第84期順位戦A級(主催:朝日新聞社・毎日新聞社・日本将棋連盟)は3回戦が大詰め。9月24日(水)には豊島将之九段―増田康宏八段の一戦が名古屋将棋対局場で行われました。
○まさかの相右玉
ともに1勝1敗で迎えた本局は名人挑戦を目指すうえでは負けられない戦い。体調不良によりこの前週の対局を不戦敗としていた豊島九段、この日は元気な対局姿を見せファンを安心させました。両者得意の角換わりに進んだ盤上は、後手の増田八段が右玉に変化したところで先手の豊島九段も同様の作戦で応戦。珍しい相右玉の戦型へと落ち着きました。
ともに似た陣形なだけに手を作るのが難しそうな中盤戦、豊島九段は積極的な指し回しでペースをつかみます。ひと足先に後手の桂頭に手をつけたのが先後のわずかな形の違いを突く機敏な仕掛け。適当な受けのない後手に無理気味な反撃を強要して指しやすさを手にしました。数手後、交換した桂を自陣に据えたのが「桂は控えて打て」の格言通りの好手です。
○豊島九段の必勝パターン
優位に立った豊島九段はその後もスキのない攻めでポイントを重ねます。金取りを手抜いて5筋の歩を進めたのがプロ好みの決め手。
終局時刻は21時42分、最後は形勢差を認めた増田八段が投了。感想戦では45手目の局面が重点的に検討され、互角に近い形で中盤戦を進める順が模索されました。全体を振り返ると、中盤のリードを徐々に拡大し攻め合いに持ち込ませずに勝つ豊島九段得意のパターンが発揮された一局に。2勝1敗と勝ち越した豊島九段は次戦で近藤誠也八段と対戦します。
水留啓(将棋情報局)