株式市場は、時にジンクスや言い伝えのような動きを見せることがあります。まるで「ツキが回ってきた年は何をやってもうまくいく」といった運勢のように、根拠ははっきりしなくても繰り返し観測されるパターンです。


今回注目されているのは、プロ野球・阪神タイガースの優勝と日経平均株価の関係。阪神がリーグ優勝を果たした年や翌年には、日経平均が上昇する傾向が見られるのです。偶然なのか必然なのか? そこで今回は、SBI証券投資情報部のシニア・ファンドアナリスト・川上雅人さんに、投資家としては気になるアノマリー(※)を検証してもらいましょう。

※理論的な根拠は明確ではないものの、経験的に繰り返し観測される市場の傾向やパターンのこと

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2年ぶり阪神優勝と日経平均のアノマリー!?

2025年9月7日、プロ野球では阪神タイガース(以下、阪神)のセントラル・リーグ優勝が決定しました。2025年は藤川新監督の下で、圧倒的な投手力を有し、2位の読売ジャイアンツに17ゲーム差の大差をつけての独走でした。

9月7日の決定は両リーグ史上最速の優勝でした。おめでとうございます! 阪神は2023年以来2年ぶり7回目の優勝となり、地元関西を中心とした熱狂的なファンを持つ人気球団のため、優勝による日本全国での経済効果は1,000億円超と予想されています。

そこで今回は阪神優勝と国内株式(日経平均株価(以下、日経平均))の関係を検証します。

1980年以降の阪神優勝は2025年を除くと4回(1985年、2003年、2005年、2023年)ありましたが、優勝した年(暦年)の日経平均は前年末比で2ケタの上昇を記録しています。さらに、阪神が優勝した翌年となる1986年、2004年、2006年、2024年の日経平均は、すべて上昇となっています(図表1)。なお、1985年以前の優勝は1964年となり、東京五輪開催の年まで遡ります。

2025年は、日経平均が2ケタ上昇し、2026年もその勢いが続く

1980年以降で過去4回とサンプルは少ないですが、阪神が優勝した年の日経平均は2ケタ上昇し、翌年も上昇するというアノマリーがあるようです。
アノマリーとは根拠はないが経験的に観測できるマーケットの規則性をいいます。

2025年も日経平均が2ケタ上昇し、2026年もその勢いが続き上昇するのか注目といえます(図表2)。2025年の2ケタ上昇のラインは43,884円となり、8月18日につけた終値ベースでの日経平均史上最高値43,714円31銭を上回る水準です。

次に、阪神優勝による日経平均アノマリーによって恩恵を受けそうな国内株式ファンド(NISA成長投資枠対象で、SBI証券ネット取り扱い)をチェックします。藤川監督に代わった1年目に圧倒的な強さで優勝したことを踏まえて、1年好成績ファンドをランキングしてみました。1年好成績国内株式ファンドのベスト9は図表3になります。

1年好成績 国内株式ファンドの特徴は?
9位 SBI日本小型成長株選抜ファンド(愛称:センバツ)

エンジェルジャパン・アセットマネジメントによる企業調査力を活かして有望企業を厳選しているファンドです。組入上位銘柄は、ライズ・コンサルティング・グループ、INTLOOP、ビーイングホールディングス、守谷輸送機工業、スマートドライブなどとなっており、組入銘柄数は49銘柄です(※)。

8位 野村リアルグロース・オープン

個別企業の調査・分析等により中長期的に高い成長が期待できる企業の株式を選別して投資しているファンドです。組入上位銘柄は、QPS研究所、フィットイージー、小池酸素工業、ライフネット生命保険、オカムラ食品工業などとなっており、組入銘柄数は89銘柄です(※)。
7位 情報エレクトロニクスファンド

電気機器、精密機器などエレクトロニクスに関連する企業群や情報ソフトサービス、通信など情報通信に関連する企業群の株式を主要投資対象としているファンドです。組入上位銘柄はソフトバンクグループ、古河電気工業、東京エレクトロン、ソニーグループ、富士通などとなっており、組入銘柄数は44銘柄です(※)。
特定業種の成長株中心のポートフォリオのため標準偏差は大きいファンドですが、3年、5年リターンでもバランス良く好成績です。
6位 カレラ 日本小型株式ファンド

