忙しくても資産形成したい、ストレスなく運用を続けたいという人には「ほったらかし資産運用」がおすすめです。ほったらかし資産運用とは、名前の通り、手間をかけずにできる資産運用を指します。
しかし、「ほったらかしで本当に資産運用できるの? 」と不安になる人もいるかもしれません。そこでこの記事では、ほったらかし資産運用に向いている金融商品の種類や、失敗しないためのポイントを詳しく解説します。

■ほったらかし資産運用って何? 向いている人は
<ほったらかし資産運用とは>

ほったらかし資産運用とは、始める前に運用の環境を整えることで頻繁に見直す必要がなく、ある程度放置していても資産の増加を目指せる方法です。代表的なものとしては、長期の積立投資があります。短期投資のように相場を常に見張る必要もないため、手間をかけずに資産運用したい人には魅力的な選択肢です。

ただし、ほったらかし資産運用は向いている人、向いていない人に分かれますので、自分はどちらのタイプか見極めることが大切です。
<ほったらかし資産運用に向いている人、向いていない人>

ほったらかし資産運用は、忙しくて投資にかける時間や手間を極力減らしたい人に向いています。一度必要な設定を行えば、日々株価をチェックしたり複雑な投資戦略を練ったりする必要がないため、投資の経験が浅い初心者にもおすすめです。

また、感情的な売買を避けたい人にも向いています。基本的には「ほったらかし」で運用を続けていきますので、日々の値動きに反応して売買を繰り返し、かえって損をしてしまう事態も回避できます。そして、長期目線でコツコツ資産形成したい人にも理想的な方法でしょう。

反対に、短期で大きな成果を上げたい人や、資産を頻繁に見直し・調整したい人には向いていません。
また、ほったらかし資産運用は、長期間運用することで資産を増やすスタイルですので、流動性(現金への換金のしやすさ)を重視する人にも向かないと言えるでしょう。

ほったらかし資産運用に向いている金融商品については後述しますが、それらの商品を短期間で現金化しようとしても、解約手続きや売却に時間がかかるケースがあるからです。なお、解約のタイミングによっては元本割れになることもあるため注意しましょう。
■ほったらかし資産運用のメリットとデメリット

ほったらかし資産運用にはさまざまなメリットがありますが、気を付けるべきデメリットもあります。主なメリット、デメリットを見てみましょう。
<メリット>

・手間が少ない

ほったらかし資産運用は、はじめに設定をしておけば、日々の市場動向のチェックや個別銘柄の分析が必要ないため、投資にかかる時間と手間を大幅に減らせます。仕事で忙しい人や、投資判断を行うのが難しい初心者もストレスなく運用できます。

・長期投資による複利効果が高まる

ほったらかし資産運用は、短期的な利益を追い求めるのではなく、より長期的な視野での資産形成を目的としています。そのため、利益が利益を生む「複利効果」を高められるというメリットがあります。

すぐに大きな利益を得ることは難しいものの、日々意識しなくても運用を続けられるため、時間を味方につけて着実に資産を増やしていけます。

・少額から投資できる商品も多い

ほったらかし資産運用に向いている金融商品の中には、少額から投資できる商品もあります。たとえば、投資信託の積立(投信積立)は多くの金融機関で100円から、iDeCo(個人型確定拠出年金)は月5,000円から積み立てられます。


小さな金額から始めて徐々に金額を増やすこともできるため、投資初心者でも一歩を踏み出しやすいでしょう。
<デメリット>

・短期的な市場変動に対処しにくい

ほったらかし資産運用は手間を省けますが、短期的な市場変動には対処しにくく、大幅な下落時に適切な対応ができず損失を被る恐れがあります。また、最適な売買タイミングを見逃して大きな利益を取り逃すこともあります。

・リバランスを怠ると損失を被ることがある

リバランスとは、ポートフォリオ(保有する資産の組み合わせ)の資産割合を最適な状態に戻すことです。

リバランスを怠ると、時間の経過や市場変動によって当初の目標としていた資産配分が崩れたままになり、リスクの高い資産が増えて損失につながることもあります。ほったらかし資産運用といっても、ある程度定期的にリバランスを行うことは必要です。
■ほったらかし資産運用に向いている金融商品5選

ほったらかし資産運用をするには、どのような方法があるのでしょうか。ここからは、ほったらかし資産運用に向いている5つの金融商品をご紹介します。
1.投信積立

投信積立は、一定の期間ごとに一定の金額で投資信託をコツコツと購入していく方法です。あらかじめ購入する銘柄と金額を決めておけば、あとは自動的に積立が行われます。

投信積立をするなら、NISA(少額投資非課税制度)の「つみたて投資枠」の活用がおすすめです。年間120万円の非課税投資枠があり、運用で得た利益が非課税になるためお得に運用できます。

