嵐のあとに虹がかかるように、相場の世界でも大きな下落のあとに力強い反発が訪れることがあります。2025年春の「トランプ関税ショック」で一時は大荒れとなった株式市場も、半年足らずで最高値を更新しました。
その反発局面をうまく捉えたファンドも登場しています。

そこで今回は、SBI証券投資情報部のシニア・ファンドアナリスト・川上雅人さんに、ショック後の反発力を示した直近6ヵ月の好成績ファンドを紹介します。

* * *
トランプ関税ショック後の反発力に注目!?

2025年のマーケットを振り返ると、3月下旬から4月上旬にかけて米国の関税政策に対する不透明感、いわゆるトランプ関税ショックなどから世界の株式市場は大幅下落となりましたが、その後は米関税政策に対する悲観論の後退や米利下げ観測の高まりなどから回復基調となっています。

米国の代表的な株価指数であるS&P500は6月下旬に史上最高値を更新しました。日本の株式市場の全体の値動きを表すTOPIX(東証株価指数)についても7月下旬に史上最高値を更新し、8月は多くの国の株価指数が上昇基調を継続する展開となりました。さらに直近では、2025年9月19日にもTOPIXは年初来高値を更新しています。

年初来の代表的な株価指数や為替レートの値動きを比較したものが図表1となります。

反発局面では、業績拡大期待銘柄に注目

トランプ関税ショックで年初からの下落が大きかった日米の株価指数は反発力が継続しました。一方で投資信託の基準価額(投資信託1口あたりの価格)の計算に使われるドル円TTM(銀行間取引の基準となる為替レート)は、トランプ関税ショックによる下落後の反発は限定的だったことが分かります。

こうした投資環境を踏まえて、今回は2025年の2月末から8月末までの6ヵ月リターンに着目して、大きく上昇したファンドをチェックします。

マーケットに大きなショックが起こった直後は、金融市場全体が混乱し、ほぼ全ての株式が大幅下落となりますが、その後の反発局面は今後の業績拡大期待が大きい銘柄ほど大幅に上昇する傾向があります。こうした点を踏まえると、直近の6ヵ月好成績ファンドは業績拡大期待が大きい銘柄を組み入れているファンドとして注目に値すると考えます。


SBI証券取り扱いのNISA・成長投資枠で買える6ヵ月好成績ファンドの一覧が図表2となります。以下、6ヵ月好成績ファンド11本の特徴についてコメントします。

6ヵ月好成績ファンドの特徴は?
11位 eMAXIS Neo クリーンテック

日本を含む世界各国のクリーンテクノロジー関連企業の株式に投資を行うファンドで、S&P Kensho Cleantech Index(配当込み、円換算ベース)の値動きに連動する投資成果を目指しています。組入上位銘柄は、米国の電力機器メーカーのブルーム・エナジー、中国・上海を拠点としてポリシリコンを手掛けるダクォ・ニュー・エナジー、発電設備を提供している米国のGEベルノバ、発電機の設計・製造を手掛ける米国のゼネラック・ホールディングス、カナダを拠点として燃料電池製品の製造等を手掛けるバラード・パワー・システムズなどとなっており、組入銘柄数は30銘柄です(※)。2024年までは苦戦していましたが、直近6ヵ月はAIの普及による電力需要が拡大していることから巻き返しています。値動きの大きさ(リスクの度合い)である、標準偏差はかなり大きいファンドです。
10位 東京海上・宇宙関連株式ファンド(為替ヘッジなし)

高い技術力や競争力等を持つ宇宙関連企業の株式等に投資しています。組入上位銘柄は、パランティア・テクノロジーズ、ロケット・ラブ、エヌビディア、レアアース生産企業のMPマテリアルズ、光通信と産業用レーザー製品が主力の米国企業であるルメンタム・ホールディングスなどとなっており、組入銘柄数は64銘柄です(※)。様々な業種の宇宙関連株式に投資していることから、7位の宇宙関連ファンドと比べると標準偏差は小さくなっています。
9位 日本新興株オープン

グロース市場およびスタンダード市場等に上場されている新興企業の株式の中から、中長期的に成長が期待できる企業および業績の回復が見込める企業の株式に投資を行なうファンドです。組入上位銘柄は、グローバルセキュリティエキスパート、霞ヶ関キャピタル、精工技研、AIロボティクス、アズームなどとなっており、組入銘柄数は89銘柄です(※)。

8位 デジタル・トランスフォーメーション株式ファンド(愛称:ゼロ・コンタクト)

今後の成長が期待されるゼロ・コンタクト・ビジネス(非接触型ビジネス)関連企業の株式に投資しているファンドです。
組入上位銘柄は、ロブロックス、パランティア・テクノロジーズ、ロビンフッド・マーケッツ、マルチチャネル・プラットフォームを提供しているショッピファイ、コインベース・グローバルなどとなっており、組入銘柄数は43銘柄です(※)。6位のファンドと組入上位銘柄は似ており、1年リターンはNISA対象の全ファンドでトップクラスの実績ですが、標準偏差はかなり大きくなっています。なお、6位、7位、8位のファンドは、銘柄選定において米アーク社の助言を受けています。
7位 グローバル・スペース株式ファンド(年2回決算型)

日本を含む世界の株式の中から宇宙関連ビジネスを行なう企業およびその恩恵を受ける企業の株式に投資しているファンドです。組入上位銘柄は、小型ドローンを米軍向けに提供しているクラトス・ディフェンス&セキュリティー、衛星打ち上げや軌道上での管理サービスなどを手掛けるロケット・ラブ、小型無人航空機大手のエアロバイロンメント、情報分析ソフトウェアを開発するパランティア・テクノロジーズ、米国の衛星通信会社のイリジウム・コミュニケーションズなどとなっており、組入銘柄数は30銘柄です(※)。
6位 グローバル・メタバース株式ファンド

