人』など数々の名番組を手掛けてきた放送作家・脚本家の小山薫堂さんと、人気演劇ユニット「TEAM NACS」のリーダーで“農業の伝道師”こと森崎博之さん。“食”に造詣の深い二人が、“素適な人と料理に出会う旅”をテーマにグルメの宝庫・札幌を巡る『ふくあじ旅のススメ ~札幌編~』が、J:COMチャンネルにて2025年9月15日18時より放送されました。
現在、Jテレ公式YouTubeや「ど・ろーかる」アプリでの配信、J:COMチャンネルやJ:テレでの再放送が行われています。

番組では、定番の観光スポットから農園レストランまで、さまざまな場所を訪れて食の大切さを見つめ直す二人の姿が収められています。マイナビニュースではその徹底密着取材を敢行。ここでは、ロケ風景の写真とともに、お二人の“ふくあじ旅を”レポートしていきます。

北海道の“食”の魅力を誰よりも知る森崎さんを迎えて旅がスタート

ただおいしいだけではなく、食べたあと満“腹”になり、お“ふく”ろの味を思い出し、幸“福”感に包まれる……そんな料理=ふくあじを提供する全国各地のお店を訪れて、人々を笑顔にしてくれる味やお店にまつわるエピソードを紹介するJ:COMチャンネルの人気番組『ふくあじ』。

その特別編となる今回の『ふくあじ旅のススメ ~札幌編~』は、「ふくあじ」の名付け親であり番組監修を務める小山薫堂さんが、札幌の大通公園を訪れるところからスタート。待ち合わせ場所に到着した小山さんが番組のゲストの姿を求めて辺りを見回すと、思わぬところから声が掛かります。

その声のする方に目を向けると、なんと大通公園名物とうきびワゴンの中で、とうきび(とうもろこし)を焼く俳優の森崎博之さんの姿が! 森崎さんは安田顕さん、戸次重幸さん、大泉洋さん、音尾琢真さんとともに結成した演劇ユニット「TEAM NACS」の主宰を務める一方で、数多くのテレビドラマやバラエティなどに出演。また北海道放送の農業をテーマにした教養番組『あぐり王国北海道NEXT』の司会など、地元・北海道の農業や食の素晴らしさを伝える“農業の伝道師”としても活躍しています。

そんな森崎さんが差し出した焼き立てのとうきびを頬張りながら、その自然な甘みと醤油の香ばしさに相好を崩す小山さん。北海道ならではの味を堪能した二人は、小山さんが「どうしても行きたかった」と語る、すすきのの定食屋「蜂屋」に向かいました。
すすきのの老舗定食屋で出会った味とは?

レトロな路面電車や多くの人々が行き交う繁華街すすきの。
その中心部の交差点からほど近くにあるビルの1階に、定食屋「蜂屋」はあります。ビルの中に入ると、街の賑わいが嘘のように遠のき、まるで昭和にタイムスリップしたかのような懐かしい雰囲気に。

お店を切り盛りしているのは、店主の角富雄さんとその妻・千鶴子さんのご夫婦。1968年に千鶴子さんのご両親が開業し、それ以降60年近くもの間、この場所で営業を続けているそうです。

店内は、カウンター席のみで5~6人も入るとギュウギュウになってしまうほど。それだけにお客さんとの距離感も近く、常連の方も多いのだとか。店名の「蜂屋」にも、巣に戻る蜂のように、お客さんに何度も再訪してほしいという想いが込められていると言います。

メニューは定食やお茶漬け、おにぎりなどのほか、焼き魚や煮魚、炒め物、卵焼き、ハンバーグなどのバラエティに富んだお惣菜が用意されており、テイクアウトもできるそう。小山さんと森崎さんは、それら豊富なメニューから、8時間丁寧に煮込んで骨までやわらかいという「さば味噌」や、とろけるような煮たまごが丸ごと入った大人気の名物「煮たまごおにぎり」、創業当時から変わらない昔ながらの味が楽しめる「カレーライス」などを注文。二人ともほっこりとした懐かしそうな表情で口に運び、おいしそうに味わっていました。

