第46回将棋日本シリーズは、藤井聡太竜王・名人と羽生善治九段による特別対局が10月12日(日)に愛知県名古屋市の「ポートメッセなごや」で行われました。対局の結果、相掛かり乱戦の競り合いから抜け出した藤井竜王・名人が92手で勝利。
○ファン待望のゴールデンカード
本対局は渡辺明JT杯覇者の休場に伴い藤井竜王・名人の不戦勝となっていた準決勝の代替として行われる非公式戦。10日、愛知県知事を表敬訪問した藤井竜王・名人は「地元での公開対局が楽しみ」と意気込みを語ります。振り駒が行われた対局は先手の羽生九段が相掛かりへと誘導、中央に腰掛けた銀を棒銀に似た要領で繰り出す積極策を披露しました。
勢いのある攻めを受け慌てそうな局面ながら、藤井竜王・名人は落ち着いてこれに対処します。6筋の歩をぶつけて角交換を目指したのが争点をずらすための習いある手筋。狙われた角をさばいてしまえば先手の棒銀が遊ぶという大局観です。こうなっては不満と見た羽生九段も猪突猛進の飛車成りで応戦し、盤上は一気に激しい終盤戦へともつれ込みました。
藤井流の桂使いに軍配
先にリードを奪ったのは羽生九段。一間竜の寄せ形を築いて手番を得たのは好感触でしたが、30秒の秒読みのなかで決め手を発見するのは至難の業でした。やむを得ず選んだ角での王手は攻めさせられている印象で、数手後に控える角打ちが「ピッタリの受け」で先手の攻めは一段落の形に。手番を握った藤井竜王・名人は満を持して反撃に乗り出します。
先手の竜が自陣に引き上げたタイミングで桂を敵陣に成り捨てたのが気持ち良い決め手となりました。直後の桂跳ねとの連携で拠点を築けば居玉のままの先手玉はひとたまりもありません。終局時刻は17時28分(対局開始16時7分)、最後は攻防ともに見込みなしと認めた羽生九段が投了。両者が攻防に持ち味を出したスリル満点の好局となりました。
3度目の優勝を目指す藤井竜王・名人は、11月23日(日)に東京都江東区「東京ビッグサイト」で行われる決勝戦で佐藤天彦九段―永瀬拓矢九段戦の勝者と顔を合わせます。
水留啓(将棋情報局)