葛藤を乗り越え、胸張って「キューティーハニー」を歌えるように
2000年にデビューしてから今年で25周年を迎える歌手の倖田來未。8月16日には6年ぶりに神宮外苑花火大会に出演し、圧巻のパフォーマンスで観客を魅了した。10月からは25周年を記念したアリーナツアーを開催する倖田にインタビューし、25周年を迎える心境やこれまでの転機、今後について話を聞いた。神宮外苑花火大会では、代表曲「キューティーハニー」「め組のひと」や新曲「ChaO!」などを披露。「キューティーハニー」では、「ハニーフラッシュ!」のタイミングで花火が打ち上がり、「気持ちよすぎました!」と興奮気味に振り返る。
「本番が終わってから聞いたんですけど、44年の歴史で、曲中に花火を上げるのは初めての試みだったらしくて。それを聞いてびっくりしましたが、嬉しかったです」
25周年については、周囲からの祝福で実感が湧いてきたと語る。
「全然意識してなかったですが、周りの方から『25周年おめでとうございます!』とすごく言っていただいたので、『25周年なんだ!』って。25年も歌い続けられるのは幸せだなと思います。たくさんのアーティストがいる中、こうして歌い続けられるのはファンの皆さんのおかげだなと感謝しています」
歌い続けたいという思いで走り続け、先輩アーティストの姿からも刺激を受けているという。
「鈴木雅之さんや渡辺美里さんなど先輩たちを見ていると、いい音楽を持っていれば何十年も歌い続けられ、世代を超えてコンサートに遊びに来てくれるんだなと感じるので、私も頑張っていい音楽を届け続けたいなと思います」
25年間のキャリアの中で最も大きな転機としては、2004年に大ヒットした「キューティーハニー」を挙げた。
「人の背中を押したいと思ってこの世界に入ったのに、人に知ってもらえないとそのスタートに立てないというか、『キューティーハニー』で自分の存在を認めていただけた感じがしました。『キューティーハニー』と出会えたことはすごく大きかったです」
だが、「自分のオリジナルじゃないということでコンプレックスに思う時期もあった」と打ち明ける。
「その前にヒットした『real Emotion』も『FINAL FANTASY X-2』のテーマソングで、『倖田來未を求めてないんじゃないか。誰が歌ってもよかったのかな』という思いがありましたが、『you』や『愛のうた』などオリジナルのヒット曲が出てきてくれて、倖田來未の声を求めてもらえているんだと。
2010年にはラッツ&スターの名曲「め組のひと」をカバーし、2018年に同楽曲がTikTokで若者を中心に大ヒットした。
「『め組のひと』がこういう風に花咲いてくれて、『キューティーハニー』もそうですが、倖田來未らしくカバーして評価をいただけているというのは、オリジナルじゃないということを否定することでもないなと、25年やってそういう風に乗り越えられるようになってきました」
現在42歳 「年相応ではなく」これからも自分らしさを大切に
「キューティーハニー」で、自身の代名詞「エロかっこいい」も確立された。「私が言ったのではなく新聞で『エロかっこいい』と書いていただいて、『エロなんだ!』と思いました。私はかっこいいと思ってやっていて、男の人に媚びない女の強さやかっこよさを表現していたので、『へー!』という感じでしたが、大胆なファッションでかっこよく力強く歌って踊るというのがポリシーでもあったので、すごく的を射ているなと思いました」
42歳の今も「エロかっこいい」を貫き、自分らしさを大切にしている。
「これが倖田來未なんだと。25年やっていて、倖田來未にしかできない表現があるのかなと感じるんです。『いくらセクシーなアーティストが出てきても負けへんで!』という気持ちです(笑)。これからも、行動も発言も『來未ちゃんかっこいい』と思ってもらえる女性でいなきゃなと思います」
どんな人でも全員に好かれるというのは無理で、倖田も批判的な声に悩んだこともあったと打ち明ける。
「批判されて心が折れてしまう時期もありましたが、ファンの皆さんやスタッフの皆さんが『倖田來未にしかできないことだから』と応援してくれたので、ファンの皆さんのためにも、私は私らしくいようと。このしゃべり(関西弁)が嫌だという人もいて、しゃべりやファッションが欠点だと思う時もありますが、これが倖田來未の強みでもあると思うので、これからも貫き通したいと思います」
引き締まった美ボディをキープし、衣装でも「エロかっこいい」を表現している。
「タンクトップ1枚でもかっこいい女の人はかっこいいしセクシーですよね。脱げばいいというわけではなく、今42歳ですが自分らしく、年相応とかではなく、自分が似合っているな、かっこいいなと思うものを着続けていきたいです」
●“絶対的な味方”家族ができて「倖田來未は強くなった」
これまでの転機として「キューティーハニー」を挙げていたが、2012年に長男を出産したことも転機になったという。
「アーティストは皆さんが休日の時に歌う機会が多いので、『お母さんいつも家にいないな』と言われないために、彼が生まれた時に、『こんなにかっこいいライブをして、こんなにたくさんの人を喜ばせているんだったら、行っておいで』と言ってもらえる、尊敬されるライブをやらないといけないと思いました」
息子のためにも「かっこいいライブをしよう」と決意を新たにしてから13年。「『ママはファンの人を幸せにしているんだ』という姿を見せ続けてきたので、今では『次ライブいつ? どこでやるの?』と聞いて、ライブに自ら足を運んでくれるようになった息子に」と、今やすっかり、倖田の心強い応援者となっている。
そして、家族の存在が大きな支えになっていると語る。
「何か失敗しても、家に帰ったら励ましてくれる絶対的な味方ができたので、旦那含め、家族ができて、倖田來未は強くなったと思います。私自身はノミの心臓で、本番前に緊張しすぎてトイレに何回も行くような人ですが、心の支えができたというのは大きいなと思います」
10月18日・19日には京王アリーナ TOKYO メインアリーナにて、12月13日・14日には大阪城ホールにて、25周年を記念したアリーナツアー「KODA KUMI 25th ANNIVERSARY TOUR 2025 ~De-CODE~」を開催する。
「コロナ禍にやらせていただいた2020年以来5年ぶりの開催で、当時はソーシャルディスタンスを取ったり、リハーサル時間も限られていましたが、今回はしっかりリハーサルを重ねて本番を迎えられるなという気持ちです」
ライブは、代表曲を詰め込んだセットリストを予定しているという。
「皆さんが知っている曲を目白押しに詰め込んで、皆さんに楽しんでもらえるセットリストになっていると思います。『キューティーハニー』も『愛のうた』ももちろん歌いますので、大きなカラオケボックスだと思って一緒に歌って楽しんでもらえたらいいなと。見応えのある、聴き応えのあるライブに仕上がる予定です」
最後に今後の抱負を尋ねると、「ファンの子が大人になって子供ができて、お母さんと自分と娘の3世代でライブに来てくれるお客さんも増え、さらに、TikTokのおかげでギャルのファンもものすごく増えて、世代を超えて年齢関係なく楽しんでいただけるボーカリストでいたいと思いますし、挑戦する姿を止めず、皆さんに感動していただける、背中を押すような楽曲をこれからも届けていきたいと思います」と力強く語ってくれた。
■倖田來未
1982年11月13日生まれ、京都府出身。2000年11月に「TAKE BACK」で全米デビュー、同年12月に同曲で日本デビュー。以後数々のヒット曲を生み、ベストアルバムのダブルミリオンセールス、2度の東京ドーム公演、近年では海外公演も開催するなど数多くの実績を残す。