学生時代を札幌で過ごした森崎さんですが、このお店を訪れるのは今回が初めてとのことで、「知っていたら通っていたのに」と少し悔しそう。小山さんは、ご夫婦のおおらかな人柄が伺えるお惣菜の価格設定に「儲けが出ているのか」と心配しながら、まさしく“ふくあじ”な品々に満ち足りた表情でした。


北海道の自然の恵みを味わえる農園レストラン

次に二人が向かったのは、北海道の自然の恵みをそのまま味わえるという、農園に併設されたフレンチレストラン「AGRISCAPE(アグリスケープ)」。シェフの吉田夏織さんが、敷地内で野菜や果物、家畜などの農産物を育てており、採れたての食材を調理して提供しているのだそうです。

森崎さんは、自身がMCを務めた“食”と“映画”のフェス「北海道フードフィルムフェスティバル」で吉田さんに会い、同店の存在を知ったとのこと。フェスでは吉田さんを含む4人の料理人に密着したドキュメンタリー映画『北の食景』が上映され、その料理に対する想いやお店のコンセプトなどに共感したそうで、今回小山さんにも「ぜひ味わってほしい」と思ったのだとか。

レストランで食事をする前に、小山さんと森崎さんはその農園での作業を見学させてもらうことに。そこで山の中腹にある畑を訪れたところ、吉田さんが「一緒に旬のニンニクを収穫してみませんか?」と提案。せっかくなので体験することにした二人は、吉田さんの説明を聞きながらシャベルを手にニンニクを掘り起こし始めました。しばらくしてコツを掴んだ二人は、ノリノリで作業に没頭。傷つけないよう丁寧に掘り起こしては、収穫したニンニクを手に掲げて歓声を上げていました。

続いて、ビニールハウスに移動してズッキーニなどの収穫を体験したあと、豚舎に赴き飼育されている黒豚とご対面。吉田さんの呼びかけに応じて小屋の奥から姿を現し水を飲む姿を眺めながら、二人は改めて“いのち”の尊さに思いを巡らせている様子でした。

敷地内を移動してレストランに到着した小山さんと森崎さんは、豊かな緑に囲まれたテラス席へ。
先ほどのニンニクやズッキーニのほか、ブルーベリーやブロッコリーなどが収穫された状態のまま盛られたカゴを前に吉田さんの説明を受けながら、「これがどんな料理になるのか楽しみ」とワクワクした表情です。

まず登場したのが、レタスとベビーリーフ、エディブルフラワー、ハーブなどを合わせたサラダ。いずれも無農薬栽培によるもの。小山さん曰く「ふくあじ史上、もっともおしゃれな一皿」で、一同その彩りの美しさに魅せられた様子でした。森崎さんは「柔らかいのにしっかりと噛みごたえがあって、存在感がすごい。本当のサラダですね」と絶賛。吉田さんによると「ベビーリーフは辛味や酸味などのバランスを考えて種類を選んでいます。今年は雨が少なく、こんなに水やりしたことがないというくらい水を上げて育てました」とのことで、小山さんも森崎さんも、過酷な夏を乗り切った生命のエネルギーをしっかりと味わっているようでした。

続いては、花ズッキーニの中に黒豚のソーセージを詰め、ニンニクのソースを添えた一品。鮮やかな緑のニンニクの芽や赤いパプリカのピューレで彩りを加えており、見るからにおいしそう。吉田さんによると、ニンニクのソースは「シンプルにミルクで煮込んで旬のニンニクの新鮮な香りを引き立てた」のだそう。もちろん、ズッキーニやニンニクは先ほど収穫したものを使用。
一口食べた小山さんが「味やシャキシャキ感に生命力を感じますね。まるで“いのち”のバトンを受け取っているかのよう」と感想を語ると、森崎さんも思わず唸りながら「花のフワーッとした儚げな感じに、ソーセージの強さ。ニンニクのソースもうまい! 野菜の持つ食感が全部本物」と食レポ風に表現していました。

