第67期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は予選が進行中。10月6日(月)には浦野真彦八段―福間香奈女流六冠の一戦が関西将棋会館で行われました。
○ファン注目の大一番
本予選は21名からなるトーナメントを勝ち抜いた1名がリーグ入りを果たすもの。8つのトーナメントがあり、これに前期リーグ残留の4名を加えた計12名が挑戦者リーグを戦います。予選とはいえ本局は福間女流六冠の対棋士成績の面で大きな意味があり、これに勝てば棋士編入試験の主な受験資格(10勝以上かつ勝率6割5分以上)を満たすことになります。
福間女流六冠得意のゴキゲン中飛車で始まった対局は先手の浦野八段が袖飛車の趣向で対抗。盤上ははやくも力将棋の様相を呈しており、角道を開けることができなくなった福間女流六冠が向かい飛車に振り直したことでジリジリとした持久戦へと突入しました。千日手含みの応酬ののち、85手目に浦野八段が仕掛けに打って出てようやく局面が動き出します。
○200手越えの激闘
居飛車穴熊の堅陣を築いた浦野八段が攻勢を強めれば、駒の損得で優位に立つ福間女流六冠も自陣に馬を引きつけ徹底抗戦。形勢不明のまま終盤戦へとなだれ込みます。先に抜け出したのは福間女流六冠でしたが、その後の攻めにミスがあり先手も徐々に息を吹き返し、戦いは長期戦へ。両者一分将棋間近の最終盤にドラマが待っていました。
2筋に飛車を打って王手をかけた浦野八段ですが、この日は指運に恵まれませんでした。この数手後、後手から王手の連続で馬を抜く変化と4筋に竜を回って攻める変化があり、これを防ぐためにも飛車は4筋に打つ必要がありました。終局時刻は20時37分、自玉の受けなしを認めた浦野八段が投了。終局図では19枚の駒が乗った先手の駒台に対し、1枚も駒を余さなかった後手の駒台が対照的で超手数の激闘を物語っていました。
リーグ入りまであと2勝とした福間女流六冠は次戦で糸谷哲郎八段―大石直嗣七段戦の勝者と対戦します。また棋士編入試験の受験資格を獲得したことについては「家のことと対局日程を両立できるか、体調面も考慮しながら決めたい」と態度を保留、SNS上のファンも「すごい将棋だった」「判断を尊重したい」と応援コメントを寄せました。
水留啓(将棋情報局)