日本の小型株式に投資し、事業内容、成長性、収益性、財務健全性などを勘案して銘柄を厳選しているファンドです。組入上位銘柄はダイハツインフィニアース、中北製作所、中国塗料、長野計器、寺崎電気産業などとなっており、組入銘柄数は30銘柄です(※)。成長シナリオに着目した小型株の組入れが特徴です。
5位 インベスコ 店頭・成長株オープン

中小型株式を中心とする成長性溢れるわが国の株式などに投資しているファンドです。組入上位銘柄はSWCC、パルグループホールディングス、トーセイ、プレミアグループ、エムアップホールディングスなどとなっており、組入銘柄数は68銘柄です(※)。
4位 21世紀東京 日本株式ファンド(愛称:成長への道)

事業内容、成長性、収益性、財務健全性などを勘案して銘柄を厳選し、業種配分、バリュエーションなどを考慮してポートフォリオを構築しているファンドです。組入上位銘柄は三菱重工業、鹿島建設、アドバンテスト、東京エレクトロン、日立製作所などとなっており、組入銘柄数は22銘柄です(※)。3年、5年リターンでもバランス良く好成績で、標準偏差も小さいファンドです。
3位 マネックス・アクティビスト・ファンド(愛称:日本の未来)

対象企業に対して目的を持ったエンゲージメント(対話)や提案を行い、企業価値と株式価値の中長期的な向上を目指すファンド、いわゆるアクティビスト・ファンドです。組入上位銘柄はIHI、TBSホールディングス、しまむら、東宝、大日本印刷などとなっています(※)。標準偏差が小さく抑えられており、3年、5年リターンも良好で、運用効率に優れたファンドといえます。

2位 ソフトバンク&SBIグループファンド

ソフトバンクグループ、SBIホールディングス及びそれらのグループ関連企業の株式に投資しているファンドです。組入上位銘柄は、ソフトバンクグループ、LINEヤフー、ソフトバンク、SBIホールディングス、ZOZOなどとなっており、組入銘柄数は17銘柄です(※)。
1位 厳選ジャパン

優れた経営者の質・ビジョン、新しいビジネスモデル等により企業価値の増大が期待できる企業の中から、20銘柄程度に厳選して投資しているファンドです。組入上位銘柄はフジクラ、東宝、関電工、東京エレクトロン、日本電気などとなっており、組入銘柄数は20銘柄です(※)。集中投資のため値動きの振れ幅を示す標準偏差(5年)は大きいですが、国内株式ファンドの中で1年リターンは断トツの実績です。

1年好成績国内株式ファンドのベスト9を規模別でみると大型4、中型1、小型4となり、比較的分散されました。スタイル別ではグロースのファンドが多くなりました。2023年までは不振だった小型グロースのファンドが巻き返しています。
国内株式に投資していないS&P500インデックスファンドの保有者などは、これらの1年好成績国内株式ファンドを規模別、スタイル別に組み合わせて分散投資すること(例えば、大型バリューと小型グロースなど)が有効と考えます。

(※)個別銘柄の取引を推奨するものではありません。各ファンドの組入上位銘柄の情報は2025年7月末基準(3位のファンドのみ2025年4月末基準)

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『投資情報メディア』より、記事内容を一部変更して転載。

川上雅人 かわかみまさと SBI証券 投資情報部 シニア・ファンドアナリスト(公益社団法人日本証券アナリスト協会認定アナリスト) 慶應義塾大学卒業。
丸三証券で国内株アナリスト、国内大手運用会社で18年間、商品企画・営業などを担当後、2020年よりauカブコム証券でファンドアナリストとして活動。2022年11月から現職。最新の投資情報を発信する『投資情報メディア』のレポート・コラムなどで投資信託や資産運用(新NISAなど)に関する情報提供を行う。 この著者の記事一覧はこちら
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