絶景を楽しんだあとTEAM NACSファンの聖地へ

次に二人が向かったのは、観光スポットとして知られる藻岩(もいわ)山。山頂に登る前に、森崎さんの案内でふもとにある和菓子店「藻岩山だんご」に立ち寄ります。お店の名物は、北海道産の大豆を使用した豆腐と国産米の白玉粉で作った豆腐白玉に、二度焙煎きな粉をたっぷりかけた「一寸豆腐白玉」。そのきな粉の香ばしさ、もちもちした豆腐白玉の噛みごたえを楽しんだあと、それぞれ気になった串だんごを購入して店を後にし、ロープウェイに乗っていざ山頂へ向かいます。

宝石を散りばめたような札幌の夜景を楽しむのに人気の藻岩山ですが、日中の景色も感動もの。山頂の展望台からは、札幌の街並みはもちろん、遠くの山々や石狩湾までを一望できます。その360度の大パノラマを眺めながら、先ほど買っておいた串だんごを頬張る小山さんと森崎さん。北海道出身の森崎さんにとっては“故郷”を改めて感じられる場所のようで、目の前に広がる景色を指差しながら、小山さんに自身の“原点”について語る姿が印象的でした。

串だんごとともに絶景を味わったあと、二人が向かったのは、その森崎さんの“原点”であり“ふくあじ”でもある洋食屋さん「カリー軒」。
森崎さんらTEAM NACSメンバーが学生時代から足繁く通っているお店で、ファンには聖地として知られる場所です。森崎さんが「おじちゃん」、「おばちゃん」と呼んで慕うご夫婦とその息子さんが、今も変わらずお店を営んでいます。

カレーのほか、ハンバーグやスパゲッティー、生姜焼きなどさまざまなメニューが用意されていますが、二人が選んだのはその中でもいちばん人気だというスタンダードな「ハンバーグ」。肉厚のハンバーグにサラダとナポリタンを添えたボリュームたっぷりの一品で、作り置きせずオーダーを受けてから手作りするのがおいしさの秘密といいます。

肉ダネの成形にも工夫があり、肉汁がギュッと詰まっているのも特徴で、ナイフを入れるとその肉汁がたっぷり溢れて食欲をそそります。小山さんは、ジュワッと出てくる肉汁に大喜び。森崎さんも学生時代を支えてくれた懐かしい味を、存分に楽しんでいる様子でした。

ちなみに森崎さんにとってカリー軒は、STVラジオでタレントデビューするきっかけを作ってくれた恩人でもあるのだそう。またTEAM NACSのミニフィルムや芝居のチラシの撮影などにもたびたび協力していただいているそうで、店内には森崎さんが人生で初めて書いたというサイン色紙も飾られていました。そんな森崎さんのエピソードを聞いた小山さんは、「ふくあじの“ふく”は福を呼ぶ意味もあるんですよ。(カリー軒は)まさに森崎さんにとっての“ふくあじ”なんですね」と頷いていました。

小山さんと森崎さんにインタビュー! 読者へのメッセージも

最後に、小山さんと森崎さんに今回の『ふくあじ旅のススメ ~札幌編~』収録を終えた感想を伺ってみました。


──今日1日を振り返っての感想をお聞かせください。

小山:森崎さんが“農業”に精通していて、生産者の気持ちを持っていらっしゃることもあり、“食”を通して感謝の気持ちを自分の中に育んでいく「ふくあじ旅」になったと思います。「懐かしさ」や「人情」はこれまでもありましたが、「感謝」というベクトルは今回がいちばん強かったですね。

森崎:(出演番組などで)北海道のおいしいお店の紹介をする機会があるのですが、その教科書にしているのが小山薫堂先生。憧れの先生にお会いできたことに加え、自分の馴染みのお店を一緒に訪れ、札幌の“ふくあじ”をいくつも紹介できたことに猛烈に感動しています。夢が叶ったという思いですね。

