ライフネット生命保険は10月10日、「がんとお金」の調査結果を発表した。調査は2025年7月24日~8月14日、がん経験者で、診断時に勤労していた719人を対象にインターネットで行われた。
○がん罹患に伴う収入の変化
がん罹患により、「自身の収入が減った」と回答した人は半数以上。がん罹患後の年収は「平均で20%収入が減少」という結果に。減少幅は2017年および2020年の調査と比較して横ばい傾向にあった。
がん治療に伴い収入が減った理由としては、「休職による収入減少」が最も多く、次いで「業務量をセーブすることによる収入減少」、「離職による収入減少」が続いた(前回調査と同様)。
○収入減少による影響
「収入減少や治療費の負担で生活が苦しい」と感じた人は75%だった。また、回答者のうち46%が治療開始から半年以内に「生活が苦しいと感じるようになった」と回答している。
収入が減ったあとの生活費の工面は、62%が「貯蓄の切り崩し」。「本人や家族の生活費の節約」が52%、「公的制度の利用」が44%と続いた。
○がん罹患後の経済面での困りごと
がんの診断後、経済面で「困った」と回答した人は全体の74%だった。困った項目としては「医療費」が57%と最も多く、次いで「本人や家族の生活費」が27%、「税金や社会保険料などの支払い」が22%という結果となった。
具体的なエピソードとして、以下のような声が寄せられた。
「高額療養費制度は使用したものの、世帯の所得に応じて月20万円くらいまでは対象にならなかったので負担が大きくなった。
「最小限の医療保険には入っていたが、がん保険には入っておらず、まさか手術無しで抗がん剤での治療で、長くなりそうな病気になるとは思っていなかった」(40代/正社員)
「副作用のために、がんでかかっている病院以外にも色々受診していたが、それらは月額21,000円を超えなかったため合算できず、高額療養費申請できなかった」(40代/公務員・団体職員)
「ウィッグなどのアピアランスケア、脱毛やしびれなどのために買った副作用低減グッズも費用がかさんだ。また妊孕性温存もかなり高額で、治療前から費用負担が大きかった」(30代/正社員)
「社会保険料支払いが休職中の分にもかかり、想定外だった」(50代/パート・アルバイト)
「傷病手当を受けていたので収入も少なく、その中から社会保険料などを会社に払っていたのでとてもとてもキツかったです」(50代/正社員)
「抗がん剤や放射線治療など通院のための交通費がかかった。公共機関で通院できるほど体力もなく、往復1万近くかかるタクシー代が1番きつかったです」(60代/正社員)
「子どもたちの教育費の貯蓄が必要な時期に、いつ、いくら必要になるかわからない自らの不確定な医療費を念頭におかないといけなくなったことで、常に経済的に不安があります」(40代/正社員)
○がん罹患に伴う支出
がん罹患後1年で増えた支出は約9割が200万円未満、約6割が100万円未満と回答した。
○がんの治療費以外で発生した支出
がんの治療費以外でお金がかかったものは、「入院時の日用雑貨」64%に続き、「入院・通院時の交通費やタクシー代」54%、「外見ケア(アピアランスケア)」44%と入院時以外の支出も多い結果に。
一時的にお金がかかったものとして、以下のような声が寄せられた。
「生活環境を改善するための、エアコンや加湿空気清浄機など家電製品の購入費と、遠方の友人知人への挨拶回りのための旅費」(40代/正社員)
「抗がん剤治療の際の入院時に個室にしたので差額ベッド代」(60代/自営業・自由業)
「介護用ベッド、リクライニングソファの購入費」(60代/パート・アルバイト)
継続的にお金がかかったものとしては、以下のような声が寄せられた。
「妊孕性温存の卵子凍結費 現在も保管費を払っています」(30代/正社員)
「ペットシッター代」(50代/正社員)
「営業してない店舗の家賃支払い」(50代/自営業・自由業)
「副作用軽減のための鍼灸院での治療費」(40代/正社員)
