人手不足を解消するため、コンビニ各社は国際社員の登用を続々と進めている。そんな外国人従業員に対し、ローソンは「国際社員フォローアップ研修」を実施した。
○■ローソンも外国籍社員を積極的に採用
ローソンでは、労働力の補完だけではなく、多様な人材に活躍してほしいという思いから、積極的に海外人材の採用を進めている。2020年のコロナ禍により一時的に外国籍比率は低下したものの、2026年度には新入社員全体の20%以上を外国籍が占めているという。
外国籍でありながら日本で働く“国際社員”のために、ローソンは数年前から日本で就労するために必要なビザに関して解説する「ビザ講座」を開いている。だが、やはり言葉や文化、法律の壁は厚く、入社後の生活、業務に困りごとを抱える方は多い。
こういった外国籍の新入社員に向け、ローソンは本年度より「国際社員フォローアップ研修」を開始した。内定式の前に行われた研修の模様を振り返りつつ、外国籍内定者のお話を伺ってみよう。
○■日本で働くために欠かせないビザ講座
外国籍内定者向けの研修は「ビザ講座」と「国際社員フォローアップ研修」の2部構成。2026年度は、東アジア地域から18名の留学生や外国籍の方が入社を予定している。
ビザ講座では、在留資格の29種類、たとえば「留学」「永住」「特定活動(ワーキングホリデー・就活)」などについての説明や、在留資格変更申請時の必要書類と在留期間などについてレクチャーされた。
また現在「留学」の在留資格を持つ方は、入社に伴い「技術」「人文知識」「国際業務」の在留資格に切り替える必要があることを説明。在留資格変更は、ローソンが専門の行政書士へ依頼を行うと言及した。
○■盛り上がるフォローアップ研修、日本で驚いたのは「焼きそばパン」?
続く「国際社員フォローアップ研修」の目的は、「内定者同士のヨコのコミュニケーションを図ること」「入社式までの流れを確認すること」「キャリアを考えアクションプランを作成すること」の3つだ。
始めに行われたのは、内定者同士の自己紹介。内定者のみなさんはまだ緊張した面持ちで「ローソンで携わりたい仕事」や「最近あった楽しいこと」などを共有した。
司会を務めたローソン 人事本部 人事企画部 採用担当の黒澤祥雄氏は、自己紹介を聞き終え、外国籍内定者の日本語コミュニケーション能力の高さを称賛。「この後、懇親会などでも、いろんな方と交流できる機会がたくさんありますので、ぜひコミュケーション能力を活用いただいて、いろんな人と知り合っていただきたいなと思います」と促した。
続いて、「日本に来て驚いた習慣や文化はありますか?」という質問が外国籍内定者に投げかけられると、最初に上がったのは食べ物の話。母国ではあり得ない組み合わせとして「焼きそばパン」や「餃子定食」が挙げられ、笑いを誘った。また「エスカレーターで片側を空けるとき、関西だけが右側」という地域文化の不思議も話題に上った。
内定者の緊張が次第に和らいでいく中で、黒澤氏は「日本の独自ルール」や「四季折々のイベント」について解説。そしてビジネスマナーの一環として上座・下座を当てるクイズを出題しつつ、「日本人でも知らない人がいるマナーもあるが、理解していると評価される」とその意義を強調した。
先輩社員が語る自身の経験とキャリアパス
研修は次第にローソンでのキャリアパスという、業務に直結した内容へと移っていく。ここで先輩社員として、ローソン 人事本部 人事企画部 採用担当チームの竹地結人氏が登壇。
竹地氏は、2017年にローソンに入社し、店舗社員から店長、アシスタントスーパーバイザー、へと成長していく課程を経験談とともに物語る。そして4年目にスーパーバイザーとなったときに、「オーナーの経営ビジョンを理解し、適切なサポートを提供する重要性を実感した」と話す。
質疑応答では、外国籍内定者が「オーナーとの意見の相違があった場合の対応」や、「スーパーバイザーの言葉がオーナーの経営に与える影響力」について質問。これに対し竹地氏は「しっかりと意見をぶつけ合って、『ここが私たちの一番正しい落としどころだよね』というところを見つけ、それを取り組みとして進めていくというのが私のスーパーバイザーとしてのやり方でした」と返答した。
こうして「国際社員フォローアップ研修」は、今後の連絡方法を説明して終了。休憩を挟み、内定式へ出席する。彼らが次に顔を合わせるのは、2026年1月の配属通知後にWebで行われる入社前オリエンテーションとなる。
○■就活のきっかけは日本でのコンビニ経験
内定した外国籍のみなさんは、どのような思いでローソンで働こうと思ったのだろうか。この「国際社員フォローアップ研修」を受けたカン・テソンさんとユ・ナヨンさんにお話を聞くことができた。
カン・テソンさんは、日本旅行でコンビニのサービス精神に感動したことが、ローソンで働きたいと思ったきっかけだったという。だが、日本のコンビニでは日本語のコミュニケーション能力が欠かせない。
ユ・ナヨンさんは、日本で留学生活をする中でローソンのアルバイトを経験し、日常生活の中で新しいものと楽しさを与えようとしている点に感銘を受けたことがきっかけだったという。だが、日本社会に対する理解が不足しているという不安感を抱えていたそう。
慣れない異国で働くことを決めたお二人だが、「国際社員フォローアップ研修」を受けることで、心境の変化もあったようだ。
「やっぱり私も外国人として日本で働くことになるんですけど、私みたいな同期さんがたくさんいて、一緒に一生懸命がんばれば私も日本生活に適応できるんだと感じました。先輩とのコミュニケーションもちゃんとできて、すごく嬉しかったです」(カン・テソンさん)
「同じ外国籍という立場から『みんなで一緒に頑張っていこう』という気持ちを共有できたのがすごく嬉しかったです。先ほど言いましたとおり少し不安感がありましたけれども、もう不安がなくなってすっきりしました。これからも先輩方と交流できる機会があると思いますけれども、少し頼ってみようかなと思っています」(ユ・ナヨンさん)
日本のコンビニに対する好感を素直に語ってくれたお二人。実際、「ローソンが好き」が応募動機になっている外国籍の方はかなり多いようだ。お二人はこれからローソンでどのように働いていきたいのだろうか。抱負を伺った。
「私の国、韓国にはローソンがないんです。
「ローソンをご利用いただいているお客様のひとり一人の大切な日々に、楽しさと新しさを与えていければと思います」(ユ・ナヨンさん)
○■自分の強みを活かした働き方をサポートするローソン
ローソンは日本人社員に対しても国際社員に対しても変わらないフォローを行っているが、文化の違いを踏まえた内容を充実させるため、本年度より「国際社員フォローアップ研修」を実施した。
近年、日本ではインバウンドが活況だが、それに伴い国際社員を希望する外国人もはっきりと増加しており、とくに本年度は多くの応募があったという。国際社員が活躍する場は今後ますます増えていくだろう。そしてローソンも、日本人・外国人がともに働ける環境づくりを目指している。
「本日のフォローアップ研修の内容にもあったように、まずは我々の主管職種であるスーパーバイザーという仕事を理解いただいて、その中でご自身がお過ごしになられたバックボーンを加味し、自分はなにができるのかを考えた上でご活躍いただきたいと思っております。我々のお仕事すべてをこなしていただくことが目的ではなく、自分の強みを活かすことを、私たちとしてもサポートしていきたいですね」(黒澤氏)