──今回訪れたお店の印象を教えてください。

小山:最初に訪れた「とうきびワゴン」のとうきびは、今まで食べた焼きとうもろこしの中でいちばんおいしかったです。大通公園という場所で立ち食いしたからというのもあるのかもしれませんが、「焼きとうもろこしってこんなにおいし買ったんだ」と再発見できました。

森崎:とうきび自体は年中出ているのですが、旬の季節以外は冷凍保存したもの。畑から採れたものをそのままお出しできるのは今の時期だけなんですよ。ただ、今回(収録が行われた7月中旬)はハウス栽培したもので、もう少しすると路地ものが出ます。そのおいしさもぜひ味わってほしいですね。

小山:それは悔しいですね。また来ないと!

森崎:そのとうきび含め、今回紹介させていただいたのはすべて“本物”。料理というものを突き詰めていくと素材重視になっていきますが、その素材を自分たちで作って責任を持ってお客様にお出しするんだというのが「AGRISCAPE」でした。間違いなく“本物”ですよね。

小山:料理のおいしさはもちろんですが、野菜などを通して“いのち”を考えられるのが、すごくいいお店だと思いました。料理人としての生き方や視座が非常に高くて、これからの日本の料理界を牽引していってほしい。プライベートでも改めて行ってみたいですね。

森崎:「藻岩山だんご」の北海道産大豆を自分たちで焙煎して作ったきな粉や、食感までしっかり考えている豆腐白玉も“本物”ですし、「蜂屋」は僕は今回初めてだったのですが、お店を知ることができてよかったです。

小山:「蜂屋」は、味がおいしいのはもちろんですが、あの厨房のスペースであれだけ多彩なメニューを提供していることにも驚きました。

──森崎さんが学生時代から通っている「カリー軒」はいかがでしたか?

小山:想像以上にハンバーグがおいしかったです。お店の方の人柄や愛情あふれる接客も素敵ですし、いつも来たくなるという気持ちがわかりますね。お店とお客さんのやりとりというか、キャッチボールが大切なんだな、それが“ふくあじ”なんだなということを改めて教えられた気がします。

森崎:自分にとっては“実家”同然のお店。人に紹介するときも「いいだろう、うらやましいだろう」と思ってしまいます。味もメニューもお店の人も変わらず、ずっと自分の“ふくあじ”でいてくれて本当に嬉しいなと改めて思いました。

──北海道の“人”の魅力って、どこにあるのでしょうか?

小山:今回の旅を通して感じたのは、北海道の人はおおらかだということですね。広い大地に暮らしていることもあるのか余裕があって細かいことをあまりぐちゃぐちゃ言わないですし、人の悪口を言う人が少ない印象もあります。

森崎:僕は悪口めっちゃ言いますけど。それでテレビに出ている感じがありますし(笑)。ただ、悪口といっても、仲いい同士で愛情を込めて言う“悪口”ではあるかもしれませんね。北海道の人間として、薫堂さんにおおらかだと感じていただけたのはとても嬉しいですね。

──北海道の“食”の魅力についても教えてください。

森崎:今回の“ふくあじ旅”、考えてみたら北海道らしい食べものって、とうきびくらいなんですよね。ジンギスカンやラーメン、スープカレーのような北海道らしいものじゃなく、どこにでもあるような食べものでも紹介したいお店は山ほどあって、それも北海道の魅力や奥深さと言えるのかもしれません。

──最後にマイナビニュースの読者にメッセージをお願いします。

小山:北海道に行くというと、森崎さんが言うように「ジンギスカンやラーメン食べなきゃ」となりがちですよね。それもひとつの旅の楽しみ方ではありますが、(お店に集まる)人に会いに行くつもりで食べたいものやお店を探してみてほしいなとも思います。今までの“ふくあじ”でも北海道のお店をたくさん紹介しているので、ぜひそれも参考にしながら行き先を探してみてください。

森崎:今回、僕は憧れの薫堂さんに会えて一緒にお店を巡ることができて本当に嬉しかったです。願って頑張っていれば、いつか憧れの人に会えるんだ、夢が叶うんだというのが、僕からのメッセージです!
編集部おすすめ