全国に1,661教室(2025年9月末時点)を展開する明光義塾は「講師向け就活&キャリア座談会 by 明光アルムナイ」を実施した。卒業講師は明光義塾でどんなスキルを身につけ、そして就活でどんなアピールしたのだろうか。
○■塾の講師経験は就活に活きるのか?
「明光義塾」は、全国47都道府県に展開する、個別指導のパイオニアとも言える学習塾だ。小学生から高校生まで約10万人もの生徒が学んでおり、合格実績や安全面への配慮という点においても評価が高い。
そんな明光義塾において生徒に寄り添い、直接コミュニケーションをしているのがアルバイト講師のみなさんだ。だが、講師の中でも多くを占める大学生は就職活動に悩みを抱えているという。
講師という仕事がどうキャリアに繋がるのか、どうやって経験を伝えるのか……そんな悩みに答えるイベント「講師向け就活&キャリア座談会 by 明光アルムナイ」が開催された。イベントを通じて、講師という仕事が就活でどのように活きるのか、改めて考えていこう。
○■生徒の受験失敗から講師の責任の重大さを痛感
ゲストとして「講師向け就活&キャリア座談会 by 明光アルムナイ」で体験談を語ったのは、2015年から明光義塾 浅草教室でアルバイト講師を始め、2016年に主任として講師をまとめる立場にもなった百合田智紀さん。
百合田さんは大学時代に「ソサイチ」(※ブラジル発祥の7人制サッカー競技)のチームをつくり、卒業後の2018年にTOPPAN株式会社へ入社。現在はWebサイトの運営・管理を担当しつつ、eスポーツプロジェクトで大会運営などにも従事。2022年には、明光義塾の卒業講師と現役講師のネットワークを構築する組織「明光アルムナイ」の代表理事に就任している。
「私が講師になろうと思ったきっかけは二つあります。
百合田さんは「講師になることで身についたスキルは数多くある」と語りつつ、なかでもとくに「コミュニケーション能力」と「人を見る力」を養えたと話す。生徒は千差万別で、一人ひとり性格も違えば学習の習熟度も違う。講師もまた、幅広い年代が在籍しているため、交流を通じてコミュニケーション能力が育めたという。
主任講師時代に培ったチーム連携も、現在の百合田さんを形作っている経験のひとつだ。さまざまな講師の特徴を把握するために『振り返りシート』をつくり、月に一度目標を立ててもらい、1人ひとりにフィードバックをしていったという。それが、生徒の情報共有の密な連携にも繋がり、教室全体の環境づくりにも取り組んでいたことで、教室全体の雰囲気も明るく、生徒が講師に積極的に話しかけやすい相乗効果も生まれた。
そのうえで百合田さんは、講師時代に印象に残ってるエピソードとして、“生徒と一緒に積み上げてきたことから志望校への合格に対して自信を持てていた状態だったけれども、最終的な結果に繋がらず、講師という仕事の責任の重大さを痛感した”という失敗談を語った。合格発表の日、普段は元気な生徒が端の方で泣きながら「ごめんね」と言われたという。講師として力不足を痛感した百合田さんは、そこから自分を一気に変えていったそうだ。
「自分がこうしなきゃ、こういう責任を感じるからちょっと変えていきたいとか、次の改善策を考えたりというのは、とても素敵なプロセスだと思います。
○■徹底的に自己分析をした就職活動
講師の仕事にも「ソサイチ」の活動にも熱心な百合田さんだが、就職活動には苦戦したそうだ。
「就活生あるあるとして何社受けたとか何通エントリシートを出したという話がありますが、私はやりたいこと、なりたい姿が決まっていたので、そういう業界に絞って12~13社にしか出してなかったんです。なので、ギリギリまで就職活動をしてました」(百合田さん)
就職の方向性を定めたきっかけは、講師のアルバイトだったという。ただし軸を定めるまでは徹底的に自己分析を行い、他の就活生の情報をシャットアウトした。
「生まれたときからこれまで、どういうイベントがあったか振り返りました。そこで共通することを言語化し、自分はこういうことが『好き』『興味がある』『成長の糧になる』を軸に持って動くことができました。自己分析は絶対にだれよりもできたと思っているので、業界を絞っても失敗するという怖さはありませんでした。その軸はいまもまったくブレていません」(百合田さん)
この自己分析と講師の経験が、百合田さんに自信をもたらした。とくに面接は、講師として過ごしてきた経験が強みになるという。
「自己分析した結果、私は自身を『パレット人間になる』と表現していました。いろんな色(個性)を持ち合わせた人たちを、どんな生徒・講師であっても対応でき、その人にしかない個性を引き出し、活かすことができる人になるという意味です。この表現は面接官の興味を引くことができ、必ず言葉の意味を質問されました」(百合田さん)
面接では自分が話したいことを話し、質問で詰まるところは自己分析ができていなかった点として振り返り、それでもダメなら“面接官と縁がなかった”と割り切って、“自分がやってきたことに間違いはない”という信念で百合田さんは就活を乗り切った。
「就活と講師のアルバイトの両立も、個人的には大変ではなかったです。生徒と話すことで自分自身の気づきになることもあれば、リフレッシュできることもありました。生徒にとってもプラスになることがあると思います。就活でうまくいかなかったことを生徒の授業の中で実践すると、そこでアップデートされていく感覚もありました」(百合田さん)
○■講師という仕事から身につくスキル
講師時代と就活を振り返り、百合田さんは「人生の一大イベントである受験に向き合って取り組めるのは講師ならでは」と語る。
「明光義塾が掲げている『一生もののスキル』は、すべて講師の仕事で身につくと思います。人気のアルバイトはいろいろありますが、講師ができることは幅広いと思います。例えば、千差万別の生徒さんが抱える問題は目に見えるものだけではなく、モノを販売する仕事とは異なる課題解決が必要です。ヒアリング力はもちろんのこと、課題を言語化してあげる力も重要で、自分の引き出しも増えます」(百合田さん)
そんな百合田さんが就職を決めたのは、総合印刷会社のTOPPAN。さまざまな事業を展開しており、いろいろな経験ができることが決め手だったという。現在はパッケージに関する仕事に携わっており、Webサイト構築などをメインにしているそうだ。
「私は現在、生成AIを使った仕事もしています。講師経験を経て仕事をすると、徹底したヒアリングによる顧客の根本的な課題解決を言語化できるようになります。
最後に、これから就職活動に入る講師の方々へメッセージを送っていたので、この言葉もご紹介しておきたい。
「みなさんが思っている以上に、講師の仕事ではものすごいスキルを身につけることができます。私も今回、座談会のお話をいただいて振り返ったときに、全部が繋がっているなと改めて実感しました。やってみることが一番大事です。動いたぶんだけ得られることがあると思います。ぜひいろいろチャレンジしてみてください」(百合田さん)
明光義塾には教育理念に根ざした「未来教育」という価値観がある。学習を通して生徒の“自立心”と“未来を選択する力”を育むべく、講師は生徒一人ひとりに寄り添う伴走者となる。そして明光義塾で働く講師自身もまた、生徒への指導を通して“未来を選択できる力”を養っている。講師という仕事は、変えがたいスキルとガクチカを得ることができる経験のひとつになるだろう。