キリンビールは10月7日、新ブランド「キリングッドエール」を全国発売する。
「日本の未来が明るくなる、良いビールをつくりたい」という思いから誕生した同商品は、同社のフラッグシップ「一番搾り」、2024年発売の「晴れ風」に続く“第3の柱”として位置づけられる。
○■開発の思いと商品概要
最初にマーケティング部 新価値創造担当 立野唯花氏が登壇し、開発の思いと商品概要を語った。
立野氏は「日本の未来が明るくなる良いビールを作りたい」という思いを起点に開発を進めてきたと話す。豪華さやステータスを追い求めるのではなく、心の豊かさや自分のための“ちょっといいもの”を取り入れて生活を豊かにする、といった消費者意識に着目したという。
実際、物価高騰の影響で生活必需品や固定費を節約する人が増える一方、“節約疲れ”を感じる人は7割近くに上る。その解消法として、自分のためのちょっとしたご褒美を取り入れる行動が広がっており、ビールについても約6割の人が「せっかくなら少し良いものを」と考えていることがわかった。だが同時に「どれも同じような味で代わり映えがしない」「ご褒美感がない」といった不満の声も少なくない。
そのうえで、立野氏は「いつもと違う美味しさや、素材や製法にこだわった良いビールに機会があると考えました」と述べ、次の3つの着眼点を掲げた。
1.ビールが本来持つ“人を明るく元気にする力”を未来へつなぐこと
2.日常に“ちょっとしたご褒美”を取り入れたいという生活者ニーズに応えること
3.既存のビールに対して抱かれている「どれも同じ」という不満に向き合うこと
これらの方針のもと1年半の開発期間を投じて誕生したのが10月7日に発売する「キリングッドエール」である。ネーミングには二つの意味が込められている。ひとつは「キリンが目指した美味しいエールビール」、もうひとつは「現代を生きる人々や日本の未来への明るい前向きな応援エール」だ。
“ハッとするほどフルーティーな香りと、すっきりとした後味”を両立させた味わいは「リッチ&フルーティー」と表現される。
○■中味開発のこだわり
続いて登壇したのは、商品開発研究所 中味開発グループの宮下英理子氏だ。「全く新しい美味しさを目指した中味開発のこだわり」について語った。
キリンは100年以上ビールをつくり続けてきたが、今回は前例にとらわれず、素材や製法を一から見直すチャレンジを行ったという。その象徴が、華やかでフルーティーな香りを引き出す「クライオホップ」の採用である。雑味や渋みを抑えつつ豊かな香りを表現できるが、粘度が高いため大量生産には不向きだった。そのため、新たな設備を導入し、工場製造を可能にした。
また、香りを最大限に生かすため、こちらもキリン初となる「ブライトアロマ製法」を導入。発酵過程でクライオホップを漬け込みその後ろ過することで、苦味・雑味を抑えながら、ホップ由来のフルーティーさを存分に引き出すことに成功した。
加えて、麦芽100%の採用によりビールとしての飲みごたえを持たせ、ラガータイプではなくエールタイプの酵母を採用することで華やかさを際立たせた。
宮下氏は「きれいな後味とフルーティーさを両立した唯一無二のビールになった」と強調。事前評価でも「特徴的なフルーティーな味や香りがありながら、スタンダードビール並みの飲みやすさが両立されている」「今までにない味で飲みやすい」といった声が寄せられていると紹介した。
○■クロストーク:ビアソムリエ×キリン マスターブリュワー
発表会の最後には、ビアソムリエの中島輝行氏とキリンビール マスターブリュワーの田山智広氏が登壇し、「キリングッドエール」の味わいや楽しみ方について語り合った。
中島氏は「普段使いのビールとして、コク・キレ・ノドゴシに加えて“香り”を提案しているのが革新的」と評価した。味わいの印象については「最初に飛び込んでくるのは、みかんを思わせる明るい香り。その奥にはローズマリーのようなハーブ感や、麦芽由来のキャラメルのようなトーンも感じられる」とコメント。飲み終えた後には「上質なほうじ茶のような余韻が残り、すっと消えていく切れ味も美しい」と表現した。
田山氏も「パッケージ自体も明るいので、飲む場をパッと明るくしてくれる存在。オールマイティーなビールだと思うので、ぜひいろいろなシーンで飲んでいただきたい」と呼びかけた。
筆者もその場で試飲したが、まず広がるのはフルーティーな香り。後味は良いタイミングですっと消え、非常に飲みやすいと感じた。まさに普段から気軽に楽しめる一方で、少しリッチな体験も得られる一杯だった。
○■日常を明るくする、新しい定番の誕生
今回の発表会を通じて、「キリングッドエール」が従来の延長線ではなく、新しいアプローチから生まれた商品であることが明らかになった。
開発の初期段階ではラガータイプでの試作も行われていたが、最終的にエールタイプの酵母を採用することで、当初の想定を超える味わいが実現できたという。
ビアソムリエの中島氏も「普段使いのビールとして革新的」と語ったように、フルーティーな香りとすっきりとした後味を両立させた“日常を明るくする新しいビール”。終始和やかな雰囲気で行われた発表会を通じて、そのコンセプトどおり飲む人の気持ちを明るくする味わいであることが示された。
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