サントリー株式会社は9月29日、「第3のビール」として販売してきた「金麦」を2026年10月以降にビール化することを発表した。
同日、ブランド部門長兼ビール・RTD本部長 常務執行役員の多田寅氏と、ビール開発生産本部 ビール商品開発研究部 開発主幹の水口伊玖磨氏が登壇。
○背景に酒税改正
多田氏は2026年10月から施行される酒税改正について説明。麦芽比率がビールは50%以上、発泡酒や第3のビールなどのエコノミーカテゴリーは50%未満と定義されており、現時点では酒税額が異なるが、2026年10月にはそれぞれの酒税額が一本化される。
そして、ビールの税率が最も高いことから、改正後にはビールは減税、一方で「金麦」を含むエコノミーカテゴリーは増税されることになるため、双方の価格差はある程度残るものの縮まるだろうと話した。
続けて、2025年1~6月の月間の平均購入量を取り上げ、エコノミーは前年比88%と購入量自体は減少しているが、ビールよりも多く購入されていることを指摘。さらには、同社のアンケート調査を用いて「できるだけ安価なお酒を選びたい」「価格に見合った価値があるかを吟味する」という回答が上昇傾向にあり、エコノミー市場の活性化はビール業界における重要な課題であると強調した。
そのため、「家で飲むのに一番ふさわしいビール類」として消費者から高い支持を集めている「金麦」、さらには「金麦〈糖質75%オフ〉」「金麦〈ザ・ラガー〉」のビール化に踏み切ったという。また、増税分程度の価格転嫁を現段階では検討しているが、現行の価格帯での販売を予定していると語った。
○ビール化による味の変化
次に水口氏がビール化した「金麦」の味を解説していく。水口氏は「2007年の発売以降、麦のうまみや澄んだ後味に着目して、18年にわたり味わいを磨き続けてきました」と振り返る。そして、ビール化により、さらなる美味しさを実現することを目指しているという。
水口氏は「甘やかなホップ香、麦のうまみ、醸造香、澄んだ後味のバランスを大切にしてきたが、ビール化に伴い、麦芽比率を高められることから麦のうまみの向上が期待される。
続けて、「金麦〈糖質75%オフ〉」にも触れ、「金麦」同様に麦のうまみの向上や醸造条件の適正化により後味の良さを実現したという。
また、試作品の調査結果を示し、現行品よりも「ぜひ買いたい」という声が2倍近く寄せられたと報告。そして、「ビールとしての旨味、適度な苦みを感じられるというご満足の声を多く頂戴しております」と、ビール化した「金麦」のクオリティに対する自信を覗かせた。
○ビール業界にとっては激動の1年になる?
発表の最中、試飲の時間が設けられ、ビール化した「金麦」と「金麦〈糖質75%オフ〉」を一足先にいただいた。まず「金麦」は“発泡酒時代”に特徴的だった爽快感はそのままに、ビールらしい喉ごしや麦の風味が増していた。「金麦〈糖質75%オフ〉」は糖質オフ特有の“軽さ”はあるが、「金麦」同様に喉ごしをしっかりと感じられ、飲んだ後に口の中に残る麦の風味もビールのそれだった。価格が大きく変わらないのであれば、現在の「金麦」以上に好まれる可能性は高いかもしれない。
2026年10月の酒税改正により、サントリーでは主力商品「金麦」のビール化に踏み切ったが、同業他社も大胆な変更を行うかもしれない。ビール業界にとって激動の1年が始まると言える。
望月悠木 フリーライター。