「手術後身体に負担のない衣服の購入代やケア用品」(50代/契約社員)
「食事がつくれないときの、惣菜購入や外食代。通院時の昼食代。カウンセリング料」(40代/正社員)
○公的制度の活用
高額療養費制度を利用したと回答した人は全体の74%であった。また、「公的制度の利用で治療費がまかなえたか」については、「どちらかといえば足りない」「まったく足りない」と回答した人が39%にのぼった。
高額療養費制度を活用することで、自己負担限度額を超えた場合に払い戻しを受けられるが、「限度額適用認定証」を医療機関等の窓口に提示することで、支払額をはじめから自己負担限度額までに抑えることができる。従来は事前に申請が必要だったが、マイナンバーカードの健康保険証を利用することで限度額適用認定証がなくても、限度額を超える支払いが免除される。
○民間保険の活用
医療保険やがん保険など、疾病に備える民間保険に加入していた人は85%だった。そのうち20%が「給付金を受け取れなかった」と回答しており、理由としては「通院治療の保障がなかった」、次いで「上皮内新生物の保障がなかった」だった。
「どのような場面への備えがあると、よかったと思いますか」と尋ねたところ、以下のような回答が寄せられた。
「入院保険は全く使えなかった。今はほとんど通院での抗がん剤治療が主流」(50代/正社員)
「外見の維持に必要な費用」(50代/正社員)
「差額ベッド代(病院により額が違い、高額になる想定をしていなかった)」(50代/正社員)
「通院回数が多いので、通院の保障」(60代/派遣社員)
「がん保険、医療保険も20代で加入したもので30年も見直してなかったので、給付が少なかった。見直しておけばよかったと思う」(50代/正社員)
○がん罹患による就業状況の変化
がん罹患をきっかけに離職した人は15%だった(2020年18%)。一方で、65%が診断前と同じ職場に勤務している。離職理由は「治療との両立が難しかったから」が7割を占めた。中には本人の意思とは異なり、退職を促されるケースもあった。
がん罹患による働き方の変化について、具体的には以下のような声が寄せられた。
「診断前と同じ仕事をしているが、診断時にちょうどコロナ禍となり制度として在宅勤務制度が確立し、制度を利用しながら仕事をしている」(50代/正社員)
「仕事内容は変わらないが、テレワークとフレックス出勤を導入した」(30代/正社員)
「同じ職業、部署ではあるが、副作用でできないこともあるので、配慮してもらっている」(30代/正社員)
「在宅ワークにシフトした。
「同じ仕事だが、診断前の1/3の仕事量」(60代/正社員)
「仕事復帰したものの、身体がきつくて異動したが、そこも身体がしんどくなり退職し、現在は無職です」(60代/正社員)
「職場復帰はしたが、両立支援制度がなく、夜勤など、自分の体力以上を求められ、早期退職した」(50代/公務員・団体職員)
「売上主となる会社経営者にあたり、長期入院となり仕事停止」(50代/経営者・役員)
「手術前に派遣で働いていた会社に、正直に病気のことを話したが、その後正社員にしていただけたのでラッキーでした」(50代/派遣社員)
がん罹患をきっかけに離職した理由として、以下のような声が寄せられた。
「精神的に仕事に行けなくなった」(40代/正社員)
「手術の後遺症で腕がすぐ痺れて復職したくてもできないです」(50代/正社員)
「遠回しに離職を促す話をされた」(50代/正社員)
「がんになったら職場に迷惑をかけると思い辞めてしまった」(40代/正社員)
「会社からクビと言われた」(40代/正社員)
「後どのくらい生きられるのかわからず、自分のための時間が欲しくなったから」(60代/正社員)
○休職から復帰までの期間
がん治療により連続した4日以上の休職をした人は71%だった。そのうち、約半数が半年以内にフルタイム勤務に復帰している。











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