西山朋佳白玲に福間香奈女流六冠が挑戦するヒューリック杯第5期白玲戦七番勝負は、西山白玲の3勝2敗で迎えた第6局が10月18日(土)に石川県金沢市の「ホテル日航金沢」で行われました。対局の結果、力戦調の相振り飛車から抜け出した西山白玲が110手で勝利。
防衛に成功してクイーン白玲獲得まであと1期に迫りました。
○女流棋士の頂点は誰に?

A級~D級に分けられた約80名の女流棋士の頂点を決める今期の白玲戦もいよいよ大詰め。奪取に向けあとがなくなった福間女流六冠は先手中飛車の出だしから向かい飛車の作戦を展開します。対して後手の西山白玲が三間飛車で迎え撃ったのは予想された戦型の一つで、盤上は二人の間ではおなじみとなった力戦調の相振り飛車に落ち着きました。

福間女流六冠が中央に位を取れば西山白玲も積極的な桂跳ねで交戦。ともに玉を囲いに収め切らないうちから3筋を起点に乱戦が幕を開けます。先にリードを奪ったのは福間女流六冠で、不安定な居玉ながら後手の細い攻めを切れ筋に追い込み、指しやすさを手にしました。とはいえ一つのミスが命取りになる玉頭戦、約1時間の残り時間では何が起こるかわかりません。

○勝敗分けた端での二択

「すこし指せるかな」(局後の感想)と自信をもって指し進める福間女流六冠ですが、ささいな一手がつまずきの始まりに。西山白玲の歩の成り捨てに対して香で応じたのが感想戦でも検討された問題の一着。ここで香を渡したことにより飛車が捕獲される筋が生じ、局面が混とんとしてきました。代えては桂で応じる手が優り先手優勢だったとの結論に。


楽しみを得た西山白玲の指し手に勢いが出てきます。持ち駒の金を自陣に打って飛車をしかりつけたのが再逆転を許さない好手。局面を落ち着けてしまえば手にした飛車での反撃が厳しく残ります。結局ここでの折衝が大きく響いて後手優勢がハッキリしました。終局時刻は18時0分、最後は自玉の受けなしを認めた福間女流六冠の投了で西山白玲の勝利が決定。

4勝2敗で防衛に成功した西山白玲は3連覇として白玲通算4期を達成。棋士になるための新規定であるクイーン白玲(通算5期)まであと1期と迫ったことについて局後の記者会見で「(昨年の棋士編入試験から)満身創痍でやってきてあっという間だった、落ち着いてゆっくり考えていきたい」としました。

水留啓(将棋情報局)
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