世界の上場株式の中から、メタバースに関連するビジネス(バーチャル世界・インフラストラクチャ・次世代インターネットの基幹技術等)を行う企業の株式に投資するファンドです。メタバースとは、「メタ(超越)」と「ユニバース(宇宙)」を組み合わせた造語で、一般にデジタル上に構築された3次元のバーチャル世界および関連サービスを指します。組入上位銘柄は、オンライン・エンターテイメント・プラットフォームを展開するロブロックス、オンライン証券のロビンフッド・マーケッツ、コインベース・グローバル、メタ・プラットフォームズ、リアルタイム3Dコンテンツの開発・運営・収益化を支えるプラットフォームを提供するユニティ・ソフトウェアなどとなっており、組入銘柄数は39銘柄です(※)。1年リターンはNISA対象の全ファンドでトップクラスの実績ですが、標準偏差は大きくなっています。
5位 SBI日本小型成長株選抜ファンド(愛称:センバツ)

エンジェルジャパン・アセットマネジメントによる企業調査力を活かして有望企業を厳選しているファンドです。組入上位銘柄は、守谷輸送機工業、ワンキャリア、スマートドライブ、INTLOOP、網屋などとなっており、組入銘柄数は47銘柄です(※)。成長性の高い新興企業が上場しているグロース市場を中心に小型株の組み入れが特徴のファンドです。
2024年までは苦戦していましたが、直近6ヵ月で急速に巻き返しています。
4位 厳選ジャパン

優れた経営者の質・ビジョン、新しいビジネスモデル等により企業価値の増大が期待できる企業の中から、20銘柄程度に厳選して投資しているファンドです。組入上位銘柄はフジクラ、東宝、関電工、東京エレクトロン、日本電気などとなっており、組入銘柄数は20銘柄です(※)。国内株式ファンドの中で1年リターンはトップクラスの実績です。
3位 インベスコ 世界ブロックチェーン株式ファンド(愛称:世カエル)

日本を含む世界各国のブロックチェーン関連株式に投資するファンドで、コインシェアーズ・ブロックチェーン・グローバル・エクイティ・インデックス(税引後配当込み、円換算ベース)の動きに連動する投資成果を目指しています。ブロックチェーンとはブロックと呼ばれる単位でデータを管理し、鎖(チェーン)のように連結して保管する金融取引履歴などで利用される技術のことで、ほとんどの暗号資産でブロックチェーン技術が使われています。組入上位銘柄は、デジタル資産と暗号資産取引のインフラストラクチャを手掛けるギャラクシー・デジタル、大手暗号資産取引プラットフォーム企業のコインベース・グローバル、オーストラリアに拠点を置くビットコインマイニング企業のアイレン、北米最大級の規模を誇るビットコインマイニング企業のコア・サイエンティフィック、日本のメタプラネットなどとなっており、組入銘柄数は47銘柄です(※)。ビットコイン価格の上昇などから1年でも好成績ですが、標準偏差はかなり大きくなっています。
2位 ブラックロック・ゴールド・ファンド

南アフリカ・オーストラリア・カナダ・アメリカ等の金鉱企業の株式に投資を行うファンドです。金鉱株の株価と金価格は長期では同じ方向に動く傾向が見られ、金価格の上昇を受けて1年、3年でも好成績となっていますが、金価格との連動を目指すファンドと比べて、値動きの振れ幅を示す標準偏差が大きいのが特徴といえます。
1位 カレラ日本小型株式ファンド

日本の小型株式を投資対象とし、事業内容、成長性、収益性、財務健全性などを勘案して銘柄を厳選しているファンドです。組入上位銘柄はダイハツインフィニアース、中北製作所、中国塗料、長野計器、寺崎電気産業などとなっており、組入銘柄数は30銘柄です(※)。
成長シナリオに沿った小型株の銘柄選定が特徴のファンドです。

上記11ファンドの投資対象は様々に見えますが、(1)国内株式ファンド(主に中小型成長株)、(2)成長性の高いテーマ型株式ファンド(メタバース、宇宙、クリーンテック)、(3)金やビットコインなどの価格上昇の恩恵を受けた株式ファンド、の3つに分類できると考えます。

株式市場の反発継続を期待するなら、図表2にある代表的なインデックスファンドとは値動きが異なるこれらの6ヵ月好成績ファンドを組み合わせて分散投資し、リターンの向上を狙う戦略も有効と考えます。ただし、値動きの振れ幅が大きいファンドが多いため、積立投資などによる時間分散がおすすめといえます。

(※)組入銘柄の情報は2025年7月末基準(5位と9位のファンドのみ8月末基準)。個別銘柄の取引を推奨するものではありません

掲載されたファンドの情報はこちら

『投資情報メディア』より、記事内容を一部変更して転載。

川上雅人 かわかみまさと SBI証券 投資情報部 シニア・ファンドアナリスト(公益社団法人日本証券アナリスト協会認定アナリスト) 慶應義塾大学卒業。丸三証券で国内株アナリスト、国内大手運用会社で18年間、商品企画・営業などを担当後、2020年よりauカブコム証券でファンドアナリストとして活動。2022年11月から現職。最新の投資情報を発信する『投資情報メディア』のレポート・コラムなどで投資信託や資産運用(新NISAなど)に関する情報提供を行う。 この著者の記事一覧はこちら
編集部おすすめ