2.iDeCo

iDeCoは、自分で老後資金を準備するための私的年金制度です。投資信託や定期預金などの中から運用する商品を選び、毎月掛金を拠出します。NISAと同様、運用益が非課税になるだけでなく、掛金の全額が所得控除の対象となり、運用したお金の受取時にも税制優遇があります。

原則として60歳まで資金を引き出せない点には注意が必要ですが、毎月自動的にお金が積み立てられるため、今から老後資金の準備を始めておきたい人にはおすすめです。
3.ロボアドバイザー

ロボアドバイザーとは、AI(人工知能)を用いた投資方法です。許容リスクに応じて最適なポートフォリオの作成や投資先の選定を行い、自動的に資産運用まで行ってくれるものもあります。

投資の知識がなくても最適な方法で運用でき、感情に左右されず続けられる点は大きなメリットです。
4.株やFXの自動売買

本来、株やFXは投資家自身が売買を行いますが、近年では自動売買のツールが普及し、あらかじめ設定した条件に基づき、ほったらかしで売買ができるようになりました。

手間がなく、人間の感情による誤った判断で取引することを防げますが、適切な条件を設定するのが難しく、想定外の事態が起きた時に柔軟に対応できないというデメリットもあります。
5.不動産投資

不動産投資とは、マンションなどの不動産物件を取得し、入居者から家賃収入を得る方法です。不動産管理会社に物件の維持管理を任せれば、毎月自動的に家賃収入が得られます。

その反面、空室ができれば収益が減ったりなくなったりしてしまい、物件の値下がりや自然災害のリスクがあるほか、ローンの支払いや維持管理費も必要になります。

■ほったらかし資産運用で失敗しないための4つのポイント

最後に、ほったらかし資産運用を成功させるために特に重要なポイントを4つご紹介します。
1.短期的な市場の動きに惑わされない

市場動向は時に予測が難しく、急激な変化が起こることもあります。しかし、ほったらかし資産運用では、目の前の相場に惑わされず淡々と運用を続けていくことが大切です。

ほったらかし資産運用は長期投資を前提としており、「短期的には値下がりしても、いつかは市場が回復して成長し、利益も得られる」という考え方に基づく運用方法だからです。短期的な市場の動向に囚われず、定期的に資産を見直しつつ長い目で運用を続ける姿勢が重要です。
2.定期的な見直し・リバランスを行う

ほったらかしにできるといっても、最初に設定したあと何年も資産状況を確認しないまま放置し続けるのは危険です。ポートフォリオのバランスは時間とともに変化しますので、定期的に確認してリバランスを行いリスクを回避しましょう。リバランスは、1年に一度を目安に行うのがおすすめです。
3.長期の分散投資を意識する

投資のリスクを抑えるには、長期目線で運用するほか、投資先や投資タイミングを複数に分ける「分散投資」も非常に重要です。異なる資産(株式や債券、不動産など)や異なる国・地域などに分けて投資すれば、ある資産が値下がりした時に他の資産でカバーできる可能性が高まります。

また、投資タイミングを分けることで、高値の時に一括で購入してしまうリスクを避け、価格が下がっている時には多く買い付けでき、平均購入単価を下げる効果も期待できます。

ほったらかし資産運用では、投信積立のように、定期的に一定額を購入する方法で投資タイミングの分散が可能です。

4.余剰資金での投資を心がける

投資を行う際は、余剰資金を活用することが鉄則です。生活費や近い将来使うことが決まっているお金を投資に使ってしまうと、損失が生じた場合、支払いに困ることもあります。

ほったらかし資産運用を始める前に、毎月の収支や保有資産を見直し、どのくらいのお金であれば投資に使えるか明確にしておきましょう。また、全く貯金ができていない場合は、投資よりもまずいざという時の「生活防衛資金(生活費の約半年分)」を貯めることから始めましょう。

安心して運用できる環境を整えるのも、ほったらかし資産運用で成功するためには欠かせないポイントです。
■「ほったらかし」でストレスなく運用を続けよう

資産運用を始めたくても、忙しい日常生活の中で続けられるか不安になる人もいるでしょう。しかし、ある程度放置できるほったらかし資産運用なら、普段は仕事やプライベートに集中できるため、運用を始めるハードルがグッと下がるのではないでしょうか。

どの方法で始めようか迷ったら、まずはNISAのつみたて投資枠を活用し、投資信託を積み立てるのがおすすめです。少しずつ資産運用の知識を身に付け、慣れてきたらさまざまな方法にトライしてみましょう。

武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中 この著者の記事一覧はこちら
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