キリンビールは9月30日に『キリン本格醸造ノンアルコール ラガーゼロ』を発売する。ノンアルコール・ビールテイスト飲料の新ブランドで、関係者は「キリンビール史上最もビールに近い味のノンアルが完成しました」とアピールする。
○■本格的なビールらしさを追求
本商品の開発に際して、キリンビールでは初めて“脱アルコール製法”に挑戦した。開発期間は4年にもおよんだという。キリンビール マーケティング部の木村正一氏は「お客様が求める『本当にビールらしいノンアル』をつくることの難しさに直面しました。そこで立ち返ったのが、キリンの原点であるラガータイプのビールです」と説明する。
キリンビールでは「お酒の未来を創造し、人と社会に、つながるよろこびを届け続ける会社となる」ことを目指している。責任ある飲酒の取り組みの一環として、今後は商品ラインナップにおけるノンアル・低アルの構成比も増やしていきたい考え。直近では、ノンアル商品の“おいしさへの新しい挑戦”の第1弾として、ノンアルコールチューハイの新商品『キリン 氷ゼロ(ひょうぜろ)スパークリング シチリア産レモン』を8月26日に発売した。そして第2弾が『ラガーゼロ』という位置づけになっている。
木村氏によれば、消費者はノンアルコールビールに「本格ビールらしさ」「爽やかリフレッシュ」などを求めているという。そこで、本格ビールらしさ=ラガーゼロ、爽やかリフレッシュ=キリン グリーンズフリーが担う、と説明する。
「ラガーゼロの本格的なおいしさを通じて、ノンアルカテゴリを『仕方なく飲むもの』ではなく、『日常生活で積極的に取り入れたくなるもの』に進化させていきます」と木村氏。発売期からプロモーション活動を積極的に展開し、TVCM、デジタル広告、店頭広告、SNS発信、交通広告(JR東日本・西日本)などを通じて露出を増やしていきたい考え。
○■史上最大の設備投資も
続いてキリンビール マスターブリュワーの田山智広氏が、新商品のポイントについて説明した。そもそもノンアルコール・ビールテイスト飲料の製法は「調合」か「脱アルコール」に分かれる。調合はアルコールを生成せず(発酵させず)、独自の手法で味覚を調整してビールに似た味をつくる。これに対して脱アルコールでは、本物のビールをつくってからアルコールを抜く。田山氏は「ラガーゼロで選択したのは、脱アルコール製法です。アルコール度数0.00%のノンアルをつくるために、技術的なハードルをいくつも超える必要がありました」と振り返る。
本来、ビールの“キレ”は、発酵・熟成の段階で出てくるもの。このため、調合でつくったノンアルビールにキレを出すことは難しく、この点においては脱アルコール製法にメリットがある。ただ脱アルコール製法には、蒸留の段階で高いハードルが存在している。「本物のラガービールをつくった後で、蒸留して脱アルするわけですが、このときエタノール(アルコール)に似た成分まで一緒に取り除かれてしまいます。したがって、ベースとなるビールをどんな原料でつくったら良いか、試行錯誤が続きました」と田山氏。
開発に際しては、大掛かりな設備も必要となった。そこでキリンビールでは同社のノンアル商品史上最大となる数十億円の設備投資を行い、実に4年もの歳月をかけてラガーゼロを完成させた。
完成した商品について、田山氏は「麦の旨みとホップの爽快な香り・苦みのバランスがとても良いです。飲みごたえがありながら後キレの良い、キリンビールのノンアル史上最もビールに近いおいしさに仕上がりました。ラガーゼロの完成で、私自身の食生活まで変わりそうです」と高く評価する。また、おすすめのペアリングについては「唐揚げ、餃子、お寿司、あとは辛いもの。麻婆豆腐にもよく合います」と紹介した。
近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。